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贄の王  作者: 糸音
最終章 贄たちの王

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47/53

国の成り立ち

 

「反逆、ですか……」


 話のスケールが予想以上に大きくなり、少し困惑するセオに「うん」とアインが視線を向けた。


「門が出現して、魔人の力でとある国が成り上がって以来、皆それに追随するようにその国の階級制度を模倣し、一部の人たちを贄として扱い始めた。それまでは身分の差こそあれど、皆の命に最低限の尊厳があった。門が在ることが問題なんじゃない。それに頼る人の弱い心が問題なんだ。だから、この国では階級制度を撤廃して、人が人らしく暮らせる世界を目指している」

「だけどさ、アインのお父様は魔人じゃん。魔人化の具合からして、使ったのは千の門だろ。1000人の贄はどこから用意したのよ」

「生活に困窮している世帯から買った。数世代にわたる生活基盤の安定を条件に」


 非常な現実に、ギブを纏う空気が少しだけ張り詰めたものになった。理想とはかけ離れた現実を口にしたアインも、その意味を分かっているのか、表情が重いものになる。


「もちろん、父の本意ではない。それでも、他の国が魔人を抱えている以上、最低限の防衛力として必要だった。その罪を背負う覚悟を持って、父は魔人になった」

「皆同意だったってこと?」

「本心は分からない。残される身内の生活の為に身を差し出したものがいたのは確かだ。理不尽な選択を突きつけてしまった。だから、父上は言っていたよ。自分が最後の魔人なんだって」


 そこまで聞いて「そっか」とギブは空を見上げて重い息を吐いた。

 納得はしていない。だけど、府には落ちたようだ。


「失望したかい」

「いや。でも王様君には同情したね」


 申し訳なさそうに表情を暗くしたアインに、ギブが素っ気なく告げた。


「戦い続けるのは、きついもんなあ」


 セオはその発言を聞いて、胸が締まる思いがした。

 やっぱり、きつかったんだ。

 ギブの口から初めて漏れた戦いへの本音に、その選択を押し付けてしまっている罪悪感が滲んでくる。


「僕もいいかい。……ギブは、なんで魔人になったの?」

「んー。なりゆき」


 語りたくないのか、適当にあしらおうとするギブに、アインが食い下がった。


「君さえよければ聞かせてくれないか。君が元下流だというのは流れてくる噂で知っている。下流の君が、どんな生き方をして、どんな経緯で魔人になったのか、僕は知りたい」


 まっすぐ見つめられ、ギブは困ったように視線をセオに流したが、


「……ギブ、ごめん。僕も知りたい」


 逃げた先でも、胸の内を明かすことを希望され、ギブは深く俯いて黙り込んでしまった。


「……しんみりすることが多いから、真剣に振り返りたくないんだよなあ」


 冗談や軽口、素っ気ない態度に逃げるときは、大抵はギブ自身の話題だ。

 初めにあったときに、ギブは自分のことをバカだといった。あまりものを考えないバカなのだと。

 だけど、考えないのではなく、考えたくないのだろう。それはきっと、つらいことの方が多かったギブが、生活の中で身に着けた生存本能に近いものなのだから。


 だが、


「つまんねえ話だと思ったら、さっさと寝ろよ?」


 セオの方を向いて、ギブが生まれたときのことから、今までの流れを、所々言葉に詰まりながら語り出した。

 順序がずれたり、時々長い間が空いたりして、ゆっくりと進むギブの人生の話を、二人とも唯々黙って、何も言わずに聞き終えた。



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