教えてよ
「なんで、ギブさんが謝るんですか。あなたは私を……子どもたちを助けてくれたのに」
「多分、リリアやアインにとって嫌な助け方をした。ああやって助けたら、リリアやアインが辛くなるの、なんとなくわかってた」
ギブはできる限り感情を押し殺しながら言葉を紡いだ。何か感情を混ぜてしまって、同情を誘ったり、言い訳になってしまうことが嫌だった。
「あの方法しか知らなかった。子どもたちに悪いもの見せた。ごめん」
その言葉を聞いて、リリアは悲しそうに目を細めた後、うなだれるギブの右手を取り、優しくさすった。
「……リリアはさ、喧嘩の授業しないじゃん。でも俺は、喧嘩しか誰かを守る方法を知らねえんだ。……リリア先生、教えてよ」
心に触れるようなリリアの手に、ギブが少し震えた声で尋ねた。
「喧嘩をしないなら、あの時どうすれば王様君を止められた?」
ハイエナ共から鉱石を狙われていた時も、
おっちゃんの代わりに儀式を乗っ取った時も、
贄の村で、村人たちが人質に取られたあの時も、
ナギの代わりにバイソンを壊滅させたあの時も、
誰かを傷つけることでしか、自分や他人を守れない。
この国に辿り着いて、リリアたちと過ごして心の中に咲いた花が、今までの自分から何かを吸い取って咲こうとする。
しおれていくギブの声に、リリアが手をさするのを止めた。
「違うの、ギブ」
ギブの助けを求めるような問いかけに、リリアがわなわなと口を開いた。
「あなたが立派なの。私は何もできなかった。綺麗ごとを並べて置いて、肝心な時——子どもたちが連れていかれそうになるのを、震えて、見ていただけ」
言葉を紡ぐほどに、リリアの体の震えは強くなっていった。
手をさすられていたギブが、開いたままのリリアの手を握りなおすほどに、彼女の方が取り繕えなくなっていた。
「こんな世界で『人を傷つければ傷つく』なんて、私だけの思いなのかもしれないのに……それを子どもたちに、無責任に植え付けてる……」
「リリアは誰かを傷つけたことあるの?」
「……うん。人を殺したの。……私の手で」
リリアはギブから手を離し、右手をもう片方の手で押さえた。
左手は強く強張っているのに対し、右手は殆ど力が入らないのか、少し開いて宙に浮いたままだ。
鼻水と涙で濁った声で、リリアはギブを見上げて続けた。
「人を殺したのよ。……じゃんけんで」
「……」
魔上面から自分を見てくるリリアに、ギブも何も言わずに真っすぐと見つめ返した。
それが受け入れる準備だと悟ったリリアが、過去に自分の身に何が起こったのか、静かに語り始めたのだった。




