エンゲブラさま
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(注!グロ表現を含むR15作品です)
題『よくあるトラック転生』
◇
残業に次ぐ、残業。
終電での帰路。
意識朦朧とする中、俺は半ば意識的に大型トラックの前に身体を投げ出していた。
もうこんな生活はイヤだ。
さあ、よくある「なろう転生」だ。
◇
「次の方、どうぞ」
事務的な呼び出し。
俺は、なろう転生の待合室で、長時間待たされていた。
いわゆる「異世界転生」。
死後の転生先は、任意であるらしい。
だが「異世界ナーロッパ」転生は、日本人に大人気らしく、俺はすでに記憶を亡くすほどの長さ、そこで待たされていた。
トラックに跳ねられ、手足があらぬ方向に曲がり、脳みそも少しハミ出している状態の俺は、待合室でも中々に注目を集めていたが、飛び降りの男が現れてからは、俺は「普通の死者」扱いとなった。
「次の方、どうぞ」
ようやく俺の番が来た。
さあ、ナーロッパに転生して、チートでハーレムな人生の始まりだ。
「お、これは素晴らしい!貴方には、ユニークスキル<不老不死>が授けられます」
ルーレットを回し、<ただの管理人>を自称する神が、手足が不自由な俺に代わって、ダーツを投げた。そして、突き刺さった先にあったのは、見事にユニークスキルであった。―― これで永遠に勝ち組が確定した!
「容姿は、どうなりますか?金髪ですか?貴族ですか?平民ですか?」
「いえいえ、ご心配なく。愛着ある今の容姿そのままでの異世界行きとなります」
「え、どういう意味ですか。またこどもの頃の私に戻って、生まれ直すという意味ですか?」
「いえいえ、ご心配なく。転生ではなく、いわゆる転移となりますので」
「えっ、転生ではないんですか?」
「はい、その姿のままでの転移です。あ、もちろんユニークスキルも付けて」
「そのままの姿って……まさかこのケガした状態じゃないですよね?」
「いえ、そのままです。ただし、高位聖職者を見つけて肉体蘇生の魔法をかけてもらえば、元通りにしてもらうことが出来ます」
「そんなの嘘でしょ、いきなり超ハードモードじゃないですか!」
「貴方には<不老不死>のユニークスキルがあるので、死に絶えることなく、いつかは見つけ出すことが出来ると思いますよ、異教徒にも施しをしてくれる奇特な高位聖職者にも。ただし、今かかっている<呪い>が解けていなければ、無意味ですけどね」
「呪いってなんですか!呪いって!あと異教徒って、俺はちゃんと異世界の宗教にも帰依しますよ!」
「呪いは、貴方がトラックドライバーにかけた呪いとも言えます。貴方の半ば故意の飛び出しで事故を起こしてしまったドライバーは、これから社会的な罰を受けることとなります。不条理にも。それが今後、貴方にのしかかる呪いへと変わるでしょう。<罪>からは逃げ切れるものではありませんよ。たとえ死んでも」
「え、どういうことですか!跳ねた方が悪いのに、なぜ!」
「次の方、どうぞ」
そこからは何を言っても、何も聴こえないかのように管理人にスルーされ、ゆっくりと身体が薄れていく俺。
嘘だろ?
ブラック企業に勤めた代償として得たせっかくのユニークスキル。それが呪いで相殺だと?どうすればいいんだ?トラックドライバーの人生なんて、知ったこっちゃねーよ、この野郎!
◇
あとがき)
利己的で、ご都合主義的な転生希望者には、相応しい末路か。
あと、読み返しもしていないので、出来も知らん()。
【しいなの感想】
死ねないー(*>_<*)ノ