はじまり
この作品を書いたのは、数年前です。書き終わった後、奇跡が起きました。
心の底から願えば、引き寄せられる運命もあるのだと思いました……。
私は一目見て、動けなくなりました。
あなたは、とてもきれいな瞳をしていました。
きれいで、それでいて強い輝きを放っていました。
だから、私は毎日そこへ行きました。
そこへ行けば、あなたに逢えるから。
今日も私は、あなたに逢いに行きます。
行き交う人々の間をすり抜けて。
私はだんだん足早になりました。
ほら、見えてきた。
今日もあなたは、同じ場所で同じ瞳を私に向けてくれています。
私はずっと、ここであなたを眺めていました。
留まったままのあなたを。
たくさんの人が、あなたの前を通り過ぎていきました。
立ち止まる人はいません。
「やっぱ格好いいな、キキョウは」
いえ、いました。
私の隣に、女の子が立ち止まったのです。
私は見上げました。
細くて長い脚が、ヒラヒラした傘のようなスカートから伸びています。
女の子の着ている服は、よく見かけるものでした。紺色のシンプルなものです。
女の子は、私と同じようにずっとあなたを見ていました。
しばらくして、突然後ろで声がしました。
私は驚いて、慌てて振り向きましたが、それは私に向けられた声ではありませんでした。
「真希!何してるの?」
「えへへ、これ、眺めてた」
「ああ、“KIKYO”のポスター?好きだよね、あんたも」
「憧れの人だもん。世界で一番好き」
ええ、私も!
ああ、いけない。つい声を上げてしまいました。
私はすぐに隠れました。
何をされるかわからないから。
「ねぇ、今……」
「何?」
「ううん、何でもない」
「真希、これからカラオケでも行かない?」
「賛成!」
そう言って、女の子たちは足早に去っていきました。
私はあなたの前に戻って、またあなたを見つめました。
白い月が、あなたの瞳に映るまで。