離郷
俺は今日、この故郷を出る。
俺は子供の頃から、この何もない故郷が大嫌いだった。
「高校を卒業したら、すぐに都会に行こう」
と、俺は都会に出ても困らないように、バイトして金を貯めた。
高校を卒業しそして、俺は今日この寂れた故郷からやっと出られる。
けど……
いざ、この故郷から離れるとわかると、たくさんの思い出がアルバムのようにパラパラと甦る。
故郷を出ようとして、くるりと振り返る。
そこには、何十年前からほとんど変わらない光景があった。
「もうしばらくは、この光景が見れないのか……」
そう思うと、何だか胸が熱くなった。
くるりと俺は向き返り、故郷を出る。
「……さようなら。またな」
そう小さく呟きながら……