国の成り立ち
「反逆、ですか……」
話のスケールが予想以上に大きくなり、少し困惑するセオに「うん」とアインが視線を向けた。
「門が出現して、魔人の力でとある国が成り上がって以来、皆それに追随するようにその国の階級制度を模倣し、一部の人たちを贄として扱い始めた。それまでは身分の差こそあれど、皆の命に最低限の尊厳があった。門が在ることが問題なんじゃない。それに頼る人の弱い心が問題なんだ。だから、この国では階級制度を撤廃して、人が人らしく暮らせる世界を目指している」
「だけどさ、アインのお父様は魔人じゃん。魔人化の具合からして、使ったのは千の門だろ。1000人の贄はどこから用意したのよ」
「生活に困窮している世帯から買った。数世代にわたる生活基盤の安定を条件に」
非常な現実に、ギブを纏う空気が少しだけ張り詰めたものになった。理想とはかけ離れた現実を口にしたアインも、その意味を分かっているのか、表情が重いものになる。
「もちろん、父の本意ではない。それでも、他の国が魔人を抱えている以上、最低限の防衛力として必要だった。その罪を背負う覚悟を持って、父は魔人になった」
「皆同意だったってこと?」
「本心は分からない。残される身内の生活の為に身を差し出したものがいたのは確かだ。理不尽な選択を突きつけてしまった。だから、父上は言っていたよ。自分が最後の魔人なんだって」
そこまで聞いて「そっか」とギブは空を見上げて重い息を吐いた。
納得はしていない。だけど、府には落ちたようだ。
「失望したかい」
「いや。でも王様君には同情したね」
申し訳なさそうに表情を暗くしたアインに、ギブが素っ気なく告げた。
「戦い続けるのは、きついもんなあ」
セオはその発言を聞いて、胸が締まる思いがした。
やっぱり、きつかったんだ。
ギブの口から初めて漏れた戦いへの本音に、その選択を押し付けてしまっている罪悪感が滲んでくる。
「僕もいいかい。……ギブは、なんで魔人になったの?」
「んー。なりゆき」
語りたくないのか、適当にあしらおうとするギブに、アインが食い下がった。
「君さえよければ聞かせてくれないか。君が元下流だというのは流れてくる噂で知っている。下流の君が、どんな生き方をして、どんな経緯で魔人になったのか、僕は知りたい」
まっすぐ見つめられ、ギブは困ったように視線をセオに流したが、
「……ギブ、ごめん。僕も知りたい」
逃げた先でも、胸の内を明かすことを希望され、ギブは深く俯いて黙り込んでしまった。
「……しんみりすることが多いから、真剣に振り返りたくないんだよなあ」
冗談や軽口、素っ気ない態度に逃げるときは、大抵はギブ自身の話題だ。
初めにあったときに、ギブは自分のことをバカだといった。あまりものを考えないバカなのだと。
だけど、考えないのではなく、考えたくないのだろう。それはきっと、つらいことの方が多かったギブが、生活の中で身に着けた生存本能に近いものなのだから。
だが、
「つまんねえ話だと思ったら、さっさと寝ろよ?」
セオの方を向いて、ギブが生まれたときのことから、今までの流れを、所々言葉に詰まりながら語り出した。
順序がずれたり、時々長い間が空いたりして、ゆっくりと進むギブの人生の話を、二人とも唯々黙って、何も言わずに聞き終えた。




