20話 ★ 娘たちの様子が…?
別視点からの回になってます
私、宮島咲月には二人の娘、長女の結衣と妹の陽向がいる。夫に先立たれてからというもの女手一つで育てていることもあって二人には寂しい思いをさせていると思う。特に結衣にはまだ幼い陽向の面倒を見てもらってばかりで申し訳ない。
しかし…最近すこーしばかり様子が違う…?前より二人の仲が良くなってる気がするし、結衣もストレスが減ったのか疲れを見せることも減って明るくなった気がする。前は少しだけギクシャクしたような時期もあったのに。
いやそれはもちろん嬉しいんだけど…ここまで急に変わると逆にちょっと心配っていうか…。
「ただいまー、二人ともごめんねー遅くなっちゃって。ケーキもらってきたけど食べる?」
「おかえりー、でも今日はお母さん早かった方じゃない?ひな、良かったねぇ。お母さん帰ってきたよー。」
結衣が膝の上に乗せた陽向の頭を撫でながら迎えてくれる。ここ最近は見慣れた光景だけどそれが嬉しい。
「おかえりなさい!ケーキ食べる!」
ケーキに飛びついて陽向がテーブルに座ってニコニコ微笑んでいる。可愛いよ可愛いんだけど…そんなクッションあった…?
最近我が家に見慣れないものが増えた気がする…。
「あれ陽向そんなのうちにあった?」
「うん!あのね!ひなが選んだの!」
き、聞きたい答えが返ってこない…!でもたいそうお気に入りなことは分かる。嬉しそうに抱きしめているから変に問いただす必要も無いだろう。
「お母さんコーヒー飲む?ひなはジュースでいいよね?」
「え、あ、うん。コーヒーなんて結衣好きだった?そのコーヒーメーカー昔買ったのは覚えてるけど…。よく引っ張り出したわね。」
娘がコーヒーをいれてくれるなんて嬉しい。
「え?あーまぁ最近好きになったんだー。全自動で簡単だし!」
そのまま私と陽向の飲み物を準備して持ってきてくれた。
「うん!美味しいね!このケーキ職場の近くのとこ?」
「そうよ、最近食べてないなって思ってね。今日はいつもより少し早く帰って来れたからちょうどいいかなって貰ってきちゃった。」
こうして家族で落ち着いて過ごす時間もあまり取れなくなってしまった。あまり大きくはない芸能事務所なのだが、会社の経営もあまり順調とは言い難いく毎日大変だ。
「陽向も美味しい?ごめんね、あんまり一緒に居られなくて。」
「ううん、大丈夫!お姉ちゃんもいるから!」
すごい可愛らしい笑顔でそう言ってくれるので私もほっとする。
「でもこれおいしいからお兄ちゃんにも食べさせたい!」
…ん?
「そうだねー、今度一緒に食べられるといいね。あ、ひなー!ジュースはもう終わり!そんなに飲むと太っちゃうよ?ひなだって気づいてもらえなくなっちゃうかもね…。」
「うう…やだぁ…。がまんする…。」
えっと…いや気のせいじゃないよね…?
そう思って家を見てみると前と比べて変わった点が目につく。
そもそもコーヒーだってそうだ。今まで全く関心なんてなかったのに。
ひなが抱きしめてるクッションにだって見覚えない。ま、まぁいったん忘れよ…。
「これも洗っちゃうね、お母さん休んでいいからひなと遊んであげて。」
「今日は私がやるわ、いつも結衣には家の事やってもらいっぱなしだもん。すぐに終わらせちゃうんだから!」
二人が遊んでいるところを見ながら食器洗いなんかを終わらせてしまう。
見覚えのないカップやら色々と目についてしまう。
え、誰か住んでる?私の知らない間に?そんなことある?
「ゆ、ゆいー?その…聞きにくいんだけどさ…誰か住んでないよね?私たち以外で…。」
この人何を言ってるんだろう…みたいな顔で私を見ている。
実の娘にこんな顔されたくなかったよ…!でもさ…!何もないことなくない!?
「誰も住んでないけど…。え、なんで?怖い話ならやめてよ…?ほらぁ…ひなもちょっと怖がってるよー。」
陽向は結衣に抱きついておそるおそるといった様子でこっちを見ている。そんなお母さんを怖いものみたいな感じで見ないでよ…。
私は二人にクッションのことだとかマグカップのことだとかを聞いてみる。すると二人は納得したような表情をしている。
「それお兄ちゃんのやつ!ひなも選んだんだよ!」
「えっと…お兄ちゃんっていうのは私の高校の同級生の桜井遥くんのことで…。一緒にひなの面倒とかよく見てもらってるの。その…たまーに、ほんとにたまに家に来てもらったりもしてて…。」
「昨日もきたよ!べんきようも教えてくれる!」
「ひーな!余計なこと言わないの…!」
陽向は結衣に口を塞がれてもごもごとしている。
うーん我が娘たちながらほんとに可愛い!
結衣から丁寧に事情を聞いて色々と助けてもらっていることなんかを知ることができた。同級生であることや何度か一緒に出かけたりもしていてほんとにいい人なんだと熱弁されたこともあり、私としても怒るつもりはない。
「話は分かりました。二人が信用していることも理解したので、別に家に呼んだりするなとは言いません。」
二人ともあからさまにほっとした顔。なんか少しだけ複雑…。
ろくでもない男だったりしないよね?二人ともなんか心配なのよね…。
「ただし!一度会わせてくださいね。それでお母さんが見定めますから。」
少し過保護なことを言ってる自覚はある。だけど…うちの娘たち可愛いんだもん…!芸能事務所で働いてる身としてはいっぱいモデルさんとかも見てきたけど、それでもうちの娘は相当可愛いと思う。親バカかなとは思うけどね…。
「えっと…うーん…それはいいんだけど…。お、重くない…?わざわざ親とか出てきたら来にくくなっちゃうっていうか…。それにお母さん仕事大変でしょ?」
まぁ娘からしたらそりゃ嫌なのかもしれない。聞くと彼氏でもないらしいからたしかにその段階で親に会うっていうのは…。でも変な子だったら困るもの…。
「次いつ来るの?その日はお母さん仕事抜けさせもらって会いに来るわ。仕事も大事だけど、こっちも大事だもの。最近は忙しくて寂しい思いさせてるけどさ、二人のことが一番大事よ。」
「えーっと…お願いしたら明日にでも来てもらえるかも。お母さんの予定もあるだろうから、空いてる日教えてもらってもいい?」
え、そんなにすぐ会えるの!?そ、それはそれで緊張するっていうか…心の準備が…。
「あ、明日ね…私は大丈夫よ。今週中なら多分いつでも抜けられるから…。でもほら、私も彼も心の準備がいるじゃない?一応その彼の予定に合わせるわ!」
結衣はぱぱっと連絡したみたいで少しの間返信を待っている。
「あ、遥くん大丈夫だって。明日の放課後来てくれるらしいからお母さんもそれに合わせて帰ってきてもらえる?」
あ、ほんとにそんなすぐ来てくれるんだ…。
「ちゃ、ちゃんとお母さんいるって言ってくれた?サプライズ!とかじゃないよね?このおばさん誰?とか言われない!?」
「当たり前だよ。そんなことしたら私が引かれるもん。ちゃんと説明したうえでオッケーもらったんだからね。」
すごいな…明日母親に会える?って聞かれて即答できるって…。なんかもうこの時点で悪い子じゃなさそうね…。
「お姉ちゃん!お兄ちゃんくるの?明日!?うれしい!」
陽向も楽しそうだけど…明日のメインはお母さんだからね!?
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