みなはらさまの夢見がち
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-夢見がち-
牛乳かたかた
何かヘンなの♪
わたしは思いつきの鼻歌を歌いながら、さっき開けた冷蔵庫の違和感に気がついたうれしさで、すこし浮かれた気分になっていた♪
家をシェアして一緒に住んでる同居人、あかりちゃんはちょっと変わっていて、ふと思いついたときに一緒に住んでるわたしたちにイタズラを仕掛けてくることがあるんだ♪
読んでいる本の栞を手前にずらしてみたりとか、靴の左右を逆に置き換えたりとか、そんな、たわいもないイタズラ♪
それを見つけると嬉しくなったりするんだよね~♪
あの子が遊ぼう!って言って仕掛けてきたイタズラ・ゲームに勝ったときみたいな嬉しさ。
一緒に居る他の子とそんな話をして、見つけたよ♪とクスクス笑ったりすることもある。
平凡な日常への、ちょっとしたスパイス♪
そんな楽しさを味わいつつ、毎日を過ごしていた。
目覚めてから牛乳飲みたくて、冷蔵庫を初めに開けたとき、牛乳パックがカタカタ揺れた気がして、
あかりちゃん、またイタズラ仕掛けてるなと思いつついたんだ。
見つけた♪ってちょっと嬉しくなって。
あかりちゃんったら、空の牛乳パック入れて置いて驚かせようとしたんだね~♪
そのあとで二回目に開けたら牛乳パックが揺れないで、冷蔵庫のドアを何度か開け閉めしたら、なぜか中身が入ってるみたいな、重たい感触が……
イタズラのつづきかと思って、パックを手に持ち重さを確認して、空いている口を開いて無造作にコップに注いだら、中から変な色の生き物がコップに落ちてきた。
ぶよりとした見たことのないそれは、
「ミギャー!!」と叫びながら、カリカリとコップを内側から引っ掻いて倒して、キロりとひとつ目でこちらを見ながら、部屋の隅のごちゃごちゃした場所に飛び込んで見えなくなった……
ヘタヘタとその場で床に座り込んだわたしは、何とか立ち上がり、よろけながらあかりちゃんの部屋のドアを叩く。
あかりちゃん、留守なのか出てこない。
そうして何度も強く叩き続けているうちに、そのとなりのドアが開いて、「何事なの?」と眠そうに目をこすりながら、シェアしあう子のひとりが部屋から顔を出す。
説明するのももどかしく、「徹夜なのに~」とぼやくその子の手を引いて冷蔵庫のところに行くと、前のテーブルに置いたはずの牛乳パックもコップもない。
「あれ~!?」と言いながら、不機嫌に眠い目をこするその子へとあったことを話すと、
「牛乳入ってるじゃない」と冷蔵庫を開けてポケットの牛乳パックを指さした。
「夢でも見たんじゃないの? 寝ぼけないでよ」
あたし寝なおすからと言う子に、なんとか謝ることばを口に出せたわたしだったけれど、聞いたか聞かなかったか同居人の子はよたよたと戻っていった。
夢だったのかな?
夢でも見たのかな……
……おそるおそる、冷蔵庫を開けると、またカタカタする牛乳パック。
そうっと掴んでもちあげると、軽めの重さだ……
中途はんぱに残ってるのかな?
コップに注ごうと、そうっと静かに傾けると、何も出てこない。
牛乳パックを逆さにして振ってみると、コップの中にぽとりと、また何かが落ちてくる。
コップの中には、ファンタジーに出てくるような小人がいて、起き上がりながら、振り向いて照れたような笑顔を見せたところでわたしは気が遠くなって、目の前が真っ暗になった……
「ちょっと! 大丈夫!?」
目を開くと、目の前には心配そうな顔をした同居人の子の顔があった。
「寝てるにしては変だから起こしたんだけど、大丈夫だった?」
「あたしが言うのもおかしいけどさ、ちゃんと寝た方がいいと思うよ」
この頃の陽気は変だから、などと言っているのを聞くともなく聞いているうちに意識がはっきりとしてくる。
「あかりっ!!」
未だちゃんと働いていない頭で、まともに伝わらないような、おかしな文脈を繰り返しながら、彼女へと初めからの、理解されるか判らない出来事をなんとか伝えてゆく。
彼女はうなずきを返さず、言葉も挟まずに、わたしの様子をこちらの目を見ながら、心配そうにじっと見て、はっきりとこう言ったのだ。
「あかりって誰のこと? そんな子、この家には住んでないわよ」
わたしが叩いてたのは物置のドアだと、そのあと言われた。
あっけにとられたような顔のわたしを見て、呆れた顔をしたその子は肩をすくめ、困ったように微笑みながら、わたしにこう言ったのだ。
「また夢を見たのね。本ばかり読んでて夢見がちなあなたらしいわね♪」
-おわり-
彼女たちの後ろの、日の当たらない部屋の隅の隙間からの三つの瞳。
人に見つからないように彼女らを観察している小人とよく判らない生き物のことには、二人とも気づいてはいなかったのだった。
-つづく-
【しいなの感想】
面白いッス(*´艸`*)
こういう不思議な夢が混じったようなの、大好き(*´∀`*)