しいなここみ
『大型トラックに乗っててよく思うこと』
大型トラック歴乗務10年になりました。
大型トラックに乗務していますと、よく思うことがあります。
私が乗務しているのはウィング車というタイプです。
左右の横が羽根みたいに上がるやつといえば、わかるでしょうか?
片方だけウィングを上げると、それはまるでライブ・ステージのようになります。
ここから大音量でエレキギターブッ放したら気持ちいいだろうな……。
愛器のギブソンSGスタンダード、持って来ればよかった。
アンプはフェンダーツインリバーブ。けっしてマーシャルではなく!
エフェクターなしのアンプ直結でフルテン!
行けーー!
どっぎゃーーーーん!
曲はストーン・テンプル・パイロッツがいい。
『クラッカーマン』なんてどう?
男前のボーカリスト募集。
ガキっぽくないやつ。それでいて情けない感じのオトナのボーカリスト。
Scott Weilandさんなら文句無し!
キャッチーな『Plush』とかハチャメチャな『Art School Girl』、ロマンチックな『Wonderful』なんかもいいね!
でも人気なのはNirvanaなんだよね。
Kurt Cobainさん、確かに歌詞のセンスとかめちゃめちゃカッコいいし──
わかる、わかるよ?
でもガキっぽいじゃん。
あたしはやっぱりストテンが好き!
カートさんは死んで伝説になって──
スコットさんは死んでも伝説にならなくて──
何しろ死んだ時、40歳超えてたし──
それでもあたしはスコットさんのほうが大好き!
あたしの運転する大型トラックの助手席に
スコットさんが乗ってるのを妄想する──
いつ死んだかわからないほどに自然に死んでいて……
あぁ、そうだよな。
このひとは死んでるのが当たり前なんだよな。
そんなことを思いながら──
あたしは大型トラックの荷台に上がるたび
そこから世界へ爆音をブッ放したくなる。
足元には白いフェレットくんが荷台じゅうを探検していて──
そんな妄想をするだけで
あたしは明日も生きていける気がするんだ。