12話 学校での小さな変化
迷子少女宅を訪れて、ひなちゃんのお姉さんが宮島結衣さんだということを知った。それからも何度か自宅を訪れているが特に彼女の正体のようなものを知ったところで俺たちに変化はない。
「あーまた今日も告白されてるよ…前からすごい人気だったけど、最近増えたよねー。前は週に何回かみたいな感じだったのに…それでも多いけどさ。」
窓から中庭を見ると今日もまた結衣さんは告白されている。以前からもちろん大人気だったが最近は一層人気を増しているらしい。まぁ本人は嫌そうだったけど。
「まぁ…大変そうだなという感想しか出ないよ。前に振られた人も再チャレンジしてるとかって聞くしさ。一括で断るシステムとかあればいいのにねー。そしたらすぐ終わって帰れそうじゃない?」
「はぁー…君はほんとに興味無さそうだねぇ…。今の君は例の迷子の女の子のことの方が関心持ってるんじゃない?その子の前じゃその長ったらしい髪もセットしてるんでしょ?」
薫はからかったような目を向けながらそんなことをつぶやく。
「セットってほどじゃないよ。髪結んだりしてまとめるか、分けるかくらいのことかな。まぁでも告白事情よりはその子のことに関心があるってのは間違ってないかもねー…。」
だってそのご本人が嫌気がさしてるって愚痴ってるのを直接聞いてるからなあ…。それでもなお興味を持てって方が酷じゃない?
「まぁでも君もちょっと明るくなったよね。僕としてはその子に感謝かな。ほんの少しだけ寂しさもあるけどさ。」
「え、そう?俺そんなに変わった気しないけど…。」
「そりゃ僕らといる時はいつも通りだよ。そうじゃなくてさ普段の学校生活っていうのかな…。普段が暗いとは言わないけど、僕らといる時よりは暗かったでしょ?その差が減ってきた気がするんだよね。」
うーーん…自分じゃ全然分からないけどなあ…。でもたしかに家族かこいつら以外とはそんなに深い交流もなかったからな。高校での友達ともそんなに遊びに行ったりはしてなかったし。
そういう意味じゃ新しい友達みたいな存在は大きかったのかもな。もちろんこの友達とは結衣さんのことだからね。ひなちゃんは友達というか…うーん…。
「まぁそれなら良かったよ。自分じゃ暗いなんて全く思ってないけどな!」
そんなことを話しながらふと中庭の方を見てみる。どうやら今日の告白はこれで最後らしい。まぁ案の定秒速で振られていた。
何気なくそのまま中庭の方を眺めているとお断りを終えた後の結衣さんと目が合う。思わず目をそらしそうになったが多分そんなことをしたら次会った時に怒られる気がしたので軽く会釈だけしておく。
彼女が笑顔でこちらに小さく手を振ってくる。さっきまでの表情とは全く違ういつものような笑顔に思わず後ろを振り返ってしまった。
(やっぱり俺だよな…?これで勘違いとかだったら辛いんだけど…。)
それでも彼女は変わらず笑顔で手を振るので俺も小さく振り返した。俺が返すと少しだけ嬉しそうに笑っている姿はたしかに一種のアイドル扱いをされているのも納得の可愛さだ。
「…?遥?何してんの?」
「な、何でもないですよ!いやあの、告白が終わったなーって思ってさ。」
急に薫に指摘されてなんだか恥ずかしくなる。別に薫にだったら話したっていいんだけど…。少なくとも教室で話すのは違うな。
「あー宮島結衣さん?でもなんかちょっと嬉しそうじゃない?男の方は死んでるから絶対振られたと思うんだけど…。」
まぁ機嫌悪くないなら良かったかな。
「遥ー、お前今日ひまー?」
ガラガラと教室のドアを開けながら、そう言って透が絡んできた。こいつと薫は俺の昔からの友人で相談なんかをできる貴重な相手だ。
「透…一応ここ僕らのクラスなんだからさ、小さい声で話してよ。それでなんの用?」
「薫は相変わらず冷たいなぁ…。いやあんまりさ、お前らと学校で話すこともないだろ?俺だけ別のクラスになっちゃったし。それでさ、いつも誘われるの薫からなんだよ。ピンときちゃって、お前ら二人で遊んでるだろ?これは直接誘うのが早いと思ってな。」
俺はとっさに薫を見る。少しだけ気まずそうな顔をして
「いやぁ…別に透呼んでもいいんだけどさ…君のクラスまで行くの大変なんだもん。連絡もまめにチェックしないし…。君もなかなか友達多いしさ、気まずくて。…ごめんて、でも二人で遊ぶのなんて少ないんだよ。最近一回行ったかなくらい。」
「俺もお前らが遊んでくれるなら他の予定は切ってでも行くって!遥の顔見れるなんて学校の外じゃないと無理だしな。」
俺と薫がこいつに学校で話しかけない理由はシンプルに声がでかいから困るんだよ。薫もちょっと気まずそうだしさ。
「今日は空いてるよ、まぁそんなに遅くならないなら行けるかな。薫は?」
「僕も全然平気だよ。それにちょっとした予定なら全然空けるからさ。」
すると透はそのままの流れで椅子に座って話し始めた。これは完全に長くなるやつだ…。
「そういえばさ、俺宮島さんと同じクラスじゃん?最近前より人気な気がするんだよ。」
話の流れを全て断ち切って透はそんなことを話し始めた。
「あーさっき僕らもその話してたよ。今日の告白もすごかったねえ…。クラスでもそんなに人気なの?」
薫も興味はあったのか、意外とノリノリで会話に参加している。俺は若干気まずい。
「うーんクラスじゃそこまでかな…?前まではさ、こう…とっつきにくさみたいなのがあったんだよ。友達も仲のいい数人といるって感じだし。だから意外とクラスメイトからはそんなにだよ、絶対断られるって分かるし。そんな勇敢なやつはいないからな。」
「あーまぁそんな感じだよね、クールな感じだし。」
「けど最近ちょっと前より明るくなってきたからそれも分からないけどなー。」
あれ…これって俺聞いてもいい話なのか…?俺が逆の立場ならなんか嫌だな…。でもちょっとだけ気になる…!
「へーまぁそうなると大変だろうね、見てるだけで大変そうなんだから。」
「でもさぁ、あの人が付き合う人がいるとしたらそれこそ大変だと思うよなー…」
「よし!帰ろう!この後どっか行くんだろ?早く行こう、今すぐ行こう!」
俺はこのまま教室で彼女の話をするのが少しだけ気が引けた。二人は困惑しつつも俺たちはそのまま学校を出ることにする。
別に彼女の話をすることが悪いとも思わない。それでも俺の中の彼女と、学校での彼女のイメージの噛み合わなさに少しだけ変な感じがする。
少なくとも彼女のことを知ってしまった今では少しだけ罪悪感を覚えてしまう。
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