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16話 男子の視線は意外とわかる??

体育の合間に遥くんと学校で少しだけお喋りすることができた。めったに見れない汗をかいた姿や水で濡らした髪の毛に思わぬ色気を感じつつ楽しく会話を終えてグラウンドへ戻るとさっそく伊織に捕まってしまう。


「や、やっぱりさ…匂いとか…かいでみた?ど、どうだった!?」


私よりも伊織の方が大興奮な気がする…いや私は別に興奮なんてしてないけど…。


「そ、そんなことしてないよ!…けどさ、やっぱりそれくらい普通だよね…?変じゃないよね?」


あくまでも確認だ、あくまでも。それに別に匂いはまだかいでないんだから問題ない。


「ふ、普通だよぉー!絶対そう!か、かいでみようよ…ていうか、かいでみるまでもなく匂い分かったりしないの?」


「す、するよ!正直めちゃくちゃいい匂いするから!だからなおさらかぎたくなるんだよ!悪い!?」


自分でも清々しいほど逆ギレしてることはわかる。でもしょうがないんだよ。


「え、え、なんかさ、いざそんな場面になったら、全然茶化せないよ…。いいなぁー、私も男の子のジャージ着てダボダボ〜とか言いたい…!」


私そんなこと言ってないもん…!いやちょっと思ったけど…!


「そのままずっと茶化さなくていいからね…。ね、ねえ…やっぱり匂ってみてもいいよね?変じゃないよね?」


「わ、私もいーい…?いや、だって興味あるんだもん…!ねえいいじゃん!ずるーい!」


伊織ってこんな子だっけ…?一瞬ひなと話してるのかと思っちゃったよ…。


「だめに決まってるでしょ、これは私が借りたんだから!遥くんも私にかがれることは想定済みだけど、伊織にまでかがれるとは思ってないんだから。そんな裏切るようなマネは出来ないもん!」


自分でもよく分からない理論だけど勢いは大事だ。伊織も腑に落ちてない様子だけど渋々納得してくれた。


私は大きく深呼吸をして、ゆっくりと慎重にかぐことにする。


「い、いくよ…。…あっ…!ちょ、ちょっとだけ待って…!」


少しかいでみただけで危ない気がする…。私もしかしたら匂いフェチなのかも…。


「ねえー!ずるいって!幸せそうな顔しちゃってさー!わ、私も一瞬だけ、一呼吸でいいからぁー…。」


無視無視。これは私のなので譲るような義務はありませんから。


ていうかひなはいつも遥くんにくっついてるけど…匂いフェチか…?いやいやあんな小さい頃から、その…歪んだりしないよね?


「ちょっと!無視はやめてよぉ!いいなぁ、私もどっか適当な男子からジャージ剥ぎ取ってこようかな…。」


目がマジだ。伊織のこの情熱はいったいどこからくるのだろうか…。少なくとも私はあんまりこんな顔見たことない。


「二人とも、こんなところで何してんすか?試合、もうちょっとで始まりますよ?ていうか…なんで二人そんなに距離近いんです?あ!なにか楽しいことやってましたね!私抜きで!」


突如として和泉が私らの元へと駆け寄ってきた。


この時だけは間違いなく伊織と意見があったと思う。これ以上面倒な乱入は断固拒否!


「なんでもないよ!ね、伊織?」


「もちろんもちろん!さ、試合試合!」


そのまま私たちは不思議そうな顔の和泉を連れてグラウンドに合流した。


試合は男子たちとは違ってかなりゆるいものだったけど…男子の視線はやっぱり少しだけ嫌だ。スタイルがいい子はみんな走っているだけで見られると言っていたし、自意識過剰かもだけど私自身も見られているなと感じることが多い。


「結衣さんなんで長袖着てんの?さっきまで半袖だったろ?」

「それ楽しみで試合見てんのになー、女子みんな長袖だぜ?」


そんな風な声が聞こえてくる。小声で話しているつもりなんだろうけど意外と聞こえてるからね…。別に絶対見るなとは言えないけど聞こえるような声で話すのはやめて欲しいかな。


でもそう考えると長袖借りれてほんと良かった…。


「残念ながら肝心な遥くんは全然こっちの試合見てないねー、活躍するところ見せたかった?」


伊織が言うように遥くんはお友達とずっとリフティングの練習をしている。暑そうな伸びた髪の毛と対照的に爽やかな笑顔。雲ひとつない晴天も相まってとにかく爽やかに見える。


「ううん、楽しそうでいいなーってくらい。それより私だけ半袖だった事実に震えてる。」


「まぁそれ普段のやつよりサイズも大きいし、スタイル隠すのにもちょうどいいかもね。てかあんた…試合中に隠れて匂うのやめなよ…。そんなところ遥くんに見られたら引かれるんじゃない?分かんないけど。」


うう…バレてる…。だって走るとなんかほのかに香りが漂うというか…自分のじゃないから結構分かっちゃうんだよね。それに見てないのを確認してからやってますから!


「遥くんは引かない…!多分…。でもたしかにこれちょっと安心するんだよね、このサイズ感しっくりきちゃって。次からも借りれないかなぁ…。」


これはなんかもうやめられない気がしてきた…。だってこの安心感を知ってしまったら無理!


「いいなぁ…。あれですか、自慢ですか?あーあその恍惚とした表情を見られてドン引きされないかなぁ…。」


ほんとに友達!?なんでこんなに嫌そうなの!?それに恍惚としてなんかない、多分…いや絶対!


「あ、試合終わった。あー疲れたぁ…結衣さんの惚気話を聞くので大変だったよ…。」


「い、伊織が聞くから!それに恍惚ともしてないし、惚気でもないから!か、かいでたのは事実だけど…。でも別にそれだけだからね。」


だって自分でもこんなに匂いに夢中になるなんて思わなかったんだもん。こんなこと言うのもなんだけど、ある意味これを知らなかった方が精神衛生上は良かった気もする…。


「まさかあの宮島結衣が匂いフェチで、授業中に我慢できなくなってキメてるとは思ってもみないだろうねぇ。私は嬉しいよ、結衣にもそういう一面があるって知れたからね!」


「そ、そんな言い方やめてよぉ…。だってなんかハマっちゃって…。ちょっとクセになりそうっていうか…。」


今もはやこの上着の方じゃなくて、半袖の方もかいでみたいという欲求が出てきてしまっている…。


さ、さすがにやらないけどね!少しだけ興味があるってだけで…。


「あんた…その顔絶対人前しちゃダメだからね。特に絶対男どもの前でなんてやめときなさいよ。」


「し、しないよ!伊織の中で私って今どんなイメージなの!?」


「あーでも遥くんの前ではいいのか…。彼以外の男の子の前ではってことにしよっか!」


「伊織!冗談でもそういうこと絶対本人の前とかで言わないでね!」



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