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贄の王  作者: 糸音
最終章 贄たちの王

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59/60

ごめん

「この場を引く! 連れの方にも、ここの子どもたちにも手は出さない! だから——」


 王が剣を払いのけて震える手でギブの足を掴んだ。その目は涙で濡れていた。


「倅に……選ばせないでやってくれ……!」


 アイゼンの崩れた声が近衛兵たちだけでなく、セオやリリア、アインをも困惑させた。

 ギブがアイゼンの体を抑えつけていた足を離すと、アイゼンは近衛兵たちを連れて保護区を去っていった。


 辺りが一気に静けさを取り戻した。

 砕けた地面。戦いの衝撃で崩れた建物。折れた花の苗。

 その中心で苦しそうに天を仰ぐギブに向かって、子どもたちが泣きながらとびかかった。


「ありがとおおおお!! ありがとおおおお!! う“う”う“う”……」

「助けてくれて……! ありがとおおおおおお……!」


 涙と鼻水をこすりつけながらお礼を言ってくる子どもたちに、ギブが息を詰まらせた。

 優しく子どもたちを突き放すも、宿り木を求めるように子どもたちはギブの体に再び抱き着いた。


 逃げるように視線を逸らしたら、その先にリリアがいて目が合ってしまった。


 リリアはビクッと体を強張らせた後、


「……あ、あ」


 声を詰まらせながら、子どもたちを一瞥し、


「ありがとう、ござ、いま、す」


 壊れた機械のように吐き出し、ほんの少しだけ頭を下げた。謝礼のつもりだったのだろうが、視界をそらしたようにも見えた。


 頭を下げたリリアを見て、アインは「……あ」と小さく零した。

 そして強く唇を噛み、両手で体を起こしながら、よろよろと立ち上がり、


「——ありがとう。皆を守ってくれて……」


 感情の線が切れたように、小さく言い残してアイゼンの去った方へと消えていった。

 大きく肩を揺らしながら去るその様は、さながら糸が切れた操り人形のようだった。


 ~~~~~~~


 その夜、子どもたちはギブに寄りかかるようにして寝た。もう一度来るかもしれない襲撃に怯えているように見えた。


「ギブ……」


 怖い夢を見ているのか、一人の子どもが寝言を漏らしながらギブの体にしがみついた。

 ギブはその頭を優しくなでようと手を伸ばして、やめた。


「……セオ、起きてる?」


 ギブが小さな声で呼びかけると、セオが「うん」と小声で返した。セオも眠れない様子だった。


「少し、学校を散歩してくる」


 子どもたちを起こさないように、その小さな体を優しく剥がしてからギブは部屋を去っていった。

 自分を宿り木にされることではなく、子どもたちの宿り木に自分がなることが嫌だった。

 自分よりも、セオやリリア、アインを枕にして寝て欲しかった。


 壊れかけた学校を散策しながら、ギブはなんとなしに後者の方へと近づいた。

 後者の前の花壇に近づくと、何者かが土に触った後があった。途中まで折れた苗を直そうとしていたみたいだが、作業を途中でやめたみたいだった。


 ギブが教室のドアを開けた。


「ギブ、さん……?」


 暗い教室の中で、教壇に立って顔を伏せるリリアがいた。

 眼の光を失ったリリアの方へ歩き、ギブはその正面に立って、


「ごめん」


 とリリアに深々と頭を下げた。


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