田尾風香さまより現実恋愛いただきました
田尾風香さまhttps://mypage.syosetu.com/2045544/
タイトル未定
「私、帰るね」
「おう」
「で、もう来ない」
「……は?」
驚いた顔をしている彼を見て、私はもう一回言った。
「もうここには来ない。だから、これでさよならしようよ」
「い、いや、ちょっと待てって。なんで急に……」
「少なくとも、私には急じゃないよ。前から考えてた」
ブラック企業に勤めて体も心も壊れた彼は、東京から離れた田舎で農業を始めた。一方の私は、まだ東京暮らしだ。
遠距離恋愛だけど、それも悪くないと思った。虚ろな目をした彼の表情が、元気を取り戻しているのを見るのは嬉しかった。「東京へ帰って、会社の人に会ったら嫌だ」という彼のために、会うときにはいつも私が来ていることだって、別に不満があったわけじゃない。
「私は、東京で暮らしたい」
来るたびに思い知らされるようになった。
ここは私の暮らす場所じゃない。
こんな田舎の不便なところじゃなくて。ごみごみしてて、空に高層ビルが突き刺さっている狭い空でも、夜なのにいつも明るくても。それでも私は東京がいいって思うんだ。
「だから、もうお別れしよう」
知ってるから。同じく農業やっている家の娘さんと仲良くなってること。その時のあなたの表情が、嬉しそうで照れくさそうにしていること。
「ばいばい」
何も言わないから了承と取って、最後それだけ告げて背を向ける。と、慌てたような彼の声が呼び止めてきた。
「ま、待ってくれ……!」
「なに?」
一応振り向いてそっけなく問うと、彼はうつむいていた。
「……ごめん」
「別に、謝ってもらうことはないよ」
強がっているつもりもなく、そう思う。
「私は私でいい人見つけるから。あなたも幸せになってね」
私から言い出さなければ、近いうちに彼の方から別れ話があっただろう。それを察したとき、「しょうがないか」程度しか思わなかったんだから、私の気持ちだってもう彼から離れていた。
「じゃあね」
そして、今度こそ呼び止める声はなかった。
田舎で居場所を見つけた彼。都会で生きていきたい私。いつかはこうなると思っていた。だから今あるのは、すがすがしい気持ちだけ。
「よーし! 今から帰るぞ東京!」
笑顔で宣言したのだった。
【しいなの感想】
じぶんに正直が一番(*´艸`*)
ちなみに私はそこそこ田舎が一番好きです。東京なんてデカすぎて何したらいいかわからん(*´ω`*)




