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贄の王  作者: 糸音
第三章 復讐と夢とゲロ

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ナギの役割

 

「っ?! テメエ——」


 ナイフを落とし、人質が奪われたと自覚したと同時、リーダーは地面に手を触れ能力を発動させようとするが、


「ぐああああああ?!」


 ギブが自分に触れていた噓発見器君を投げ飛ばし、すぐさまリーダーの体勢を崩す。

 そして、体制が整う前にバイソンたちの下へ詰め寄り、


「——?!」


 足で床を力強く踏みしめたかと思うと、地面が一瞬のうちに盛り上がり、分厚い壁となって、セオやナギ、捕らわれた人たちと、バイソンたちとを完全に分断してしまった。


「何の真似だ?! お前と同じ異能を持ってるんだぞ?! 分断したところで向こうの人質に手を出すことなんざ——」

「できねえだろ? 下手糞なハッタリだったな。おかげで交渉がやりやすかった」


 諭すような声で被せられ、リーダーは言葉を詰まらせた。


「お前がフライドチキンを作った瞬間、部屋の隅がきしむ音がした。よく見たら、部屋の隅が若干広がってたんだよな。多分だけど、空間の形を変える異能なんだろ? 形は変えれても広さは変えれない。空間を分けちまえば、お前はセオたちに手出しはできねえわけだ」

「……!」


 どうやら図星だったらしく、リーダーの男から余裕が消え去った。


「能力を強く見せれば、交渉を有利進められると思ったのかもしれねえが、だったら、周りの連中に芝居の練習をさせておくべきだったなあ。俺の能力聞いた瞬間、どいつもこいつもアホみたいにビビってよ。見慣れた能力なら、そこまでビビるこたあねえはずだもんな」

「クソ……‼」


 リーダーが部下たちに怒りの視線を投げた。どうやら表には出さなかったが、指摘された事には気が付いていたらしい。

 八つ当たり気味に部下たちを睨み飛ばすリーダーに、「ま、それを差し置いても」とギブが改まった声になって告げた。


「100人かそこら贄にして手に入る異能と、1万人犠牲にして手に入る異能が同じなわけねえだろ。てめえら魔人のことなんもわかっちゃいねえ」


 ギブがバイソンたちを見下ろした瞬間、全員が目の前の魔人の圧に、唯々圧倒されてしまった。

 元はどんな人間だったのかは分からない。だが、この魔人は自分たちとは踏んできた場数が違いすぎる。

 自分たちを見下ろしてくるのは、自分たちと違って、人間の名残を完全に消失した化け物だ。先頭になってしまえば、この場にいる全員が束になっても敵わない相手であるというのは、皆本能で理解させられてしまっていた。


「噓発見器君。こっちきて」


 ギブが小さく手招きすると、先ほどまでギブに触れていた男が、体を震わせながら傍に歩み寄った。


「自分の胸に手を当てな。その異能の発動は任意? 強制?」

「……きょ、強制です」


 男の胸から棘が出てこないのを確認して、ギブが近くにいた男を指さし、「今度はこいつ」と指で示した。

 噓発見器君が男に触れてから、ギブが「『俺は女です』って言ってみろ」とささやいた。


「……お、お、おれ、おれは、おれはあ……‼」

「早く」

「俺はあ‼ 女です‼」


 自暴自棄に叫んだ瞬間、男の胸から棘が飛び出し、そのまま血を吐いて絶命した。

 その様子を見て、「確かに強制だな」とギブが噓発見器君の魔人化した手に触れる。


「一人一人、手ぇ当てて聞くのめんどくせえからなあ」

「あ、ああ、ああああああ」


 ギブの手が触れた瞬間、男の手から無数の腕が木の枝のように生えてきて、バイソンたちの胸に触れていく。


「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“?!」


 自分の右手が人ならざるものに変容していくのを、男は崩れた声で、ボロボロと涙を流しながら見ていることしかできなかった。

 全員の体に伸びた手が触れたところで、ギブが全員に振り返る。


「質問していくから答えてね。だんまりは無しだ。正直に答えるかはてめえらに任せる」




 ~~~~~~~~~~~~~~




「ねえ……ギブは大丈夫かな?」


 壁の外ではセオとナギ、そして捕らわれた人々が分断された壁の方を見つめていた。壁の奥にはギブとバイソンたちがいる。

 心配そうに服の裾を掴んでくるナギに、「大丈夫」とセオが告げた。


「戦闘になったらギブは負けないよ。それよりも心配なのは……」

「……?」


 セオの心配は自分のものとは別らしい。

 その正体がわからずに首をかしげたところ、壁が消失し、その奥からギブが現れた。


「おまたせ~」

「「ギブ‼」」


 ギブが手を振りながら現れ、セオとナギが安堵の声を漏らす。

 支部の背後には隆起した地面が網のように絡まって、宙で身動きが取れないバイソンたちの姿があった。魔人化した部位は特に厳重に拘束されている。


「とりあえずあいつらは動けねえ。ま、動こうとしたら俺が処理するけど」

「……そう」


 安堵と疑問が混じった様子でナギが頷いた。

 バイソンが無力化したのは違いない。だけど、無力化したはいいが、なぜ彼らを生かしているのか。

 その疑問が胸に渦巻いたとき、ギブが「ほれ」と自分の皮膚を変形させて、出来たものをナギに手渡した。


「……何これ?」

「言ったろ。お前の復讐を手伝うって。代わりにやるなんて言ってねえ」


 ギブが渡したのは、自分の異能で作った、一本の鋭利なナイフ。






「あいつらぶっ殺すのはお前の役割だろ? ナギ」






 ギブが素っ気なくバイソンたちを親指で示すと、ナギもセオも、その顔色を青ざめさせた。


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