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贄の王  作者: 糸音
第三章 復讐と夢とゲロ

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交渉と同じ異能

 

「もしかしなくても、あんたが人さらい君達の親玉君?」

「いかにも。俺がバイソンのリーダーだ」


 不愉快そうに声色が低くなったギブに、バイソンのリーダーがふてぶてしく笑った。

 のどぼとけに冷たいナイフの刃が触れ、セオとナギは青い顔で息を詰まらせることしかできない。


「同じ魔人なんだ。俺とあんたら、どっちが強いかなんてわかってんだろ? そいつらを殺すとして、その先のことを考えてる? そいつら殺すのと、生き残るの、どっちが大事?」

「当然生き残ることさ。だが、ここに来たってことは、人質がいようがいまいが、俺たちをつぶしに来たんだろ? 交渉をするためにはこれが最善だ」

「……」


 この脅しは、ある程度肝が据わった相手には通用しないか。

 面倒くさい状況になったと、ギブが腹立たしそうに舌打ちをした。


 前に村で人質を取った衛兵たちと違い、こういう汚い手に慣れている相手はやっかいだ。

 恐らく殺すこと自体は造作もないが、セオとナギを見捨てられるほど冷酷にはなれない。


「『話し合い』、しようか」

「ああ。それがお互いにとって都合が良い」

「とりあえず交互に聞きたいこと聞いてみる?」

「そうだな。だが、その前に...」


 リーダーが合図をすると、部下の1人がギブの側に歩み寄った。

 魔人化した右手でギブに触れ、男が指示を出した。


「何かを嘘をついてみろ」

「? ……俺は女です!」


 ギブが元気に宣言すると、ギブの心臓から太い刺が飛び出し、内側から体を貫いた。


「ギブ‼」


 刺から黒い血がボタボタと滴り落ち、ギブが口から血を吐き出した。


「……なるほど。嘘発見器君ってとこね」


 濁った声と共に、ギブが視線を男に向けた。

 自分の能力で死ななかったことに驚いたのか、男は自分を見下ろしてくるギブを呆然と見上げながら、ぶつけられてくる殺意に震え始めた。見方によっては、自分が今、ギブ側の人質だ。


「これ、そっちにもつけないと不公平じゃない?」

「他に同じ異能持ちがいればそうするがな」

「しゃーねな。じゃあ質問は俺からするぜ。あんたら、人攫い君たちの要求は?」


 ギブの質問に、自分の思惑通りことが進んでいると実感したのか、リーダーの男が悪い笑みを浮かべながら答えた。


「まずば俺たちの命の保障だな。約束できるか?」

「そりゃあお前、人質の扱い方次第だよ」


 ギブの返しに、リーダーがナギの喉にナイフの歯を当てた。

 冷たく鋭利な刀身に、ナギが喉をつまらせる。

 ギブが「死にたいの?」と低い声で尋ねると、「ジョークだよ」とナイフの刃を離した。


「次は俺の番だ。お前の異能は何だ?」


 その問いにギブがその場でしゃがみこもうとすると、再びセオとナギの首もとにナイフの刃が向けられた。


「能力見せるだけだよ。傷つけるつもりはねえ」


 胸から刺が飛び出ない。嘘ではないということか。

 ギブは警戒されながら地面を触り、床の一部を変形させ、即席で彫刻をつくって見せた。


「俺の異能は、『触れたものの形を変える』異能。岩でも水でも炎でも、触れたものなら何でもOK。これでいい?」

「なんだこの彫刻は」

「俺の好物のフライドチキンだよ。知らねえ?」


 確かに、地面から生えてきた台座の上には、身の少ないチキンのような物体がある。

 出来上がった不細工な彫刻を見て、「とりあえず両手を上げろ」とリーダーが告げると、ギブが渋々と従った。

 ギブの異能を聞いて、バイソンたちが「なんだよその異能は……」とどよめき立つ。


 だが、リーダーの男は少しだけ間を空けてから、顔に手を当てて高らかに笑い始めた。

「どうした?」

「いやぁ、わりいわりい。こんな偶然があるもんかと思ってな」


 すると、リーダーはナギのナイフを地面に落とし、魔人化している左手で地面に触れる。 すると、


「え……?!」


 目の前に出現したものに、セオが思わず驚きの声を漏らした。 地表が盛り上がって、メキメキと音を立てながら何かの形になっていく。

 数秒後には、ギブが作ったものと同じ、不細工なフライドチキンの彫刻が出来上がっていた。


「驚いたよ。まさか俺と同じ異能を持っているやつがいるなんて」


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