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18話 休日は三人で

私は遥くんと一緒に今日近くのショッピングモールへとやってきている。たまにひなと来る時もあったけど、こんなに楽な気持ちでここへ来れたのは本当に久しぶりだ。穏やかな天気も相まってほんとうにリラックスできる。


「ひなちゃん、元気だねー。けどあんまり遠くに行っちゃだめだよ?」


「うん!手繋いでもいーい?」


私はそんな二人を後ろから眺める。私と二人の時は迷子にならないようにと少しだけ気を張っていたりするけれど、今日は遥くんも見ていてくれるから気が楽だ。それにひなも手を繋ぎたがるから安心できる。そしてなにより買い物に集中できるのがありがたい…!


「でもいいんですか?俺の私物?みたいなの置いたら邪魔じゃないですか?ま、まぁもうすでにマグカップとか用意してもらっちゃってますけど…。」


「ううん、全然いいの。他にも色々とあった方が落ち着くでしょ?」


少しずつ家に遥くんの物が増えていくのをどこかで嬉しく思っている私がいる。最近はすっかりうちで過ごすのも緊張しなくなったみたいだし!


私たちがまず最初に来たのは服屋だ。というのもうちには男物の服がないので、いざという時の着替えがない。急な雨が降った時なんかのためにも着替えが必要だろうし。特にこれからの季節は特にね。


「んーどうですかー?やっぱり部屋着はパーカーですよねー!」


試着室のカーテンを開けて私たちの前でくるっと回ってみせてくれる。なんでこの人はいちいち仕草がかわいいんだ…?


「お兄ちゃんこっちの方いいよ!ひな好き!」


「ありがとねー、ひなちゃん!んー悩むなぁ…。」


ひなもそうだけど今日は遥くんもいつもよりどこか上機嫌な気がする。頭を撫でている時の笑顔も一割増くらい。


「結衣さん的にはどうですか?白と黒の違いでしかないですけど!」


そう彼が試着しているのは白と黒の色違いのパーカーである。この二着のどちらにするかで悩んでいるというわけだ。


「う、うーん…私としては黒かなあ。ひなとは逆になっちゃったけどねー。まぁ結局はどっちも似合うと思うんだけど…。」


曖昧な答え方になってしまう。いやでもどっちの方が似合うとかないんだもん…!


「じゃあ両方買いますね!両方買っても全然予算内なんで。」


そう言って笑ってレジへと向かっていった。お、思い切りがいいな…。まぁたしかにそんなに高くないやつだし、いいのかな?


「ひなも新しい服欲しい?買いに行こっか?」


「ううん、いい。」


てっきりすぐに欲しがると思ったけど…。これが成長…?なんか嬉しいような寂しいような…。


「そっかぁ、遠慮することは無いんだからね?今度お母さんと一緒に選びに来よっか!」


「うーん、お兄ちゃんとも来たいの。」


「ん?じゃあ今日買いに行かなくていいの?」


服を買うのは母さんと一緒に来たいのかと思ったけど…。遥くんと一緒に来たいことは来たいんだ。


「ううん、だっておわっちゃうもん。つぎまた来るの!」


え…?そういうこと…?今日で全部の用事終わらせると来る理由がないからってこと!?いやたしかにあんまり遥くんと一緒にこういうところに来ると同級生に見られるかもってことで来ないようにしてるけど…。


妹の成長が私の想定を超えてきてる…?


「ひ、ひな?別にいつでも来れるからね?もし欲しかったら遠慮しなくていいんだよ?服もしばらく買ってないんだからさ。」


こう教えるもやっぱり見に行きたかったらしく頷いてくれる。


でもやっぱり遠慮させちゃってるかな…。


「二人ともお待たせしました、ちょっとレジ混んでて。あ、二人とも見たいところとかありますか?俺の分ばっかり付き合ってもらうのもなんですし。」


これにはひなもニコニコだ。すぐさま遥くんの左手を握ってうきうきで歩き出す。


お姉ちゃんは…?お姉ちゃんはいらないの…?お姉ちゃん右手も空いてるんだけど…!



「これ似合う?お兄ちゃん好き?」


元気よく進むひなに着いてきて服を見に来たところだ。ちなみにひなは遥くんにばかり聞いてお姉ちゃんには聞いてきません。


「ひなちゃんはなんでも似合うけど…俺はこっちが好きかな!結衣さんどう思います?」


遥くんに促されてひなも私に見せてくれる。


「かわいい…!ひなぁ…かわいいねぇ…。」


面倒を見なきゃ!って思ってた頃よりもずっとかわいいし大事だと思える。ていうか最近かわいすぎる…!


「じゃあこれにする!」


ひなも久しぶりに自分の服を買えてご満悦だ。ずっとニコニコと笑っているし、繋いだ手をぶんぶんと振って歩いている。


もちろんお姉ちゃんの手ではないですよ。少しだけ嫉妬してしまうけれど楽しそうだからいいんだ。休日に遊べることが余程嬉しいんだろうね。


「お姉ちゃん、お腹すいた…。」


たしかに少し早いけどお昼の時間だ。それにはしゃぎすぎて疲れたんだろう。


「遥くん、もうお腹すいてる?フードコートで食べちゃおうと思うんだけど、いいかな?」


「もちろんですよ。実は俺もひなちゃんと一緒でご飯食べたいなって思ってたんで、むしろ言ってくれてほっとしました。ありがとね、ひなちゃん。」


そう言って笑顔で優しく頭を撫でられてひなもほっとしてるみたい。

そりゃこんな年上の男の人がいたら私がひなでも懐くかもなぁ…。


「うーん何にしようかなぁ。ひなは何食べたい?」


「うどん!うどんにする!」


ひなは珍しく即決している。うーんてなると私はどうしようかなぁ…。


「もしあれだったらひなちゃん残した分は俺食べましょうか?結衣さんも好きもの選んでくださいね。」


小声でひなに聞こえないように確認してくれる。

正直助かる…!今日は実はローストビーフ丼の気分だったの!


「いいの…?食べかけとか気にしない?」


「ぜんっぜん大丈夫ですよ!あ、流石に誰のでも食べるわけじゃないですからね?ひなちゃんのやつは全然大丈夫です!いや…この言い方もちょっと変かな…。」


流石に私も誰のでも食べるやつだ、とか変態だとかなんて思わないけど…。


ひなと遥くんは二人でうどんを注文しに、私はありがたく好きな物を注文に行かせてもらうことにした。


「ひなちゃん、ちょっと俺の分も食べてみる?」


ひなも遥くんの分も気になっていたみたいで嬉しそうに食べている。


「おいしいねー!あ、これも食べる?」


「んーじゃあ食べきれなかった分もらってもいい?」


「うん!あ、でもぜんぶ食べてもいいの?」


「もちろん!でも無理はしなくていいからね。」


そう言ってほとんどシェアして食べてる。…なんか寂しい…!いやでもローストビーフ美味しいもん…。


「結衣さんも食べますから?せっかくだし。あ、俺はまだ手つけてないんで大丈夫だとは思うんですけど…気になりますよね…?」


「ううん、全然!えっと…じゃあ一口もらってもいいかな?」


笑顔で頷いて私の方に渡してくれる。


「んー!美味しいね!…えっと…私のも食べない?ちょっと食べちゃったんだけど…。」


遥くんがひなに最初食べさせてるのに、私だけ食べ始めたってやばくない…?すごいお腹減ってたって思われてないよね?


「えーっと…じゃあありがたく、いだきますね。」


うん嫌がってなくてよかったー…。


「うん!美味しい!ローストビーフ丼って毎回ちょっと気になるんですけど、食べたことなくて!これはまた候補が増えて悩ましくなりますね…。」


笑顔で美味しそうに食べていてちょっとかわいいかも。最初は大人な人だって思ってたけど最近は意外と子どもっぽいところもあるのかなって思ってる。


「お兄ちゃん…ひなもうお腹いっぱいなんだけど…食べられる?ごめんなさい…。」


「ううん、いいんだよ、全然大丈夫だから。むしろちょっと食べたいなって思ってたくらいだから!」


ほんとに余裕そうにひなの分まで食べてくれる。身長も大きいし、これが男子の底力…。


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