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瞬発力企画!  作者: しいな ここみ
第七回目『青春』
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Ajuさま2度目の青春


『丑三つ時の青春』       Aju



 真夜中に目が覚めちまって、頭に浮かんできた言葉たち‥‥。

 こんなもの、書くべきかどうか迷ったんだけど。

 ゲロでも吐くように、書きつけてみる。


 『青春』なんて書きたくもない。そレらしきもの、なかったから。

 他人が懐かしそうに振り返っている青春なんて、どこにも無かった気がするから。

 10代までは地獄だった。

 よく先生が訊いていたよな。

「大人になったら、何になりたい?」

 大人になれる気がしなかった。

「この子は将来ダメになる」「今は勉強できても、オカシイから」

 言われ続けて、自分もそうだと思っていた。

 クラス全員の前で担任に罵倒された。

 20代は、自分の作り直しをはじめた。

 他人の心がわからないと言われたAjuは、自分の心もわからず(というよりあらゆる芽を摘まれてしまったと思った)言葉によって、その断片をレゴブロックのように積み重ねることで、それを創ろうとした。

 小さなAjuちゃんを、大人の皮を膨らませただけのフーセンの中で育てようとした。

 30代は積み重ねたレゴブロックはレゴブロックでしかないと、思い知らされた。

 秋葉原で17人を殺傷して回った男は、あれは自分だったかもしれない。紙一重の自分だったような気がした。

 フーセンの中の、人とも覚えぬ痙攣する小さな生き物‥‥。

 それでも、ひょっとしたら『青春』と呼べるような状況は、この頃あったかもしれない。

 縄文杉を見たのもこの頃だった。

「これが縄文杉です」

 ガイドの人に言われても、どれだかすぐにはわからなかった。

 それは最初、岩に見えた。

 風で樹幹(先端に成長点がある)が折れたそれは、他の屋久杉よりは背が低く杉本来の樹形ではなかったが、懸命に生き、葉を茂らせて、神々しいまでの姿を見せていた。

 生きればいいんだ。

 どんな姿でも。

 枝を伸ばせるところから伸ばして、葉を茂らせることのできる場所に茂らせて。

 Ajuもまた、ただの生き物だ。

「足掻け!」という言葉がこのとき浮かんだ。

 40代になって初めて、諦めていた能力が芽を吹いた。

 もう絶対にここから枝は出ない——と思っていた場所から。

 人生は諦めてはいけない。 と、このとき思えた。

 そして、血の通いだしたレゴブロックの心は、鬱を発症した。

 50代にそこから抜け出せたとき、くらい海の底から光り輝く水面を目指して、マイナスからゼロを目指して足掻き続けてきたAjuは、ようやくスタートラインにたどり着けた、と思った。

 そうか。みんなあの時、ここから社会に向かって駆け出していったのか‥‥。

 人生は終盤で、同期たちはAjuには見えないゴール近くにいるようだった。レースはとっくに終わっている。

 それでも、足掻く中で、最低限自分が欲しかったものだけは手に入れたような気もした。

 世間一般で言う「成功」ではないけれど、これも「成功」だろう。

 幸福感があった。

 誰もいなくなったスタジアムで靴の先をトントンしながら思う。

 どうする? 今から走ってみる?

 でももうそんな体力もない。

 だから、歩いてみることにした。同期たちが見ていったであろう景色を見ながら。

 60代になって、さて人生もロスタイムに入った——と思ったAjuは、「やり残したことは?」と考えた。

 10代の頃、漫画家を夢見たことがあったっけ。また、漫画でも描いてみようか‥‥。

 でも、すでに目も悪くなり、あんなにいっぱい線を描いて表現する根気も失せてしまっていた。

 それでも、頭の中に残ったままになっているアイデアや物語を、このままにしておけば、近い将来火葬場の灰になる、と文字で出力を始めたのが「なろう」に来た頃。

 やりだしたら年甲斐もなく面白くなってしまった。

 そして、気がついた。

 Ajuは自分には得られなかった何かを、物語を作ることで自分に与えたかったのかもしれない。

 漫画家を目指そうとしたあのときから。ずっと‥‥。

 Ajuは足掻いている自分のために、架空の現実としての「物語」が欲しかったのかもしれない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんなゲロ、他人に見せるもんでもないかな。

しいなさんの判断で、このまま没にしてくださっても結構です。

丑三つ時に目が覚めて、何かに憑かれたのか、吐き出しちまいました。



【しいなの感想】


飲もう!(๑•̀ㅂ•́)و✧


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― 新着の感想 ―
乗り越えた【つらい】の数だけ【ひどい】が描ける! 人間は無限の寿命は持ちえないけど、創作物なら無限の寿命にだって届くはず! Aju様にしか書けない無限の何かがきっとある! それこそが青春!
Aju様、ありがとうございます(*^▽^*) 元気な時に…… メンタル疾患中で、小説が昔のように読めず( ;∀;)
とっても無責任なことを書いてしまいますが、どんな能力を持って生まれるかは分かりませんし、子どもは親を選べませんし、良い人と巡り合えるかは運ですし、ゲロは胃腸が貴方を守ろうとしている大事な防御反応なので…
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