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瞬発力企画!  作者: しいな ここみ
第六回目『コンパス』
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しいなここみのコンパス2


『まんまる花火より……』



 彼女を誘った初めての夏祭り──


 僕のために頑張って、浴衣を着てくれた彼女が、愛しかった。


 高くてつまらない屋台の食べ物も、彼女と一緒だとどんな高級レストランの食事よりも美味しかった。




 夜空を花火が彩った。


 僕らは並んで、それを見上げた。


 暗闇を一瞬あかるく染めて、すぐに消える花火が、どんどん打ち上がる。


 儚さが美しかった。

 寂しいなんて思わなかった。

 今、この時が、ここにあることに、心から感謝したくなる気持ち──


 だけど僕にはなんだか不満だった。


 コンパスで描いたような、まんまるの花火がどれほど色鮮やかでも、見ているうちに飽きてしまったんだ。


 確かに綺麗だけど単調で、整いすぎていて、工夫は感じるけど意外性が感じられなくて、僕は思わず視線を移した。隣に座る、彼女のほうへ──


「綺麗だねぇ」

 彼女の生々しい唇が、そう言って動く。

「は〜まや〜」

 ちょっと違うぞと思いながら、ただ心が楽しくなって、僕は微笑んだ。


「好きだよ、花名カナ


 僕がそう言うと、彼女が振り向いた。


「え? なんか言った?」


 にへらっとした目が、僕を見つめる。

 その橙色の肌を、花火のあかりが彩る。


 彼女の丸顔。それは手描きのように、ちょっと()()()で、複雑な趣きがあって──

 だからこそ、その夜僕は、それを一番かわいいと思ったんだ。







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― 新着の感想 ―
読ませていただきました。 花火が炸裂した弧を描く瞬間、コンパスでかいた円にも見えますね。 ん〜浪漫やね(笑)。 美しいものには、飽きがくるかあ・・・。 夏の思い出と彼女の素敵なお顔・・・微妙なすれ違…
目がな、いやらしいモノを見るような目なんだな。
なんか言った?(„ಡωಡ„) 人は整いすぎているものより、いびつなものに惹かれるのよね…… ん???(# `꒳´ )
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