村、開拓。
ギブが少しずつ歩みを進めると、同じ分だけ村の者たちも後ずさった。
逃げるスペースがなくなったのを見て、ギブはその場で立ち止まる。
さて、ビビるこいつらにどう話を切り出そうか。
顎をなぞるギブの背後から、セオが両手を上げながら顔を出した。
「あ、あの! 僕たちに攻撃の意思はありません! 皆さんのお話が聞きたいだけなんです!」
どうやらセオも話を聞く方で腹をくくったらしい。
セオの姿を見て、村の者たちが少しだけ警戒を解いた。同じ人間を見て少し安心したのだろう。
その様子を見て、交渉を進めるのはセオが適任だろうとギブがセオの横に並びなおす。
「この人、ギブって言います! みんなと同じ元『贄』です!」
セオがギブを両手で示すと、「元贄ダヨー」とギブも右手でピースを作った。
すると、緊張の解けた者たちの一人が「あ!」とギブを指さした。
「この人、俺たちを解放してくれた魔人さんだよ!」
その男の指摘に村の者たちが思い出したように「あ」と声を漏らした。
どうやらギブが門を狙う魔人達を襲う中で、解放してきた贄たちの一部らしい。
自分の恩人だと理解した村の者たちが、友好的な笑みを浮かべてギブの元へ寄ってきた。
「あの時はお礼も言えず申し訳ございません! 魔人が怖くて、檻から解放された途端、逃げてしまって……」
「いーよいーよ。俺もお前たちのこと覚えてなかったしな! ガハハ!」
急に穏やかな空気になり、セオはほっと胸をなでおろす。
「ところでお前ら、こんなところで何してんの? こんな何もないとこにボロ小屋なんか作っちゃってさ」
ボロ小屋、という表現に一部の村人が苦い顔になったが、ギブはそれを気にする様子はない。
「私たちは下流の人間です。故郷に戻っても、また贄にされるだけですから。だから各地をさまよって静かに暮らせる場所を探していたところ、この場所を見つけたのです」
「なるほどね。居場所がないなら作っちまおうって考えか」
村人の答えにギブが感心したように頷いた。
その反応に村人たちも少し照れて頭を掻いたが、ボロ小屋と評された住まいを見て、苦い表情に切り替わった。
「でも、道具も何もなくて、衣食住を満足に整えることができないのが現状です。道具があればそういったこともできそうなんですけどね……」
「道具なんてなくても、俺がなんとかしてやるぜ」
「え?」
自虐的に笑う村人たちにギブが歯を見せて笑うと、地面に手を当てて、見る見るうちに地形を変動させていく。
「「「おお……」」」
10秒も経たないうちに、見上げてしまうほどの立派な岩の家が建っていた。
「ギブ。入る場所がないよ」
「あ、やべ。つけ忘れた」
セオの指摘で、ギブが再びできた家に手を触れると、壁の一部が変形して入り口部分が出現する。
ギブの能力に呆然と驚くばかりの村人たちに、ギブが得意げに力こぶを作って見せた。
「さてさて、とりあえず人数分の家をつくってやりますか! リクエストがある奴は言えよ~?」
ギブの能力を理解した村人たちが詰め寄り、あれやこれやとリクエストをし始めた。
その日は家だけじゃなく寝床や衣服など、生活に必要な様々な道具を能力で作り、ボロ小屋が並ぶだけの空間は一変し、一気に生活感漂う立派な集落が出来上がった。
全員の家を作り終えた後、ギブは村の端の方に一番デカい家を作り、今夜はセオとそこで寝ることにした。




