アスリート
新曲のPVやら
新しい映画やら
新しい食品やら
著名人の結婚や離婚やら
その合間にサンドイッチのように挟まれた絶望的なニュースやら
司会者の無責任な意見は
観る者にいつも無力感を与える
TVに映る情報は
確かに日常と地続きのはず
どこか遠い異世界の出来事に見えるのは
なぜだ
放映されるスポーツ中継
出場するには多くの努力と犠牲を求められ
相応しい過程を経ても
ほとんどは徒労に終わり日陰に忘れられる
なんとなく異世界を見つめる人々の大半は
日常が重いせいで
その事実を想う余裕は無い
どうあがいても
この世は目に見える情報が全て
忙しい観客は
わかりやすい判断基準にすがる
観客は異世界へ無神経に触れる
敗者のしくじりを貶め
勝者のアラを探す
擁護する専門家に『空気読め』と貶し
門外漢の嫌がらせに乗って論点をずらす
目の前に結果を出した勝者が現れたら
『ずっと前から応援していました』とあっさり日和る
そのくせ落ちぶれれば罵声を浴びせる
矛先が自身に向けば『冗談だった』で済ませる
多くのを覚悟を秘めて
君は
君たちは
競技に挑む
『スポーツが人を変える』
そんな欺瞞を
望んではいるが
信じてもいないのに
相手は強い
ライバルと想うことさえ憚れる程に
メダルは取れない
入賞もできない
『参加することに意義がある』は
もうすぐ暴かれる
奇跡は求める物では無い
起こす物だ
立ち向かわなければ掴めない
手段は選ぶ
他人を通して
己と闘うのが競技なのだ
そして始まる
観客も含め全てが主人公の物語が
アスリートの役割は
人が人のまま限界に挑み
勝者と敗者が『名誉』と『屈辱』を共有できることの証明
観客の役割は
『尊敬』と『軽蔑』が別の感情であることの証明
審判の役割は
この世に『正義』と『誓い』があることの証明
君が躍動する
君達が躍動する
国と人種が異なっても
同じアスリート
欲望のために闘う者がいる
友情のために闘う者がいる
政治のために闘う者がいる
暗い感情に導かれ闘う者がいる
望まぬのに巡り合わせの悪さのせいで闘う者がいる
代理戦争と意気込む者がいる
ただただ技術の進歩に殉ずる者がいる
君は諦めない
君は勝利する
君は敗北する
君はいずれ復活する
君は残念ながら今日終わる
競技に決着は付き物
歓声が響き
物語が終わって
次が始まる
明日があるかぎり
次が生まれる
君は走る
君は立ち止まる
君は飛ぶ
君は落ちる
君は着地する
君は地に伏す
君は表彰台に立つ
君は見上げる
君は記録に残る
君は記録に残らない
君は見ている者の記憶に爪痕を残す




