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ep.96 未来と過去と今

 緑の元素の奔流を生み出したリス――聖獣は、元素を放つのを止めエルフ達に場を委ねるようにこちらをただ眺めている。風は収まり、岩の壁で身を守っていたニステル、アリィが顔を覗かせた。

「待ってほしい!!俺達は聖獣だなんて知らなかったんだ!!知っていたら手を出すわけがない!!襲われたから仕方なく応戦したまで、正当防衛だ!!」

 カミルは自分の正当性を主張し、事を荒立てるのを抑えようと動く。

 だが、エルフ達はカミルの言葉に聞く耳を持たない。「ふんッ」鼻を鳴らして睨みつけるのみ。

「聖獣様が襲ったのであろう?ならばお前は害敵な存在であるということ。矢張りヒュムなど信用できん!!」

「待ってください!!私達に敵意はありません。ただ無事に皇都に帰りたいだけなのです」

 同族であるリアが代わりに語り掛けた。

「んぅ?その耳、その風、まさかエルフか?なぜそのような髪をしておる?」

 リアはカミルに握られた手を放し、左腕に装着した花緑青(はなろくしょう)のバングルを高く掲げる。

「私は未だに精霊の刻印に苛む身であります。この銀髪もその影響故なのです」

 エルフ達は押し黙り、互いに顔を見やり真偽について相談する素振りを見せる。だが、望む結果は得られなかった。

「ヒュムとつるむエルフなど信用できるものか。銀髪も我らを欺く為に施したのだろうが、そんな小細工が通用するものか」

 さすがのリアも押し黙る。彼らにとって、同族であれヒュムと関わりのある者は信用しないらしい。

 リアの対話が失敗したことで、アリィが歩み出る。

「私はアシハラフヅチ皇国軍シキイヅノメ第3部隊長アリィローズ・アロシュタットです。聖獣様への非礼、心からお詫び申し上げます」

 深く、長く頭を下げ陳謝する。

「私の説明不足でした。まさか、聖獣様をお目にできるとは想定しておりませんでした」

「ふんっ、口では何とでも言えよう。もし、聖獣様が害されようものならどうなるかわかっておるだろう?」

「はい……。黒の元素が漂う山々において、聖獣様がいなければ緑の元素は穢れ、木々は腐り果て、大地が穢れに染まってしまいます」

「そうだ。だからこそ皇国に聖獣様を護る法整備をさせたのではないか。よもや法を犯す者が現れるとは思わなんだ」

「そんな……、俺達は山の守り神のような聖獣様に手を出そうとしていたのか……」

 だからこそ、自分達が何故襲われたのかが知りたい。

「ザントガルツにロウシィスって黒の樹があったでしょう?あの樹には元々黒の元素を吸収がありましたが、エンディス大陸を漂う元素量には対応できませんでした。ですが、聖獣様のそのお力が付与されたことにより吸収量が上昇して、安定した生活ができるようになったのです」

 あれも聖獣様の力なのか。

「では、なぜ私達は襲われたのでしょう?」

 リアは毅然とした態度で問いかけた。

「そんなもの、貴様らが元素を乱す存在だと判別したからに決まっておろう!!」

 リアの口角が上がる。

「仮に、本当に私達が山にとって邪悪な存在だとするならば、聖獣様の攻撃が止まった理由をお教え願いたい。なぜ私達を亡き者にしないのですか?」

 エルフの顔が苦々しく変わり「そ、それは……、聖獣様なりの……お、お考えが………」訥々(とつとつ)と語り、そして言葉に詰まる。

 弁明する好機と捉えたアリィがひとつの提案をする。

「ではどうでしょう?聖獣様の判断に委ねてみませんか?カミル達はエジカロス大森林にて鬼人討伐に大きく貢献しております。鬼の手から森を解放したのです。瘴気から避難したエルフの方々なら、鬼がどういった存在なのかお判りでしょう?彼らは命を懸けて森に平和を(もたら)したのです。その心意気、汲み取ることは叶いませんか?」

 エルフ達は押し黙り、リーダーらしき男性の発言を待つ。沈思黙考(ちんしもっこう)の末、語り出す。

「良いだろう。我らも聖獣様の判断には逆らえん」

 リーダーは聖獣様の下へと歩み寄ると跪く。

「聖獣様、彼の者共が山にとって善悪なのかのご判断を賜りたく存じ上げます」

 聖獣様の目が輝いたような気がした。カミル達に向ける視線は、外見だけではなく、まるで魂までもが見透かされる、そんな感覚に陥った。

『黒を纏いし男子(おのご)よ。その剣を天へと(かざ)して見せよ』

「なッ!?喋ったぁぁ!?」

 カミル達は各々驚愕し、聖獣に視線を奪われた。それもそのはず、聖獣は見た目に反して低い男性のような声だったのだ。

『私をその辺の獣と一緒にするな。人語なぞ容易く操れるわ。して、黒毛の者よ。私の要望に応える気はあるのか?』

「え?あ、はい」

 黎架(れいか)を空へと伸ばしていく。砲金色(つつがねいろ)の刃が日の光を受け輝いている。

「これでよろしいでしょうか?」

 恐る恐る尋ねるも、聖獣は黎架の刀身をしげしげと眺めている。その目は何かを見定めるような、そんな印象を抱く。

『矢張りか』

 黎架からカミルへと視線が下がる。

『その(つるぎ)、元素の剣で相違ないな?』

 跪いたリーダーの男がばっとカミルを見上げた。

 元素の剣、か。これをそう呼ぶってことは、伊達に聖獣を名乗ってるわけじゃないようだ。

「私にはわかりかねます。事あるごとに黒の元素の剣と言われることは確かですが、確たる証拠はありません。この剣の元となったのは、とあるエルフに譲られた剣なので」

「げ、元素の剣!?その様な代物、どうしてヒュムなんぞが持っておる!!」

 なぜか激高するリーダーの男の瞳は憎々し気だ。

「だから、貴方と同じエルフに譲られたんだって……」

 人の話くらい聞けよ。

 カミルは心の中で悪態をつき、眉を(しか)めた。

『魔力を込めてみろ。それで自ずと答えが導き出されるであろう』

 聖獣に言われるがまま黎架に魔力を流していくと、緩やかに周囲の黒の元素を吸収し始めた。

 あまり気にしたことはなかったけど、圧縮魔力じゃなくても元素を吸い込むんだな。吸収率には差があるみたいだけどさ。

 砲金色(つつがねいろ)の刀身がゆっくりと黒く染まっていく。

『黒の元素の剣で間違いなさそうだ』

「ちょっと待って」

 リアが口を挟む。

「元素を吸収するだけなら」

 再び花緑青(はなろくしょう)のバングルを見せつける。

「この風縛石(ふうばくせき)のように、闇縛石(あんばくせき)を用いれば同様なことは可能でしょう。なのに何故、黎架を元素の剣と断定できるのですか?」

『干渉力だよ』

「干渉力?」

 訝しむリアに聖獣は告げる。

『お前の言うように、元素を縛る石にも同様のことは可能だ。だが、干渉力に至ってはまるで別物だ。石は元素を集めるだけなのに対して、元素の剣は集めた元素への干渉力が高まる。結果として少ない元素、少ない魔力で強大な力を発揮することができる。私が見たのは、集まった元素への干渉力なのだよ』

「だから、黎架が元素の剣だと判断したのですね」

 納得するリアに対して、エルフ達は「そんな……」信じられないとばかりに険しい顔をしている。

『元素の剣に選ばれているのであれば、お前達は害とはならない』

 カミル達は顔を見合いほっと息をつく。

「では、なぜ私達は襲われたのでしょうか?」

『それは私の早とちりだ、許せ』

「私達に被害はありませんでしたから、まあ……」

 勘違いで襲われるのは勘弁だ。

『その昔、黒の元素の剣の所持者が行った蛮行のせいか、守護者の間で警戒心が強くなっておるのだ』

「蛮行というのは?」

 カミルは元素の剣を扱う者として、かつて起きた出来事が気になった。

『竜の黄昏を招いた、と言えば通じるか?』

「え!?」

『黒の元素の剣を振るい、世界を壊したのだ』

「え!?え!?」

 突然の言葉に脳の理解が追いつかない。

『それ故、私達は黒の元素の剣を警戒している。黒は破壊を司る。害のある存在であれば葬らねばならん』

 そこで自分が置かれた状況を理解した。聖獣様もそうだけど、竜と頻繁に遭遇するのも、烙葉(らくは)達鬼人が近寄って来たのも、全部黎架が原因だったのか……?なら、サティが俺に刀を託したのは、その類の災いから逃れる為なのか?それとも―――。

「攻撃を止めたということは、疑いは晴れたということでしょうか?」

『そう思ってくれて構わない』

 聖獣からの言葉に、カミルはほっと胸を撫でおろした。聖獣が敵ではないと判断した以上、エルフ達も黙って従うしかなく、構えた弓を下ろさざるを得なかった。だが、疑問は残る。聖獣が語る守護者という存在が、世界の秩序を担う竜という存在であるのなら納得はできただろう。今、目の前にいるのは齧歯(げっし)類のリスである。聖獣と呼ばれる存在が何なのか知る必要があるだろう。

「寡聞にして存じませんが、聖獣という存在がどのようなものなのか教えていただけますか?」

 遠くから「聖獣様を知らぬのか」「これだからヒュムは……」小言が飛んでくるが、気にする必要はない。

『聖獣という名は人種が勝手に付けたものだ。言葉には意味がない。だが、人からすれば私がどのような存在なのかを判断するのに便利であるのは確かだろう。私の役割は元素を司る竜の補佐にある。大きな元素の乱れを修復するには時間がかかる。私はその時その時で色を変え、姿を変え、その土地に適した存在として大地に降り立つのだ。私がこの山に居る理由は説明するまでもないだろう?』

「黒の元素の、瘴気の影響から山や森を守る為ですよね?」

『そうだ。精霊の時代から竜の時代へと移り変わってから1000年以上、私はこの山に留まっておる。それというのも、黒竜ニグルヴァーパレスの成長が著しく遅く、黒の元素が山や森を覆ってしまっておるからだ。だから私は代替として役割を全うしておるのだ』

 エジカロス大森林深部で遭遇した黒竜は確かに小さかった。でも聖獣様がやっていることって―――。

「聖獣様、竜の巫女との違いは何でしょうか?」

『竜の巫女の存在は知っておるのか。それもまた巡り合わせというものか。私と竜の巫女では役割が違うのだ。私が守護するものであるのなら、竜の巫女は解放するもの。濃度の濃くなった元素を世界に放ち、乱れを調整するのだよ』

「明確な役割分担があるのですね」

 カミルは黎架へと視線を移す。

「この元素の剣が世界を壊すほどの力を持っているとは思えませんが?」

『その剣はきっかけに過ぎん』

「きっかけ?」

『悪いが、その話はできん。再び世界を壊すものが現れかねんからな』

 確かに、情報はどこから漏れるかわからない。口に出してしまえば、誰かが聞いてしまう可能性も出てくる。たとえ、こんな山奥であっても言葉にするのは危険極まりない。

『時に銀髪のエルフよ』

「なにかしら?」

『其の剣、どこで手に入れた?』

 リアがエスティエラに手を添える。

「これはフィブロ家が代々受け継いできた剣なのですよ。最近になって目覚めた御寝坊さんですけどね」

 柔和な笑みを浮かべると、大切そうに鞘を撫でている。

『そうか。……これは私からの詫びだ』

 尾を一振りすると、暖かな風が巻き起こり、エスティエラの風縛石(ふうばくせき)が緑の元素を吸い込んでいく。

「今のは?」

『守護者である私の加護だ。聖なる(はやて)と成りて、其方の力となろう』

「ありがとうございます」

『言っただろう?詫びだと』

 それでもリアは頭を下げた。

 リアを一瞥すると聖獣は身を翻す。

『用が済んだのなら帰るが良い。夜の山が牙を剥く前にな』

 聖獣が森へ向かってひょこひょこと歩いていく。その姿は愛くるしいリスにしか見えない。ふわふわの尻尾が左右に揺れ動き、無性に触りたくなる衝動を必死に抑えた。

 聖獣の後に続き、エルフ達も森へと移動を始める。去り際に見せた鋭く威圧する目が、カミル達への警戒心を表していた。

「いろいろあったけど、一先ず皇都に戻りましょう。聖獣様の言葉通り、夜の山は危険ですからね」

 ニステルは素知らぬ顔で「そうだな」アリィの言葉に賛同し、山を後にした。



 西の空が茜色に染まり出した頃、カミル達は皇都へと帰還した。歩く四人の影は長く伸び、一日の終わりを告げようとしていた。

「カミル達は先に宿に戻ってて。アリィ、ちょっと付き合ってくれない?」

 リアの願いに、アリィは目を(しばたた)せ「えぇ、手短でしたら可能ですけど」了承する。軍務に追われる身ではあるが、調査に同行させた手前、無下に断ることなどできなかったのだ。

「それじゃ、先に戻ってるよ」

 カミルとニステルは宿へと歩き出す。

 二人を見送り、リアはアリィへと向き直る。

「それじゃ、私達も行こっか」

「はい。でも、どちらへ?」

 リアはぎこちない笑みを浮かべる。

「時間ないみたいだし、上層まで歩きながら話すわ」

「はぁ……」

 不安からかアリィは気のない返事を漏らした。


 歩きながら話すと口にしたが、いざ話そうとすると尻込みしてしまう。無言のまま歩き始めてすでに5分ほど経っている。そろそろ切り出さなければとリアは腹を括る。並び歩くアリィへと顔を向けると、静かに口を開いた。

「アリィはさ、その……。カミルについて、どう、思ってるの?」

「へ?」

 予想だにしない言葉に、アリィの口から変な声が零れた。

「だから、その……、カミルのこと、異性として見てるのかなぁ~て……」

 もじもじと不安そうな顔を向けながら問われ、アリィはリアが何を言わんとしているのかを察した。そして―――。

「ふふっ、ふふふっ」

 破顔一笑する。

 唐突に笑い出すアリィに「な、なに笑ってんのよぉ~」顔を朱に染め抗議の声を上げるも、アリィの笑い声が止まることは無かった。

「ごめんなさい。でも……、ふふふっ」

「もうっ!!」

 笑いを止めないアリィに、リアはそっぽを向いてしまった。

「ごめんなさい。少女みたいなリアの姿が可愛らしくって」

 だから山ではあんな視線を向けてきたのですね。

 アリィはリアとの距離を詰め、肩を触れさせると肩で小突いた。

「もしかして、私がカミルのこと狙ってるとでも思ったのぉ~?ふふっ、リアってかわいぃ~」

 リアの顔が更に赤くなる。

「か、かわっ!?」

 アリィは肩に手を回すとリアを抱きしめた。

「大丈夫ですよ。私はカミルをそういう目で見てませんから」

「そ、そう?」

 気のないフリをした言葉とは裏腹に、リアの頬は緩んでいた。

「いずれ居なくなってしまう男性は追わないですよ。それに、ヒュム同士だと10歳も離れると恋愛対象から外れやすいのです。趣味や価値観が合わなかったりで、話題が合わないことが多くなりますからね」

「そういうものなのね」

 アリィの気持ちがわかり、リアの足取りは軽やかだ。今にもスキップでもしそうなほど上機嫌である。

「♪~♬~」

 ふふっ、鼻唄まで出るなんて余程嬉しかったみたいですね。

 想いを寄せる相手がおり、同じ時間を過ごせている姿がアリィは羨ましかった。18歳で軍属となった日から、厳しい訓練に耐える日々が続いている。生まれ持っての才と努力を惜しまない性格から、若くして頭角を現し、今では第3部隊長まで上り詰めている。裏を返せば、武に生きるあまり恋愛とは程遠い生活を送ってきたことになる。リアの姿を見て、アリィは胸のざわつきを覚えた。

「それで?カミルのどんなところに惚れたのです?」

「ふぎゅっ!?」

 鼻唄は潰れた蛙のような声へと変わる。

「そこまで熱を上げるのですから、当然それなりの理由が存在するはずですよね?」

 ニマニマと笑みを浮かべリアへと迫っていく。

「それは……、その~」

 煮えきらないリアの態度に「言ってくれませんと、私、口が滑っちゃうかもしれませんよ?」悪い顔で脅す。

「ちょ、ちょっとぉ!?」

 慌てふためく姿は、恋する乙女であった。

「なら、きちんと話してもらいますからね~?」

 がっちりと肩を抱えられ、リアは上層に向かうまで思いの丈を語らせたという。



 1週間が経ち、ジンム・ヒカミとの約束の日が訪れた。

 カミル達は宿を後にし、下層にある冒険者組合(ギルド)に足を運んでいる。待ち人はすぐに姿を現した。ジンムを先頭に、アリィ、ククレストが続き、その後ろに学者らしき二人の男女がいる。男性は呉須(ごず)色の癖毛の短髪で、40半ばほどの見た目をしている。バーテンダーのようなモノトーン服装の上に黒いオーバーコートを纏っている。女性は舛花(ますはな)色の髪を白の大きなリボンでポーテイルにまとめている。30前後くらいの見た目だ。服装がかなり特徴的で、大きな立ち襟が目立つ白のダブルジャケット。ウエストはタイトに絞られ、後ろの裾が燕尾服のように長い。前が短く後ろが長いアシンメトリーな黒のロングスカートもインパクトがある。幾重にも重なるフリルやタックでボリュームが生まれ、黒のハイヒールと合わせて全体的にファッショナブルな印象を受ける。とても学者には見えないし、山登りには不向きな格好だ。二人に共通しているのは、胸に日ノ鳥の紋章が刻まれた勲章を身に着けていることくらいだろう。

「待たせたな」

 ヒカミの挨拶を皮切りに、お互いの自己紹介が行われた。男性の学者はフィリックスノート・オノ、女性の学者はティティア・アサギリと言う名のようだ。

「今回、霊峰クシアラナダに向かうのは俺を除いたこの七名だ」

 ジンムが学者二人に視線を送り「貴重な時の迷い人だ。抜かるなよ」発破をかける。

「こんな機会滅多にあるものではございません。全力で挑ませていただきます」

 フィリックスノートは恭しく言葉を返した。服装がまるで性格を表しているかのようだ。

「私達で駄目なら解析なんて無理よ、むり。ジンム、アンタは大人しく待ってなさい」

 なんだこの女性は……。ヒカミ総司令に向かってそんな口調で大丈夫なのか……?

 ティティアもまた、服装の奇抜さのような性格の可能性が高い。仮にも皇国軍のトップを張る人物に対して、砕けた口調で話せる胆力は感心せざるを得なかった。

「報告を楽しみにしている」

 ジンムがカミル達へと視線を送る。

「これがうまく行けば、お前達と会うのも最期となろう。もう知ってはいるとは思うが、元の時代に戻ってからが本当の闘いとなる。心せよ」

「忠告、有難く受け取っておくわ。それでも私達は進まなければいけないの。立ち止まってなんていられない」

「俺達で帝元戦争を止めてやります。必ず悲しみの連鎖を断ち切って見せますよ」

 ふっ、ジンムが鼻で笑い「成してみろ。お前達が未来に来た意味があるはずなのだからな」激励する。

 ジンムがアリィ、ククレストに視線を送る。

「アリィローズ・アロシュタット、及びククレスト・モースター。両名には護衛の任を与える。無事に帰って来い」

「「はっ!!」」

 掛け声と共に敬礼を行った。

 ジンムは皆の顔に視線を巡らせる。

「諸君らの健闘を祈る。行ってこい!!」


 こうしてカミル達七名は霊峰クシアラナダに向かって旅立っていく。未来の世界に来て4ヵ月が過ぎ、この時代にも愛着が湧き始めている。多くの人と出会ったことで、後ろ髪を引かれる思いであった。それでもカミル達の歩みは止まらない。元の時代に戻ったその時こそが本当のスタートなのだから。

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