のどあめさまよりエッセイいただきました
のどあめさまhttps://mypage.syosetu.com/811588/
電車の中の神様
「今時の若者は~」
ピラミッドを建てていた時代から書かれていたらしいけど。私は今時の若者はとても優しいと思う。
まだ幼稚園児だった小さな家族を連れて地下鉄に乗っていた時、車内は混み合っていて座れなかった。沢山身体を動かした家族は手すりにつかまりながら眠っていた。そこへ
「どうぞ」
と若いお兄さんが爽やかに家族へ席を譲ってくれた。顔は忘れてしまったがお兄さんの片耳にピアスが二つあったのを覚えている。お兄さんが神様のように思えた。
もう一つ。
東京駅から新幹線に乗った時。その時は席がばらばらになってしまい、小学生だった家族が一人でカップルの隣に座る事になった。しっかりしている子だが、やはり心配で声をかけた。
「すみません、席が離れてしまって。大人しくしているかと思いますが何かあったらこちらにいますので遠慮なく声をかけてください。よろしくお願いします」
「ああ、全然。大丈夫ですよ」
挨拶をするとカップルは快く了承してくれた。
後ろから家族の声が聞こえてきた。よくよく聞いていると。カップルが家族のクイズにつきあってくれているのだ。
お姉さんだけでなく、お兄さんも楽しそうに相手をしてくれている。隣あっただけの小学生に。なんて優しい二人なんだろう。
しばらくして。カップルは途中で下車していった。残った家族の席のトレイの上にお手元で作ったらしき小さな折り紙が一つ。
「隣のお姉さんが作ってくれたの」
降りていったカップルが神様のように思えてならなかった。
家族が小さな時、こうして助けて頂いたり声をかけて頂いた事が多かった。手が離れた今。私からも声をかけるようにしている。
先日乗った、東京発の新幹線の車内でずっと響く子ども達の声。降りる時に、最後尾の席で若いお母さんがたった一人で三人の子どもの面倒をずっと見ていたのだとわかった。長い時間、お母さんは周りに迷惑にならないように、懸命に注意し続けていた。三人も小さな子どもがいたらどうしたって静かにさせるのは無理だ。
疲れきった顔をしたお母さんに、よく頑張ったね、大変でしたね、という思いをこめて私は声をかけた。
「お疲れ様です」
そのお母さんはほっとした顔をして微笑んでくれた。私の声かけは彼女への励ましになれただろうか。
私は、あちこち擦りきれた中年のおばさんだけど。少しでもかつて助けてくれた優しい若者達の力になれれば良いなと思う。
【しいなの感想】
ほっこりしました(*´艸`*)




