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贄の王  作者: 糸音
第三章 復讐と夢とゲロ

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36/53

潜入

「何あれ……」


 明らかに人ならざる光景を前にし、セオが目を見開いた。


「んー、腕を好きな形にできる異能じゃね?」


 ギブが解説しているうちに、開いた窓からフードの者たちが忍び込む。

 少し間が開いたのち、部屋に泊まっていた者が、ぐったりと気を失った状態で外に運び込まれた。

 2階の窓に直接飛び込める身体能力を見るに、3人とも魔人で間違いないだろう。


「泳がせるんだっけ?」

「……うん。奴らの拠点を突き止める」


 ナギも目を据え、人がさらわれる様子を見送った。

 慣れた様子でカーテンの締まっている窓の鍵を開け、中の人間を気絶させ、外へ連れ出す。

 他の窓に見向きもしない当たり、宿屋とグルなのは間違いなさそうだ。


 カーテンの締まった窓をすべて開け終えたフードの男たちは、顔を見合わせた後、気絶した人を抱えたまま街の外へ向かって移動しだした。


「俺たちも行きますか!」


 彼らを見失わない程度に距離を離しながら、ギブはセオたちを抱えたまま、屋根の上を伝って移動する。先ほどまでの夜の風が、冷たくセオたちの胸に刺さる気がした。


 フードの者たちは、街の外の方へ駆けていき、城壁付近までたどり着いたところで、薄暗い路地に入り込む。

 上から見たときには、先は行き止まりのように見えた。

 ギブは地面に下り、息をひそめながら、その路地の中に足を踏み込む。

 行き止まりならば、はちあう可能性がある。セオとナギの心臓がバクバクと鳴り始めた。

 魔人達が待つであろう、行き止まりの路地に踏み込もうとしたところで、


「バアッ‼ ……あれ?」


 ギブがおどけて飛び出すも、そこには誰も存在しなかった。


 見失った——訳ではないはずだ。


 ギブはきょろきょろと周囲の気配を確認してから、体にしがみついているセオとナギの頭をポンと叩いた。

 ギブの合図で二人も地面に下り、フードの者たちが消えた空間をぐるりと見渡す。


「……ねえ、これ」


 ナギが何かに気が付いて、行き止まりの路地の端にあった、大きな木箱の下を指で示した。

 周辺の床は土や埃が積もっているが、木箱周辺にはそれがない。よく見ると引きずったような跡がある。


「お。隠し通路ってやつじゃ~ん」


 ギブが木箱を破壊すると、木くずが散らばった床の奥に、鉄の扉が存在していた。

 周囲の石造りの床と比較して、明らかに異質な扉を開くと、ビュオッと湿った風が吹き抜ける。


「奴らの拠点ってことでOK?」

「……多分」


 セオとナギに視線を投げると、二人は改めて覚悟を決めた表情になって、ギブの体に捕まった。

 そんな二人を手に抱えながら、ギブは暗闇が広がる空間の中に勢いよく飛び込んだ。



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