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贄の王  作者: 糸音
最終章 贄たちの王

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エロさの正体

 ギブにたたき起こされたセオは、ギブに連れられて宿舎の屋根に窓から上った。

 子どもたちはぐっすりと眠ってはいるが、小声だとしてもギブの下世話な会話を聞かせるわけにもいかない。

 屋根の上に並んで腰を下ろす。そこそこ冷えたので毛布で体を覆いなおしてから、「で?」とギブに切り出した。


「アインさんがこっそり学校の方へ行くもんだから、後を付けたら二人がキスしてたってこと?」

「そんなとこ」

「改めて確認するけど、二人とも『ばらすな』とか言わなかったの? 二人からすれば広められたらたまったもんじゃないと思うけど」

「リリアは『子どもたちには内緒にして』とは言ってた。でも、セオは大人だし……」

「精神年齢で括ってないんだよ向こうは」


 ギブの下手糞な言い訳に、セオがあきれ顔で突っ込んだ。

 下手な言い訳は通じないと観念したギブが、小さく息を吐いてから、胸の内を告白した。


「……キスってやつを初めてみたから、セオにキスについて聞きたかった」

「……他の人に広めないことが条件」

「今度こそ守るよ」

「それアインさんたちに誓いなよ?」


 セオも観念したように息を吐くと、それを了承ととらえたギブが、早速質問をしてきた。


「あの二人のキス、なんかエロかったんだよな。なんでだと思う?」


 開幕から下の方向に振り切れそうな話題に、セオが思わず噴き出した。


「……一応僕子供なんだけど」

「俺より大人じゃん。まあ確認は必要か。エッチな話、OK?」

「……OK」


 こういう話は得意ではないが、ギブからすれば真剣な話題なのだろう。

 客観的に見ればあまりにくだらない話題に思考を放棄したくなるが、他でもないギブの頼みだ。

 ギブからキスの様子を聞きながら、セオが何とかその原因を探り出す。


「二人のキスにエr……熱量を感じたのはきっと、身分違いの恋が起因しているんじゃないかな」

「? どゆこと?」


 ギブが首をかしげると、セオが恥ずかしそうに視線をそらしながらこたえる。


「この国のことは知らないけどさ、他の国だと、王族と一般人……それも元贄の人との恋なんてありえないよ。二人がいくら愛し合っていても、階級とか、血筋とか、いろんな要素が壁として立ちふさがるわけで……」

「ほうほう」

「それでもその壁を越えて愛し合おうとする、二人の行動力とか、決意とか意思とかが、熱量として二人の恋路を熱くするんじゃあないんでしょうか?!」


 後半はやけくそ気味にセオが答えると、何か腑に落ちたのか、ギブも「うんうん」と頷きだした。


「二人が身分とか関係なしに、『自分』を持ってるから、キスがエロいのか」

「……そうなんじゃないの」

「初めてリリアを見たときに、なんかエロいな、と思った原因はそれかもな。体つきだけだったらリリアよりもエロい女、施設にもいたけどさ、そいつら新しい贄を生むだけの機械みたいになっちゃってたから、不思議と惹かれなかったんだよ。俺がリリアに惹かれた理由が分かったぜ」

「あのときそんなこと考えてたのかよ……」


 リリアに初めて会ったとき、じーっと彼女のことを見つめていたのはそういう理由だったか。

 いつもと様子がおかしいと思ったが、考えていることは相変わらず普段と同じでしょーもない。


「なあセオ。魔人でも人間とエロいキスはできる?」

「え? キスしたいの?」

「形だけのはどうでもいいけど、ああいう熱いのは興味がある」

「……うーん、色々あって難しいかも」


 色々、という言葉で濁したが、口にすればある種の差別を生む言葉になりそうだ。

 歯切れの悪いセオの態度で「そっか」と何かを察したように、ギブがマントの内側を探った。


「じゃあ、エロいキスをする夢はもう叶いそうにないな」


 ギブが取り出したのはおっちゃんが残してくれたノートだった。



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