モモル24号さま
モモルさまhttps://syosetu.com/messagebox/view/meskey/12417923/
◇ 大型トラックに駆ける青春 ◇
私は⋯⋯あいつらだけには絶対負けたくなかった。
トラックで駆ける青春。流れる汗と響き渡る歓声。
国際大会を視野に、総合運動公園内に大型トラックが新設された。
アスリート達が日頃積み重ねた鍛錬の成果を見せる恰好の舞台だ。
メダリスト達が使うような大舞台に立ったのが私だ───。
「緊張してるのわかるけどさぁ、予選から力み過ぎると持たないよ?」
共に苦しい思いをしながら練習をして来た同学年の友人が、軽く背中に触れて声をかけてくれた。
「顔に出てた?」
「うん。先輩たちが笑ってるよ」
トラックの外周、観客席で競技時間まで余裕のある先輩や後輩たちが臨時の応援団を築いていた。
一年間⋯⋯部活動で苦楽を共にし身体をいじめ抜いた仲間だけに、先輩たちは自分の事のように頑張れと声をあげて応援してくれる。
私も一年間先輩たちのずっと後ろを追いかけ続けて来たから⋯⋯場違いな実力しかないのはわかっている。
小学校や中学校では、私より足の速い人など沢山いたものだ。
たまたま私の世代は入部希望者が少なくて、私は中・長距離選手として5,000メートル走予選の出場選手として、エントリー出来た。
県大会、地方大会、全国大会と勝ち上がることなど最初から諦めていた。友人は全国レベルの選手だ。
「一緒にゴールしようか」
ゴールする前に周回遅れになるのがわかっている嫌味⋯⋯ではなく励ましだった。ゴール⋯⋯つまり力を出し切って完走しようという私たちの合言葉みたいなものだ。
積み重ねた経験や努力が違うのに、化物みたいに速い友人に勝とうなんて考えていない。それでも勝ちたい小さな目標が私にも出来た。
それは小学校や中学校でまったく敵わなかった走るのが得意で目立ちまくっていた同級生たちの姿を見たからだ。
学校代表として活躍し、人気だった同級生たちの活躍は高校生になってからはまったく聞くことはなかったので気づかなかった。
もっともあちらも昔からモブな同級生の存在など気にも描けていなかったので、同じ舞台に立ち、闘争心を燃やされているとは思っていないはすだ。
負けたくない⋯⋯そんな気持ちが私にもまだ残っていたのが不思議だった。気がつきもしなかったモブ同級生の努力を、見せつけたいだけかもしれない。
「そんなの当たり前でしょ? 私たちと一緒に一年間逃げずに頑張って来たんだから」
勝者のメンタル強いよ。でも一緒に走って来たからこそ、現実を理解しているんだ。学校のトラックで、何度も追い抜いた友人が私を抜き去る度に背中を叩いてくれたから、知ってるんだ。
努力の時間は裏切らないと。
私の視線に、かつての人気の代表の一人が怪訝そうに見る。悪いね、睨んでしまって。
「位置についてー」
────苦しい練習を重ねて来て、走り抜く自信はついたよ。それでも、緊張は一丁前にする。悔いは残さない⋯⋯友人に習って、私はスターターのピストルの合図に集中した。
【しいなの感想】
もちろんそっちのトラックもあり