22話 母親がライバル…?
遥くんを自宅に招いて、私の母に会ってもらっている。これだけ聞くと誤解を招きそうだけど、決してそういうことはない。
最初はお互い緊張していたけど、いろいろと話した結果想定外に仲良くなっている。ほんとに想定外だ…。
「えー!これうちの陽向!?可愛いわぁー…。旦那、この子達の父親が死んでから仕事も忙しくて、あんまり遊んだりしてあげられなくてねぇ…。だからこんなに笑顔なの久しぶりに見たわ…。他にはないの?」
重い…!さりげなく会話に織り込むには重いよ…!ま、まぁお父さんがいないってのは遥くんも薄々は気づいてたかもだけどさ!
「たくさんありますよ、撮った写真はだいたいかわいいですし!」
遥くんは遥くんで嬉々としてお母さんに写真を見せている。
ちなみに私はひなとソファで遊んでます。最初は一緒にテーブルでお話してたんだけど、ひなの写真の話のあたりから恥ずかしくなったのか私と一緒に離れたところにいる。
それでも褒められて嬉しそうでかわいい…!
「でもほんとに迷惑じゃないかしら?さっきの話からしても、やっと自分のこと自由できるようになったんじゃない?それなのにうちの子たちの面倒までってなると…。」
それはやっぱり私も思ってしまう。
でも面倒みてもらってるのはひなで…私は別に面倒みられてるわけじゃないもん…。
「それ結衣さんからも前に言われた気がしますよ。俺も楽しくてやってるから大丈夫です!それにうちの妹もすっかり手がかからなくなったんで、十分自由ですから!むしろ俺友達少ないんで、そういう意味でも救われてますねー!」
笑ってそう話す姿に私もほっとする。まぁ友達が少ないのは多分さっきのことでの人間不信的な面が理由な気がするけど…。
「あ!そうだ!遥くんって料理出来る?まだ帰るまで時間あるなら一緒になにか作ってくれない?」
「ええ、もちろん大丈夫ですよ。何がいいとかありますか?」
なぜだかどんどん話が進んで遥くんとお母さんで料理を作るらしい。この距離の詰め方が分からない…。ていうかやっぱり遥くんって結構コミュ力高くない!?
「そうねえ…あんまり得意じゃないから簡単なやつがいいわ。」
「んーじゃあビーフシチューにしましょ!俺昨日も家で作りましたし、よく作るんでやり方もばっちり!そして簡単ですから。」
「いいわねえ!じゃあ作りましょう!」
二人してすたすたとキッチンへ行って何やら準備を始めた。
え!気になる!てか仲良くない!?
「は、はるかくーん?なにか手伝おっか?」
「あーえっと、大丈夫です!ひなちゃんと遊んであげてください!」
あ、普通に断られた…。で、でもひなの相手をするっていう一番大事な仕事があるもんね!
「遥くんって料理までできるんだから尊敬しちゃうわぁ。私なんてほんとに簡単なものしかできないもの。」
「紬、えっと妹なんですけどね、最初はあいつに美味しいって言わせたくて頑張ってたんですよ。でもだんだん楽しくなってきて、今じゃ結構趣味的なところもありますから!まぁでもやんなきゃって思うと少し嫌になる時ありますけどね。」
料理中だからかいつもより自分の話をしてくれる。
「あっと…宮島さん…?その食器って適当に使っても大丈夫ですか?」
「あらー宮島さんじゃみんな宮島だもの。そうねえ、咲月さんって呼んでくれると嬉しいんだけど、どうかな?それとうちのものは適当に使って大丈夫よ。」
「あ、いいんですか?じゃあ咲月さんで!ありがとうございます。」
なんか私より仲良くなってたりする…?いや…そんなことはないよねー!多分そうだよね…。
ていうか向こうの会話が気になりすぎるんだけど…。
少ししてだいぶ完成に近づいてきたのかいい匂いが漂ってきた。
「お腹へった…もうご飯?」
ひなはだいぶ食欲を刺激されたのかお腹が減ったらしい。
「うーん聞きに行こっか!テーブル座って待ってようね。」
席に座ってキッチンの二人と話をしながら待たせてもらうことにした。
「お兄ちゃん!もう食べれる?」
テーブルの下で楽しそうに足をバタバタさせて話しかける。
「んーもうちょっと待てるかな?ごめんねー。」
私はもう大人だけど、それでもたしかにこの匂いは食欲をそそられるのはわかってしまう…!テーブルまで来たのは失敗だったかな…匂いが強いからお腹空いた…。
「二人とも限界みたいだから準備しましょっか。遥くんも食べていくでしょ?夕食にしてはちょっと早いかもだけど。」
「んーじゃあお言葉に甘えて、いただいていってもいいですか?食べたらすぐ帰らなきゃですけど…。」
「もちろん!それに遥くんが作ってくれたんですもの。さ、座って座って。」
お母さんがみんなの分を準備してくれて、みんなでテーブルで食事ができた。今日はお母さんが特別に休んでくれたってこともあるけど、いつものひなとの二人きりの食卓よりもずっと賑やかで。それがただ嬉しかった。
食事が終わって少しして遥くんは妹さんが帰ってくる時間だからと急いで帰って行った。やっぱりいつもこの瞬間だけは少し寂しいけれどまた会うのが楽しみでもある。
「いい子だったわねぇ…すっかり気に入っちゃったわ。」
食器を洗いながらお母さんは楽しそうに話す。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんつぎいつ来る?」
「んーまだわかんないなぁ。ひなも遥くんのことお気に入りだもんねー。」
膝の上に座ってくれるひなの頭を撫でてると落ち着く。
「素敵な子よねぇ。私同年代だったら絶対好きになってたわー。いまは彼女とかもいないみたいだしね。」
「お母さん…馬鹿なことばっかり言わないでよ…。それにあんまりそういうこと聞いちゃダメだからね?嫌って言いにくいだろうし…。」
「あら、私結構本気よ?別に再婚だってできるんだから!まぁ流石に歳の差があるけどねぇ。」
あれ…意外に本気…?なんか思ったよりマジっぽい顔してない?
「や、やめてよぉ、親のそういう話聞きたくないもん!それに私の同学年だよ?歳の差とかってレベルじゃないからね!」
「歳の差はあなたが決めることじゃないもの。遥くんがそれでもいいって言ってくれたら分からないわ。」
「お母さん…ほんとに知らないからね。私流石に同学年をお父さんなんて呼びたくないもん。」
まして遥くんをお父さんなんて呼ぶことになったら絶対家出する。
ひなは少しだけ喜びそうな気もして怖いけど…。
「ひなもお兄ちゃんはお兄ちゃんがいいなぁ…。」
「あら、じゃあ結衣に頑張ってもらわないとねぇ…。」
「お母さん!もうほんとにそういうこと遥くんの前で言わないでよ!」
「うーん…じゃあ陽向、あなたが貰ってもらうしかないかなぁ…。」
「…?うん!がんばる!」
がんばらなくていいから…!なんか明日から会うの恥ずかしいよ!
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