ごめん
「この場を引く! 連れの方にも、ここの子どもたちにも手は出さない! だから——」
王が剣を払いのけて震える手でギブの足を掴んだ。その目は涙で濡れていた。
「倅に……選ばせないでやってくれ……!」
アイゼンの崩れた声が近衛兵たちだけでなく、セオやリリア、アインをも困惑させた。
ギブがアイゼンの体を抑えつけていた足を離すと、アイゼンは近衛兵たちを連れて保護区を去っていった。
辺りが一気に静けさを取り戻した。
砕けた地面。戦いの衝撃で崩れた建物。折れた花の苗。
その中心で苦しそうに天を仰ぐギブに向かって、子どもたちが泣きながらとびかかった。
「ありがとおおおお!! ありがとおおおお!! う“う”う“う”……」
「助けてくれて……! ありがとおおおおおお……!」
涙と鼻水をこすりつけながらお礼を言ってくる子どもたちに、ギブが息を詰まらせた。
優しく子どもたちを突き放すも、宿り木を求めるように子どもたちはギブの体に再び抱き着いた。
逃げるように視線を逸らしたら、その先にリリアがいて目が合ってしまった。
リリアはビクッと体を強張らせた後、
「……あ、あ」
声を詰まらせながら、子どもたちを一瞥し、
「ありがとう、ござ、いま、す」
壊れた機械のように吐き出し、ほんの少しだけ頭を下げた。謝礼のつもりだったのだろうが、視界をそらしたようにも見えた。
頭を下げたリリアを見て、アインは「……あ」と小さく零した。
そして強く唇を噛み、両手で体を起こしながら、よろよろと立ち上がり、
「——ありがとう。皆を守ってくれて……」
感情の線が切れたように、小さく言い残してアイゼンの去った方へと消えていった。
大きく肩を揺らしながら去るその様は、さながら糸が切れた操り人形のようだった。
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その夜、子どもたちはギブに寄りかかるようにして寝た。もう一度来るかもしれない襲撃に怯えているように見えた。
「ギブ……」
怖い夢を見ているのか、一人の子どもが寝言を漏らしながらギブの体にしがみついた。
ギブはその頭を優しくなでようと手を伸ばして、やめた。
「……セオ、起きてる?」
ギブが小さな声で呼びかけると、セオが「うん」と小声で返した。セオも眠れない様子だった。
「少し、学校を散歩してくる」
子どもたちを起こさないように、その小さな体を優しく剥がしてからギブは部屋を去っていった。
自分を宿り木にされることではなく、子どもたちの宿り木に自分がなることが嫌だった。
自分よりも、セオやリリア、アインを枕にして寝て欲しかった。
壊れかけた学校を散策しながら、ギブはなんとなしに後者の方へと近づいた。
後者の前の花壇に近づくと、何者かが土に触った後があった。途中まで折れた苗を直そうとしていたみたいだが、作業を途中でやめたみたいだった。
ギブが教室のドアを開けた。
「ギブ、さん……?」
暗い教室の中で、教壇に立って顔を伏せるリリアがいた。
眼の光を失ったリリアの方へ歩き、ギブはその正面に立って、
「ごめん」
とリリアに深々と頭を下げた。




