成層圏からスイッチくん
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# 星々の狭間のカフェテリア
「いらっしゃいませ、ご主人様」
真空の窓から見える青い地球を背景に、ミア・スターダストは軽やかに一礼した。彼女が勤める「スターダスト・ボードゲームカフェ」は、地球の成層圏を超えた宇宙ステーション「アストラルハブ」の一角にある人気店だった。
ミアはフリルの付いたメイドの制服を着て、無重力空間でも優雅に動けるよう特殊ブーツを履いている。彼女の主な仕事は接客と清掃。特に清掃は宇宙空間では特別な意味を持つ。わずかなサイコロやコマの破片でさえ、無重力環境では危険な浮遊物になりうるからだ。
「本日のおすすめは『銀河帝国の興亡』です。三千年の歴史を一晩で体験できる壮大な戦略ゲームですわ」
客の男性は興味深そうに頷き、窓際の席に案内された。そこからは成層圏の淡い青からインクのような漆黒へと変わる美しいグラデーションが一望できた。
ミアが給仕ロボットにオーダーを伝えていると、突然警報が鳴り響いた。
「お客様、申し訳ありません。小惑星の破片が接近しているようです。安全ベルトをお締めください」
彼女は冷静に対応しながらも、内心では焦りがあった。昨日の清掃中に見つけた制御システムの小さな異常—それが今日の問題に関係しているかもしれない。
ステーションが小刻みに震え始める中、ミアは制服のポケットから特殊ツールを取り出した。メイドとしての仕事の傍ら、彼女は実はステーションのエンジニアでもあったのだ。
「少々お待ちください」
優雅な動作で浮き上がり、天井のパネルに手を伸ばす。彼女の手際の良い作業により、わずか数分でシールドシステムが復旧した。衝撃は最小限に抑えられ、カフェの中のボードゲームのコマさえ動かなかった。
「危機一髪でしたね。さすがミアさん」と常連客が言った。
「いいえ、メイドの仕事の一環です。清掃も保守も、どちらもこの宇宙の美しさを守るため」
彼女は微笑み、窓の外に広がる星々を見つめた。地球の青い輝きと無数の星々の間で、このちっぽけなカフェが人々の憩いの場になっていることに誇りを感じる。
宇宙で最も人気のあるボードゲームカフェのメイドとして、ミアの一日はまだ始まったばかりだった。彼女は給仕トレイを手に取り、次のテーブルへと優雅に浮かんでいった。
「さて、次は何のゲームをご案内しましょうか、ご主人様?」
宇宙の果てにある小さなカフェで、今日も銀河を越えた冒険が始まろうとしていた。
【しいなの感想】
壮大な宇宙の中のちっぽけな人間による壮大なゲーム(*´∀`*)