かぐつち・マナぱさま
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題:『まどりのようせい』
(ひらがな多用の絵本・童話のイメージ、ご容赦下さいm(__)m)
(はじまり)
その いえは
まちの はずれの
ちいさな おかの うえに
ぽつんと たっていました。
もう50ねんの
もくぞうの いえ。
みしみしと ゆかが なり、
ぎしぎしと しょうじが ゆれます。
しかし、そのいえには
『まどりの ようせい』が
すんでいました。
とくべつな なまえは ありません。
でも ずっと そこに いました。
おへやの すみっこに ちょこんと すわって、
しずかに いえを みまもります。
あさ、ひかりが ダイニングに さしこむと、
ようせいは にこにこ。
「おはよう」のこえや
かぞくの わらいごえに、ほっこり。
『まどりのようせい』は
いえのこきゅうを かんじとり
いごこちの よさを うみだすのです。
よる、あめが やねを ぽつぽつ たたくと、
ちいさな ねいきを ききながら
そっと そばに よりそいます。
『まどりのようせい』は
かぞくが あんしんして ねむれるように
やさしい せいじゃくを もたらすのです。
あるひ、まりこさんが
この いえに やってきました。
そして、ふたりの こどもが うまれました。
きょうだいが きゃっきゃと
ろうかを かけまわり、
こどもべやの かべいちめんが
らくがきだらけの日も ありました。
『まどりのようせい』は
こどもたちが あそびやすいように、
おへやを ひろく かんじさせるのです。
「パパ、ママ、だいすき」
ちいさな てがみが
しょくたくの うえに のっていました。
ようせいは そっと むねに だきしめます。
(わたしも・・みんなが・・・だいすきだよ)
『まどりのようせい』は
みんなのぬくもりを うけつぎながら、
ず~っと すむひと と ともに
いえを そだてていくのです。
としつきが ながれ、
こどもたちは おおきくなり、
いえを でていきました。
しずかに なった いえの
てんじょううらで、
ようせいは ときどき
むかしの わらいごえを おもいだします。
『まどりのようせい』は
かぞくのおもいでを しずかに みまもり
そのきおくを いえに のこしておけるのです。
(でも・・すこし・・・さびしいな・・・)
てんじょううらで
ようせいは まどろんでいました・・・
けれど、あるひ──
「ただいま!」
こえが ひびきます。
まごを つれた こどもたちが
げんかんを あけると、
ろうかが きしみながら
「おかえり」と こたえました。
あのころの わらいごえが、
もういちど いえに かえってきたのです。
まどりの ようせいは、
ふうっと かぜになって まいあがります。
また ここに、
あたらしい おもいでが
すこしずつ きざまれていくのを
かんじながら──
──いえは、ただの たてものじゃない。
そこに いる ひとたちと、
ちいさな ようせいが いっしょに いきているのです。
(おしまい)
【しいなの感想】
なるほど……。だから誰も住まなくなった家はすぐに寂れちゃうんですね。