高橋大野 錦さま
大野 錦さまhttps://mypage.syosetu.com/1970422/
ギュ~、ゴロゴロゴロ、グッ、グボボボッ!
「や、やばい! もう出そうだ!」
閑静な住宅街を歩く私は、猛烈なゲリダ豪雨直前に襲われていた。
今は13時20分。
今日は1日中外回り。
昼に麻婆豆腐専門店に行ったのが失敗だった……。
時はさかのぼり12時ジャスト。
取引先の営業所がある最寄り駅を降りた私の目の前には、本格的な麻婆豆腐店が飛び込んできた。
「あれ、結構テレビとかで有名な店じゃない?」
商談は14時からなので、ここで昼をとることにした。
目的の営業所はここから歩いて20分ほど。
「激辛麻婆豆腐セットおねがいします!」
「かなり辛いですよ。大丈夫ですか?」
店員のこのアドバイスに素直に従うべきだった……。
出てきたのは唐辛子がすさまじく効いているのがすぐわかる赤さ。
アツアツの自家製ラー油がスープのようにそそがれ、表面にはこれでもかと花椒がかけられている。
ごはんはおかわり自由、ではなく2回までと制限されている。
更にぐつぐつとした麻婆の大鍋に対して、小さな器にちょこんとあるだけ。(おのれ~、この米騒動!)
なので、大鍋の激辛麻婆をごはんの力をほとんど借りずに完食した。
そして、会計をして店を出る。
この時が13時。
「それ」がやってきたのは店を出て歩いてから10分後。
「なんでここコンビニとかないんだよ!」
立ち並ぶのは静かな一軒家のみ。
さっき通った公園のトイレは「故障中」だった。
私は家々の表札を見て、ある知る人ぞ知る豆知識を思い出す。
「あった。交渉してみるか」
ピンポーン!
「はーい、どちら様でしょうか?」
インターホンから声が聞こえる。私は懇請する。
「すみません! 急にもよおしてしまって、トイレお願いできますか!?」
「はい、いいですよ~」
ガチャリと家のドアが開き、この家の人がトイレの場所を指し示す。
ダダダッ、一直線にトイレに駆け込む。
「ふぅ~、助かった……」
まさに間一髪。
あの豆知識は本当だったのか。
「ありがとうございました」
礼をして、私はこの家を辞する。
改めて表札を見る。
「高橋」とある。
「社会法人日本なんでも姓の研究機構」によると、「高橋」姓の家の方は、見知らぬ人に家をトイレを貸してあげる第1位の姓とされる。
おしまい
【しいなの感想】
困った時の高橋!
覚えておきます!(๑•̀ㅂ•́)و✧ 私もよくアイツに襲われますので……