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瞬発力企画!  作者: しいな ここみ
第三回目『お父さん』
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Ajuさまはお父さん

Ajuさまhttps://mypage.syosetu.com/1971684/



 電話が鳴った。


 誰? こんな夜中に‥‥。

 そう思いながら、寝ぼけた頭で受話器を取る。


「あ、お父さん‥‥。」


 父は消防団の団員だった。

「もう年なんだし、辞めたら?」

とわたしが言っても、父は続けていた。

「年だからこそな。人様の役に立っていられるのは元気の元なんだよ。かしらは若いもんに譲って、俺はしゃしゃり出てねぇから。」


 そんな父は、あの震災の日も人々に逃げるように呼びかけて広報車で走り回っていた。


 そして‥‥。

 大きな波が、そんな父を呑み込んでいった。


 今も、父は「行方不明」のままだ。


「お父さん。今、どこにいるの?」


『近くまで来たからな、ちょっと寄った。元気そうで、なによりだ。』

 それだけを言って、電話は切れた。


 窓の方を見ると、カーテンの隙間、ガラスの向こうにふわふわと漂う蛍のような淡い光が見えた。


 その時になって、わたしは自分が持っているのがインテリアとして置いていただけの昭和の黒電話だったことに気がついた。




        了



【しいなの感想】


ハートフル・ホラー(*´艸`*)


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― 新着の感想 ―
お父さん…… 泣きました。 黒電話、いいですね。 『電話が鳴った』シリーズ、気になります( ・`д・´)
すごくよかったです。 お父さん~。短いのに泣けます。
これは以前『超短編小説 電話が鳴った』という一瞬で読める超短編だけを集めた「連載」の続きです。(あまりに短くて投稿できないものがあったので「連載」という形にしました。(^^;)) 「電話が鳴った」とい…
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