24話 ★大事な話は喫茶店で
今日は放課後に遥と一緒に近所のショッピングモールまで買い出しにきた。
ある程度の買い物を終えて暇つぶしにぶらぶらと歩いていると一人の女の子が遥にくっついていた。
それが例の迷子の女の子だということが分かり、信じられない懐き具合に、我が親友ながら少しだけ引いた。
その後に慌てて走ってきたマスクに帽子という不審者全開の女性と遥が親しそうに話している姿にびっくりしてしまった。ここ最近遥が女性と仲良さげに話しているのを見たことがない気がしたからだ。
「それにしても今日は何してたんですか?まさかここで会うなんて思ってなかったですよ。」
「ひなの勉強用にいろいろね。無理に勉強しなさいとは思わないけど、楽しくできるやつがあればいいなぁって。あ、今度ひなの勉強付き合ってもらってもいい?遥くんと一緒ならひなも喜んでやってくれそうかなって。」
「もちろんですよ!最初はやっぱり楽しくやることが大事ですから!」
わぁ、すごい楽しそうだね二人とも…。でも僕はまだ飲み込みきれないよ…!
目の前に座っている女性があの宮島結衣だという事実を処理しきれない…。
あのマスクと帽子を取って出てくるのがまさか学校のアイドルの一人、宮島結衣さんだとは全く想像もしていなかった。
近くで見たの初めてだけどめちゃくちゃかわいい…。
「あ、ごめんね…沢村くん。やっぱりお邪魔しちゃったかな?」
申し訳なさそうな表情の宮島さんに少し動揺する。ただそれ以上にあの宮島結衣に認知されたという事実が衝撃。
「い、いえ!その…びっくりしちゃって…。だってまさかこんなことになるなんて想像も出来なくて!」
テンパる僕の横で遥は悩ましげにメニューを見ている。
しかもどうせアイスコーヒーしか頼まないくせにご丁寧にドリンクメニューに真剣だ。
「頭の整理が上手く出来てないんですけど、迷子の妹さんきっかけで知り合ったってことですよね?そこから仲良くしてるっていう。合ってますか?」
「うん、合ってるよ。ごめんね、びっくりさせちゃったでしょ。」
こっちに微笑んでくる。
これはたしかに誰でも好きになりそう…!ファンがいるのも納得だよ…!
「わたしはひなたっていいます!」
妹ちゃんがはきはきと元気よく教えてくれる。
この子もすごい可愛いんだから遺伝子ってすごい。
「あ、ついに私って言えるようになったんですねー!ひなちゃんもすぐに大人になるんだなぁ…。まぁ俺は知り合ってそんなに経ってないですけどね。」
「ひなえらい?すごい?」
遥はもうひなたちゃんにデレデレだ。でもたしかにこれは可愛い。
お姉さんである結衣さんも学校じゃ見たことないような笑顔。こんなところ見せたらますますファンが増えるな…。
「ひなもそろそろ私って言えるようになった方がいいかなって思って練習してるんだけど、遥くんの前じゃまだ気が抜けちゃうのかな。」
え、こいつそんな仲良いの!?ていうか遥は学校のアイドルの家庭にここまで馴染んでなんで平気そうなの?馬鹿だから?
変なやつだとは思ってたけどここまでだとは思わなかったよ。
「名前呼びってかわいいですけど、たしかにくせになる前にある程度やめさせた方がいいんですかね。うちの妹も気がついたら私って言ってましたし。」
「やっぱりそうだよねー。少しずつ練習しようね、ひな。」
「がんばる!」
あ、これ邪魔なのは僕かな。なんで人の家の教育にすら口を挟めるんだよ。
「あ、そういえば二人は今日何してたの?」
「ああ、俺らは水着買いに来たんですよ。ほら男子って必修らしくて。」
あまりの衝撃で忘れかけてたけどそうだった。思い出して少し憂鬱になる。
「あー…そういえばそっか…。その…大丈夫なの?」
「うーん、まぁおかげさまでちょっとマシになってきたんですよ。だから少しだけ抵抗はありますけど、ギリキリ頑張れそうです。」
そういう事情も話せるくらいに心を開いてることもびっくり。
まぁこいつ今少しカッコつけてるけどね。さっきまでびびってたもん。
「じゃあ学校でも顔見れるかもしれないんだ。遥くんには悪いけど、私ちょっと楽しみだよ。もちろん無理はしなくていいと思うけどね。」
「き、期待しないでくださいよ…?それに別にこうして普段から見せてるじゃないですか。学校だからってそんなに変わったりしないですからね?格好だって今と同じで制服なんですし。」
忘れてたけど、遥があの宮島結衣さんに対しては顔を隠したりすることもなく楽しそうに会話することが出来ているというのも僕にはとっては嬉しいニュースだ。
別に相手は誰だってよかった。ただ少しずつ立ち直れているような気がする。それがただ嬉しい。
「遥くんはわかってないなぁ…そういうことじゃないんだよ。でもそれなら私たちと会ったことも無駄じゃなかったかな?なんてね。」
結衣さんは僕の目から見ても嬉しそうなのが分かる様子。
「ってなるとやっぱり運命だったかもしれないですね。ねぇーひなちゃん。」
「……?うん!そう!」
多分分かってないんだろうけど、かわいいね。
それにしても少し照れてたような結衣さんの破壊力はすごい。
正直話したのは今日が初めてなのに、思わず好きになりそうになる。
「あ、ごめん。ちょっとトイレ行ってくるわ。」
遥はそれだけ言い残してすたすたと席を離れていく。
席には僕と、宮島姉妹だけが残された。
ひなたちゃんがジュースと氷をかき混ぜる音だけが響く。
「ねぇ…沢村くんに聞いてもいいかな?」
「は、はい!もちろん、なんでも聞いてください!」
二人で彼女と話せるとして、緊張しない男子がいるのだろうか。もちろん僕の親友くんは除いて。
「私と仲良くしてたらさ…迷惑かかったりするのかな?率直な意見が聞きたくて…。遥くんに聞いても気を遣われたりするかもだし…そもそも分かってなさそうな気もしちゃって…。」
あ、そこまではバレてるんだ。
それにたしかに遥ははっきりは言わないと思う。そもそも迷惑かけられたとか思わないだろうし。
「あいつが気にするかは別としてですよ、たしかに難しいところはあるかなと思います。結衣さんはその…すごい人気だから、嫉妬されたりとかは十分にありえますから。」
「だよねぇ…。話しかけたりするのとかはやめた方がいいよね?私…あんまり迷惑とかはかけたくないんだぁ。ただでさえお世話になりっぱなしなんだもん。」
少しだけ寂しそう。遥も前は時々こんな顔をしていたな思う。少しだけ僕も辛くなる。
「二人のおかげかな、あいつ前より明るくなったんです。前よりたのしいんじゎないかなあ、まぁ僕といる時は変わらずずっと楽しそうですけどね。本人は絶対言わないけど。多分遥も同じこと思ってますよ、迷惑かけるだろうなって。」
「そう言ってもらえると嬉しい。でも私迷惑だなんて思わないよ…?」
「あいつも同じ気持ちだと思いますよ。まぁ遥はそもそも自分にそんな自信がないから、ゆっくりでいいと思いますけどね。」
二人は少し似てると思う。それにしても彼女がどんな人か僕は全く分かっていなかった。
もっとクールな感じの人だとばかり思っていたけど、想像よりもずっと優しい人だった。
「そうだよね…焦る必要ないもんね!変に考えすぎちゃってたかな。ありがとね!えっと…薫くん?って呼んでもいいかな?」
「え、あ、はい。もちろん、もちろんです!」
これを断れるやつは間違いなくいない。
このままじゃ僕の方が耐えられないから遥には早く戻ってきて欲しいよ…!
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