19話 快適になっていく宮島宅
俺たちはフードコートでの食事を終えて雑貨やらを探しにショッピングモール内を歩き回っている。さすがに大きい私物を置かせてもらうのは申し訳ないが、良さげな小物的なやつがあった方が快適なのは事実としてある。
「箸くらいはあった方が良くない?ほらうちでお昼とか食べる時いつも割り箸だし。ないと不便だもん。」
たまに休日なんかに家を訪れると昼食なんかを一緒に食べる時もある。たしかに箸があると便利だけど…いいのかなぁ。どんどん侵食していってる気がするよ。
「ほんとにいいんですか?箸まで専用のやつ置いてもらっちゃうと迷惑じゃないすかね…。」
「ううん、全然だよ!むしろどんどん置いていってもらっていいから!」
…分からない!なんでこんなに乗り気なんだろうか…!
とはいえありがたく置かせてもらうんだけどね。
「うーんじゃあこれにします!うちで使ってるやつと同じなんで俺のやつって感じするんで。」
結局見慣れたやつを使っちゃうんだよねー。意外とチャレンジしないタイプだったりする。なんでも無難なやつ。
「箸は買ったでしょ、あとはなにが必要かなぁ…。コップとか食器はうちの余ってるやつで大丈夫だし…。あ、マグカップさ、あれ適当に私が選んじゃったけど違うやつ買ってもいいんだよ?」
両手にそれぞれマグカップを持ったまま結衣さんが笑ってそう話す。ひなちゃんもマネして下の段にあったものを掴んで同じようなポーズで微笑んでる。
こうして見るとそっくりで本当に可愛らしい姉妹だな…。
「いーえ、あれ気に入ってますから。それに結衣さんがせっかく選んでくれたやつでしょ?俺は結構そっちの方が嬉しいんですよ。」
「そ、そう?ならいいんだー!ってなるとあとは何か必要なものはっと…。」
マグカップを置いてすぐさま違うものを探しに歩き出した。
いやそんなに積極的に探しに行かなくてもいいんだけど…。
「お兄ちゃんほしいものないの?」
「うーん…意外とないんだよね…。替えの服も買ったし、最低限必要な食器類も買ったもん。あと必要なものか…。」
実際そんなに必要なものが思いつかなかったりする。そもそもそんなに現状に不満がないからさ。
「遥くん!タオルは専用のやつあった方がいいよね?」
何か思いついたような顔で結衣さんが戻ってきた。
「タオル…?いやまぁ専用のやつの方が気が楽なのはたしかですけど…。そんなに使う機会ありますか?」
甘いなぁーみたいな表情。あれ、かわいい表情ではあるけどちょっとイラッとくるな…。
「これから梅雨の季節になるでしょ?来る時雨に打たれちゃうかもしれないじゃない。タオル必須の時期がやってくるからね、専用の方がいいかなって。逆の立場だったら私も…ちょっと気はずかしいからさ。」
ごくごく自然にこの先の季節のことまで考えてもらっていると少しだけ照れるな。でもたしかにそう考えるとタオル類は欲しい気がする。
「お兄ちゃん用のクッションもいると思います!」
手をピンと伸ばしてはきはき喋る姿が可愛らしい。俺もこれには微笑みを隠せない。
「ひなー、やるねー!よし!買いに行こうね!」
二人は楽しそうに手を繋ぎながらぶんぶんと大きく振って進んでいく。少しだけ二人の後ろ姿を眺めつつ慌てて後を追いかける。
「タオルは二枚くらい適当にあればいいよね?普通のやつだけど大丈夫?」
「クッションはこれー!いい?」
二人して楽しそうに物色した後俺が最終チェック。一瞬俺のものを買ってることを忘れそうになったけど、楽しそうでなによりだ。
「あ、はい。全然大丈夫ですよ。ひなちゃんもありがとね。」
「えへへ、どういたしまして!」
めちゃくちゃかわいいな。ひなちゃんも最初から特に緊張もなかったと思うけど、前よりも素直に接してくれてる気がする。
「じゃあ俺会計行ってきますね!」
とっとと手早く会計を終わらせて二人の元へ戻ると、俺たちはそのまま宮島宅へと帰って買ったものを置きに行った。なんでも服はそのまま結衣さんの部屋に置いてくれるとのことなんだけど…
「ほんとにいいんですか?自分の部屋に他人の服あるっていうのも…。」
「いいのいいの、それに他に置くとこもないしさ!あ、逆に嫌だったりした?」
「全然嫌ってことはないですけど…。まぁ結衣さんがいいなら俺はもちろんありがたいんで。」
結衣さんはどこか嬉しげな顔をして俺の買ったパーカーと一緒に部屋へと戻って行った。
この人もわりと変わった人だよな…。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、となり来て!クッションどう?きもちいい?」
ひなちゃんはばんばんソファを叩いて座るように促してくる。そしてクッションを渡してくれて嬉しそうにたずねてくる。
「うん、最高だよ。感触がいいね、落ち着く。選んでくれてありがとね。」
ひなちゃんも俺と同じようにクッションを抱きしめてニコニコと俺の方に笑顔を向けてくれる。
「これでお兄ちゃんもうちで寝れるー?」
「え?う、うーん…まぁたしかに寝ようと思えば寝れるかもね。でも俺は起きてるから、ひなちゃん眠かったら寝てもいいよ?」
求めている返事と違うのか少し不満げだ。不満そうな顔をしつつもぴったりくっついて離れないのが可愛くて笑いそうになるけど、ここで笑ったらまず間違いなく怒られるので我慢。
「ひなちゃーん?ご、ごめんね…。」
「あれ?遥くんどうしたの?ひななんかやっちゃった…?」
戻ってきた結衣さんが心配そうに駆け寄ってくる。
俺はありのまま事情を説明することにした。
「あーそれは全然気にしなくていいよ!ひなも甘えてるだけだから。ねぇ、ひなー?ちょっとわがまま言うくらいなら遥くんに嫌われないってわかったんだよねー。」
結衣さんがひなちゃんに話しかけるけどガン無視。ちなみに今は俺の膝に登ってお腹の辺りに顔を埋めている。
「ほら嫌われて会えなくなるの嫌だったんだよ。だけどようやく安心したんじゃないかな。遥くんも全然気にしなくていいから、帰るのが寂しいってだけだよ。」
耳まで真っ赤に染めて微動だにしない。
「邪魔じゃない?いつでも引き取るからね。」
「全然邪魔じゃないですよ。こうやってくっついてもらえると俺も嬉しいんで。でもやっぱり早く妹返して欲しいなーなんて思ってます?」
びっくりしたような顔で頬をぺたぺたと触って確認している。
「え、そんなにわかりやすい!?だ、だってぇ…そんなにくっついてるの可愛くて…。それに私の妹だし!」
結衣さんはたまにムキになる。普段は大人っぽいのに、こういう時は少し幼さすら感じられる。それが新鮮で少し嬉しい。
「はは、さすがにわかるようになりましたよ。…ひなちゃんと結衣さんが良ければいつでも面倒見ますから、無理しないでくださいね。まぁ予定が合えばですけど…。」
「遥くん…ありがとね。こうしてこんなにひなが可愛いって思い出せたのも遥くんのおかげ!でもひなはあげないからね!」
「そこまで思ってませんよ!そもそもそんなことしたら俺は俺で妹に殺されますから…!」
楽しそうに笑っている結衣さんにつられたのかひなちゃんも機嫌を直してくれたみたい。
それでも俺が帰るまでずっとくっついてくれてたけどね。
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