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贄の王  作者: 糸音
第三章 復讐と夢とゲロ

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 飛び込んだ先には、人が3人程度並んで歩けるぐらいの幅の通路が広がっていた。


「せめー通路。あっちに扉があるけど、進んでみる?」


 セオたちは暗くて何も見えないが、ギブにはこの暗闇は問題ないらしい。

 真っ暗な空間をギブにしがみつきながら歩いているうちに、ギブが不意に立ち止まった。先ほど話していた扉の前に来たようだ。

 ドアの隙間から、わずかながら光が漏れている。この先に誰かが待ち構えている可能性が高い。


 ギブが扉に触れ、小さな覗き穴をつくり、中の様子を伺った。


「おっじゃっましまーす」


 セオたちに何の合図もなしに扉を開けるので、二人がギョッと目を見開いた。

 突入する前に合図が欲しかったが、すでに敵の根城。怒鳴るわけにもいかない。


「なんだよここ……ほんとに地下かよ……」


 扉を開けた先に広がっていたのは、照明で明るく照らされた、通路のような空間だった。材質的には岩をくりぬいて作ったような空間だが、洞窟のようにごつごつとした岩肌が露になっているわけではなく、長方形型に整備された、面取られた通路が真っすぐ伸びている。


 両サイドにはドアが幾つか備え付けられており、通路の奥では十字に枝分かれしている廊下が見える。

 適当に近くにあるドアを開けながら進むと、どうやら食料や日用品、薬などの物資が大量に保管されていた。


 進んでいるうちに、通路の奥にあった、ひときわ大きい扉の前に辿り着いた。


「ここって、まさか……」

「どーやら拉致った奴らの保管場所、って感じだな」


 扉を開けると、両サイドに鉄格子が備え付けられた広い部屋につながっており、両手を縄で縛られた者たちが閉じ込められている。

 檻の中はまだ広さに余裕があり、その気になれば1000人は収容できそうなだだっ広い檻の空間だ。


「……バイソンの拠点兼、収容所?」

「通路が街の外の方へ伸びてるし、街の外と中の連絡通路も兼ねてるかも」


 バイソンという組織の規模は分からないが、一介の犯罪集団が用意できるものじゃない。

 施設の規模が、今は向かおうとしている組織の規模を想像させ、セオは胸が締まる思いがした。


「……あんたら、なんだ? もしかして、バイソンの仲間ではないのか?」


 驚きながら周囲を見渡すセオたちの様子を見て、閉じ込められていた男が語り掛けてきた。


「お願いだ! 助けてくれ! このままじゃ俺たち贄にされぐえっ——」

「シー。潜入ミッション中だから今」

「「……」」


 バイソンの仲間では無いと察した男が、鉄格子にぶつかる勢いで縋ってきたところを、ギブがデコピンを食らわせ気絶させた。

 今回の目的はバイソンの壊滅であって、捕らわれた人の救出ではない。

 とはいえあまりに雑なギブの対応に、セオとナギは味方ながらに呆れた息を吐いた。


「ナギ。どうする? とりあえずこいつら逃がしとく?」


 ギブが尋ねると、ナギが少し考えた後、小さく首を振った。


「バイソンをつぶした後で助ければいい。今開放して、騒ぎになるのも面倒」

「それもそっか。悪いなお前ら。今は大人しく捕まっておいてくれ」

「……ねえギブ」

「? セオ、どうした?」


 何か察したように顔色が悪くなったセオに、ギブが尋ねた。

 周囲を見渡しながら、セオが神妙な面持ちになってつづける。


「……向こうの組織の規模なんてわからないけどさ。ここまで堂々と潜入しておいて、誰ともすれ違わないなんて変だよ。それに、いくら閉じ込めてるとはいえ、贄を管理する場所に誰もいないなんてことある?」

「……」


 ナギも違和感を覚えたのか、その表情が見る見るうちに険しいものになった。

 ギブが顎に手を当てたとき、自分たちが入ってきた扉が分厚い鉄のシャッターでふさがれ、大きな音の方へ反射的に振り返った瞬間、


「ぐあっ?!」

「きゃあっ⁉」


 セオとナギの地面が急に隆起し、ギブの視線と反対方向に二人の体を弾き飛ばした。


 ギブがゆっくりと振り返ると、


「——おっと、そこから一歩も動くなよ」


 顔の右半分から肩にかけて魔人化した、人相の悪い大男。

 と、それを取り囲む、体の一部分が魔人化したフードの集団が現れ、セオとナギの喉元に黒いナイフを突き立てていた。


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