君と僕の距離のこり15光年
「星は遠い物。いつか消えゆくもの。つまり星は、私たちには手の届かないし、気づかない間にあっけなく無くなってしまうの。ねぇ、それって素敵じゃない。」
「櫻井君と私は、ずっと前から繋がっていたのよ、今はもう遠い関係になってしまったけど。まるでベガとアルタイルみたいね。織姫と彦星は天の川‘を通して15光年離されてしまったし。」
「ねぇ、私が伝えたいことは一つなの。私のことを…」
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春の雲、5月の晴れ、灰色世界のマイルーム。
耳に激しい目覚まし時計の7時のアラームが響いて僕は目が覚めた。
春の日の暖かさが気持ちの良い日だ。学校に行く時間までもまだ時間があった。僕は二度寝をしようとおもと思ってまた布団に篭ろうとした。その前に来客があった。
「お兄ちゃん、起きて!!」と言う大きな声。ドアを開けたのは容姿の淡麗な少女、千夜だ。千夜は僕の妹で、毎日同じ時間に僕を起こしに来てくれる可愛い奴だ。
「全く…もうご飯できてるから早く食べてよね!」
「いつもありがとう」とうつらうつらの意識の中で声を絞り出した。
「ふんっ。」と彼女は恥ずかしそうにそっぽむいた。机の上にはご飯に味噌汁、冷奴に鮭といささか標準的な朝ごはんが湯気を立てて(冷奴からは流石に出ていなかったが)並べられていた。
「美味しそうなご飯だ。」と僕は声に出した。妹はリビングにいない。家族もいない。僕と妹がこのアパートに二人暮らしである。
ところで僕の自慢できることが一つあるとすればそれは可愛い素直な妹がいる、と言うことだろう。僕の妹は基本的には僕のことを好いてくれてるし、僕も妹のことを愛している。ところが、他の妹を持っている兄たちからすれば「妹は兄が嫌いな物」なのだ。ケダモノ、変態、関わらないで、と言われるのが一般的であるらしい。だから僕はこの可愛い妹を持っていることを少し誇りにさえ感じている。
「行って来まーす。」と声が聞こえて、部屋を心地の良い風が吹いた。それは妹が学校に行ったからであった。妹と僕は同じ学校に通っているので、少しはやいな、と僕は思った。
僕と妹は同じ学校に通っているのか?何故君は妹より遅く出ても平気なのか?OK。解説をしていこう。
僕が通っているのは渋谷高校、妹が通っているのは渋谷中学校、そう、2人して中高一貫校に通っている。また、普通の高校生ならば、僕のように登校時間ギリギリまで家にいるのが正解なのだ。そんなに慌てている必要もない。では、何故妹はこんなに早く家を出ているのか?それは僕にもわからない。おそらく部活の朝練か何かだろう。少なくとも彼女は僕にそのようなことを教えてはくれなかった。
ソファに座って川端康成の「みづうみ」を開く。時計は7時30分を指している。僕が家を出る時間までまだ20分もある…。
桜並木の通りを全力ダッシュで走る青年がいる。それは僕である。まずい、だいぶ時間が経ってしまった。時計を見るりタイムリミットは残り2分だ。おそらく走るだけじゃ朝礼には間に合わないだろう。
「ちくしょー!!!」と僕は思った。まぁ、そんなことを思ったって仕方がないのだが…。
少し陰鬱な気分で3分遅れの教室に入ると何だか騒がしい雰囲気であることに気づいた。
「転校生が来るらしいよ。」
「えー、まじぃ。顔がいいといいな〜。」
この時期に転校生?おかしなやつだ、と僕は思った。ただ、その転校生とやらのおかげだろう。朝礼はまだ始まっていなかったらしかった。
「おい〜出席をとるぞー。」と教師が入ってくる。教師が出席を取っている間、クラスメイト全員が彼の言葉の一言一句に耳をすませていた。ー転校生とは誰だろう。
出席を取り終えて、教師はふっと軽く息をつくとさも重要な雰囲気を作り出すかのように(転校生のことは確かにクラスにおいて重要なことではあるのだが)少し間を空けて厳かに声を出した。
「今から転校生の、紹介をします!どうぞ、入って来てください。」
ガラガラと扉が開く。始めに目に入って来たのはその青い眼、宇宙のように深く青いみずうみだった。その眼は人をどうにもこうにも惹きつける眼をしていた。…
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転校生はゆっくりと自己紹介を始めた。
「僕は遠いところから来ました。」
クラスいっぱいにざわめきが起こる。遠いところとはどこだろう。周りのギャルたちは「イギリス」や「アメリカ」だったり「ストックホルム」ではないかと邪推をしていた。
「僕は貴方たちと仲良くしたいと思っています。」
透明な湖に石を投げたみたいな澄んだ声だ。やはり彼は人を惹きつける力があるのだろう。
「櫻井真斗と言います。どうかよろしくお願いします。」
「じゃあ、隣の席の各務、櫻井君に色々教えてやれ。」
パチパチと拍手が上がる。櫻井くんはチラリと僕の方を見てフレンドリーに微笑んだ。僕も返すように微笑んだ。ー言い忘れていた。僕の名前は各務豊彦、今作の主人公にして、今作の名脇役である。




