高橋クレイジーエンジニアさま
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「若い男達は新入社員の高橋さんが気になるようです」
ゴールデンウィークが明けて、梅雨の気配が迫る季節。
山田工業株式会社の情報システム部に研修を終えた新入社員が配属された。
総勢25人の中規模な部だが、会社の増員方針により女性総合職が3名も配属となったのである。
しかし、配属された3人により部の若手3人組は悩みを抱えることになってしまった。
「なんで全員苗字が【高橋】なんだよ」
「【佐藤】や【鈴木】が沢山居るなら分かるけど」
「地域性あるけどそんな多い苗字じゃないよな」
食堂で昼食を食べながらぼやく若い男3人組。
班は違えと気が合うので普段から何かとつるんでいる。
「偶然か? 狙いか? 全社でも女性総合職18人なのになんでこんな配属に?」
「18人の中に【高橋】が3人居るだけでもレアなのにな」
「そして、なんでその3人を同じ部に集めるかな」
配属は能力や適性や希望で決まる。そして、人の配属は会社の経営にとって重要な事であるから慎重に決められる。
そこは3人共知っているから【高橋】を3人揃えたのはジョークではないことは分かる。
分かっているならそれほど盛り上がる話題ではないのだが、彼等も入社2~5年目の若い男。部署に若い女の子が来たとなるとつい話題にしてしまうのである。
「まぁでも、高橋さん可愛いよな」
「いや、どの高橋さんだよ」
「そういえば呼ぶ時どうやって区別しよう」
配属された3人の高橋さん。
出身地も異なり血縁も無いので当然全員似ていない。
「あの、背の高い高橋さんレベル高いぞ」
「でも貧乳ぽいのが残念だな」
「まぁ、長身は貧乳を併発しがちだから仕方ないな」
食事が終わり、食堂窓沿いの長テーブル席でコーヒーを飲みながら取り留めのない話をしてくつろぐ。
彼等の日課であり、毎日の楽しみである。
「貧乳は付加価値だぞ。これだから素人は」
「わからんでもないけど、俺は背が低い高橋さんが推しだな」
「制服から私服に変わったらボインバイン期待できそうだな」
情報システム部は私服での勤務も自由であるが、会社ロゴ入りの制服も支給される。
引っ越し直後で私服の手持ちが少ない女性新入社員は最初は制服を愛用するが、数カ月もすると私服で出社することが増えてくる。それを眺めるのは部署の男達の小さな愉しみであった。
「あと一人の高橋さんは、微妙だな」
「うーん、あの高橋さんは、確かに微妙だな」
「そうだな。強いて言うなら、モブだな。【喪女】だ」
昼休みも後半に入り、食堂に居る人数は減って静かになっていく。
そんな中で、彼等は日課の雑談を続ける。
「でも、案外【喪女】って嫁としてはモテるよな」
「そうかもしれん。あの3人の中では一番結婚先かもしれん」
「でもそれを呼び方にはできんなぁ。【喪女】の高橋さんとか」
なごむ3人に早足で駆け寄る男が1人。情報システム部の高崎部長である。
「オイ。実装班の山崎、検証班の山崎、管理班の山崎。社内でなんちゅう話をしとるんだ」
「あっ。部長」
「そうか、班が違うから、所属班で呼び分ければいいんだ」
「そういえば俺達も同じだな」
つるんでいる男達は全員【山崎】。入社年度は違えど多く無い苗字なのに3人同じ部署に揃ってしまった同類であった。
「そういう発言はセクハラになるんだぞ。人事部管轄の高橋執行役員にバレたら大変だぞ」
「あの、女性初の執行役員の方ですね」 キリッ
「そういえばあの御方も高橋さんでしたね」 キリッ
「セクハラとかのコンプライアンス担当でしたね」 キリッ
「配属直後にセクハラ発言されて男嫌い拗らせて行き遅れて、高橋さん繋がりであんな風になっちゃったら可哀そうだろう」
「「「部長うしろぉぉぉ―!」」」
この後、4人揃って【相談室】でこっぴどく怒られたとか。
セクハラ ダメ ゼッタイ。
【しいなの感想】
どんな新入社員かな? 私がなってみたいようなひとかな?(๑•̀ㅂ•́)و✧
……と思ったら、色々と意外でした(^.^;