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Take On Me 2   作者: マン太
13/33

13.大和、動く


 岳が出て行って二週間。

 その間、連絡は一つも無く──それはそうだろう。岳の端末はコツメカワウソのぬいぐるみの前に鎮座しているのだから──もう、待つことに限界だった。

 ただじっとして待つのは性に合わない。良くもここまでもったものだと思う。

 俺は岳の為に行動を起こす事を決意した。けれど、無茶するつもりはない。


 岳もそれを心配しているんだろうし…。


 俺だっていきなり古山の事務所ヘ殴り込みになど行かない。岳が心配したのは俺が動いて危険が迫ること。だから、安全だと思える行動を起こす事にした。

 まずは、一番気になっている大希と会って話すこと。

 岳を連れ戻す事とは直接関係ないのかも知れないが、どうして古山に手を貸したのか、その理由を知りたかったのだ。

 話すだけなら危険は無いと踏んでいる。

 大体、大希に睡眠薬を飲まされた時は、かなり油断していたのだ。状況が変わった今、隙は見せない。

 その大希には、目が覚めてすぐに連絡してみたのだが反応はなく、電話にいたっては不通となっていた。

 それはそうだろう。拉致に手を貸したのだ。今まで通り連絡がつくはずがない。

 でも思う。


 大希はそんな事に手を貸す奴じゃない。何か理由があるはずだ。


 そう思えた。それに──。


 あいつ、泣いてたんだよな…。


 目覚めて思いだした。

 俺はホテルの一室に寝かされていたそうだが、下着以外の衣類を身に着けていなかったと言う。脅しのつもりでそうしたのだろうが、それだけで済んで良かったとは真琴の話だった。

 真琴には言えずにいたが、あの時、大希は確かに俺を襲おうとしていて。

 けれど、そうはしなかった。

 大希が触れた感覚を覚えている。岳と違うそれに違和感を覚えて目覚めたのだ。やはり、自分は岳以外には触れられたくないのだと改めて思ったが──。

 あの時、確かに泣いていて。とても辛そうだった。

 大希が単に金の為に動いていたなら、命令通り動いただろうし、そんな顔をするはずがない。


 きっと、何かある──。


 それを聞き出したかった。

 しかし、真琴から伝えられていた通り、訪れたアパートに大希はいなかった。

 ふくが言うには、暫く留守にしますと言って、リュック一つの軽装で出て行ったのだと言う。それから二週間以上、何の音沙汰もないと言った。

 許可を得て見せて貰った部屋には、私物らしい私物はなく。

 折り畳み式のテーブルと、寝具一式。一人用の中身が空っぽ冷蔵庫のみ。あとは必要最低限の調理器具、食器その他。それだけだった。着替えの類は置いていない。

 多分、ここへ戻ってくるつもりはないのだろう。

 ふと、冷蔵庫のドアに写真が留めてあるのに気が付いた。

 初めて大希と祐二の働く店に行った際、記念にと撮ったポラロイド写真だ。頬がひっつきそうなくらい顔を寄せる大希。


 俺が無理やりひっぱった奴。──置いてったんだな…。


 少し寂しく思う。

 それまで仲良く話していたと思ったのに、ふと気が付けば、大希はひとりぽつんとそこにいた。

 祐二との会話に入ってくる気配はない。表情は無くなり、ただ、遠くを見つめていた。


 まるで、世界に一人きりしかいないみたいで──。


 俺は気を利かせた祐二が写真を撮ると言ったのに乗じて、大希を引き寄せたのだった。

 大希は驚いたのか大きく目を見開いて。それが面白くてああやってくっついたのだけど。


 そんな距離を作らなくていいんだって、伝えたかったんだ──。


 大希はきっと寂しがりやで怖がりで。

 今まで人とのかかわりで傷ついたことがあるのだろう。だから、次も傷つかないよう、自分を守るため距離を置く。

 時にはそれも必要だけれど、ずっとは良くない。そのままでは段々と自分を孤独に追いやってしまう。


 今、大希は一人じゃない。


 こうやって自分とも会えたのだ。俺たちは大希を傷つけはしない。

 昔は昔。今は今。前に大きく傷ついたのなら、それを糧に強くなれるはず。それに、傷ついたからこそ、人の痛みが分かるのだ。

 

 大希は優しい奴なんだ。


 そう思って接していれば、大希は無意識なのか意識してなのか、自分から近づく様になった。

 ようやく心を開いてくれたのかと思っていたのに。全ては自分に近づくためのふりだったのか。


 ──いや。それだけだとは思えない。


 兎に角、話しを聞かねば始まらない。俺は結構、しつこいのだ。

 大希の行方を探る為、牧と藤を頼った。

 大希の写真を見せ、その勤め先の内容を話し、知り合いのつてを頼りに手がかりを探ってもらったのだ。

 大希の職場は裏の世界に属している。個人で闇雲に動くより、その道のプロに任せるのが一番だった。

 ちなみに牧も藤も、岳が鷗澤組を抜けたと同時、岳以外には仕えたくないと、それぞれ仕事をみつけ就職した。

 牧はラーメン屋。藤はトレーニングジム。

 藤は納得だが牧のラーメン屋は驚いた。笑えるが、牧はあれで調理師免許もあり、過去、家系ラーメン屋でバイトもしていたのだとか。

 そのまま店長にならないかと誘われ、当時は断ったらしいが、今回のことでそちらに進んだらしい。

 藤はもともと通っていたジムの店長にさそわれ、トレーナーとして働きだした。

 二人ともまともな道に案外すっかり馴染んでいるのが凄いなと思う。


 しかし、藤はいいとして、牧がラーメン屋の店主って。


 ぷぷっと笑いながらも、店を開けている間はきっちり店主の顔になっていて。

 岳と二人で店に冷やかしに行った際、牧はアクセサリーなども身に付けず、白い手ぬぐいを頭に巻いて、黙々と作っていた。それが結構いい感じで。味も本場仕込みらしく、しっかり家系を守っていた。


 今度、大希も連れていけたらいいな。


 絶対はまるに違いない。この前、一緒にラーメンを食べに行った時も、かなり詳しかった。好きなのだろう。


 当分は無理だろうけど…。

 

 俺はため息をつく。

 真琴にはこの事を話していない。話せば会うことを止められる事は分かっている。だから話せなかった。

 元々、岳含め、真琴も祐二も、何故か大希のことは警戒している様で。気付いてはいたけれど、俺は気にせず大希と付き合った。

 それが結果利用され、岳の足を引っ張ってしまう事になったのだが。

 友人になりたい気持ちが逸って、警戒を怠ったのかもしれない。けれど、距離を縮める為にはそうするしかなく。ジレンマだ。


 それにしても、ヤクザに戻れなんて──。


 なんて理不尽な要求。岳の意志を全く無視している。

 俺を盾にとって脅して。そんなことで岳が戻ったとしても、決して昔に戻ることはないのに。

 もう、岳は別の人生を歩き出したのだ。

 ここではっきり切っておかないと、きっと今後もそうやってずるずると岳を引きずり込もうとするだろう。


 どうしたらいい?


 岳を取り戻すには。ヤクザとの関係を断つには──。

 大希の事も含め、俺は必死にその方法を考えた。

 

+++



『おう、大和。そいつの働いてる店、見つかったぞ?』


 牧から端末に連絡が入ったのはその日の午後。夕飯の仕度に取り掛かる前だった。牧は一旦仕込みが終わって休憩中で。

 大希が勤める様な、専門の店が連なる場所は限られている。そのうちの一つに大希らしい青年が出入りしていると情報を得たというのだ。

 牧からメールで住所を送ってもらう。場所も繁華街で治安は悪くない。何とか迷わずに行けそうだった。電話で礼を言う。


「ありがとう、牧。助かった!」


『どうすんだ? 会いに行くのか?』


「うん。早速明日、行ってみるつもりだ。会えなくても周りの人に話しは聞けるし…」


 明日は金曜日で、丁度、トレーニングもない。夕食後なら時間は十分あった。

 夜出かけるとあっては真琴らが心配するが、トレーニングに行くことにすれば問題ない。ジムに通う道は人通りも多く、危険は無いと真琴にも太鼓判を押されていた。

 真琴達に本当の事を言わないのは気が引ける。けれど、話せばきっと引き留められるだろう。それを振り切ってまで行く事は躊躇われて。

 どうしても会って話したかった俺は、黙って行く選択をした。

 ちなみに牧と藤には、今回の岳の事を話していなかった。平穏な生活を送り出した彼らを巻き込みたくないと、岳が言ったのだと言う。

 だから、牧にも藤にも岳は仕事が忙しくて、俺にかまっていられないと伝えてあった。


『おいおい…。大和。お前一人で行く気かよ? 流石にそれは見て見ぬふりはできねぇな。俺たちが岳さんに殺されるって。藤に頼む。お前、藤んとこでトレーニングしてるだろ? そこで奴と待ち合わせだ』


「でも─…」


 これ以上、牧達を巻き込めない。言い淀めば、電話の向こうで牧がため息をつく。


『…岳さんの事は知ってる。俺も藤もな』


「えっ?! ホント──」


『嘘言ったってしょうがねえだろ? ヤクザ辞めてもそっちの友人もいるからな。情報は入ってくる。──どうせ、岳さんが黙っていろって言ったんだろうが…』


 まさにその通りだ。


『今回、探した坊主も何か関わってンだろ? 幾ら話すだけだって言ったって、何があるか分からねぇ。どうせ、洲崎さんには言ってねぇんだろ? だったら藤を連れてけ』


 全て知っていたのか。真琴へ話していない事もお見通しとは。


「…わかった」


 牧らの心配はよく分かる。俺は素直に牧の提案を受け入れた。


 次の日、金曜の夜。


「今日、藤の所でトレーニングしてくる…」


 夕食時、真琴と亜貴にそう伝えた。


「あれ? いつも、火木じゃなかった?」


 亜貴がおかずのブリの照り焼きを箸で突付きながら、不思議そうな顔をして見せる。

 それはそうだろう。だって今日は金曜日だ。

 俺はご飯茶碗に残ったご飯を口にかき込みながら、なるべく普段通りに振る舞うと。


「急に都合が悪くなってさ。藤の所、結構人気だろ? で、いつもの時間に他のレッスンが割り込んで、一杯になっちゃってさ」


 つい、早口になってしまう。


「ふーん…」


 亜貴はどこか納得の行かない様子。

 かなり無理のある設定だ。まともなジムがそんな適当な時間割りをする訳がない。でも、他に理由が見つからなかったのだ。


 夕食後、片付けを済ませた俺は、いつものバッグを肩に引っ掛け、玄関先でスニーカーを履いていた。すると真琴も傍らで革靴を履きだす。


「…真琴さん?」


「心配だ。ジムまで送っていく。帰りは藤に送ってもらえよ? くれぐれも一人にならないように。俺からも頼んでおく」


 ジムへの経路は問題ないはず。それがついて行くとは。俺はもしや? と思った。


 俺が何かすると気づいているんじゃ──。


 こうなると黙っていられない。居た堪れなくなった俺は、伺う様に傍らの真琴に目を向けると。


「あの…さ。俺──」


 今日の目的を話そうと口を開きかければ。


「大和は…嘘が下手だからな?」


「あ…」


 真琴は靴紐を締めながらくすりと笑った。それで全てバレていたのだと知る。


「大和の事は信用している。だから好きに動くといい。周りがちゃんとフォローする」


「…ごめん。俺、黙ってて…」


 そんな俺の頭に手を乗せると優しく撫でた。


「大和の事は分かっているつもりだ。さっきも話そうとしてくれただろう? 例え黙って行ったとしても、心配かけまいとした結果だ。分かってる。…気にするな」


 真琴は最後にぽんぽんと俺の頭を叩くと、


「さあ、ジムに行くか」


 言って立ち上がる。まだ玄関かまちに座っていた俺は顔を上げると。


「って、その──ありがとう…! 真琴さんっ…」


 黙って行こうとした自分が恥ずかしい。


「ほら、藤との待ち合わせに遅れるぞ?」


 真琴は口元に笑みを浮かべて見せた。

 その後、見送りに出てきた亜貴に──こちらも全て知っていた──じゃあ、ときまり悪げに言ってから家を後にした。


+++


「…牧も藤も知ってるって。岳のこと」


 真琴の運転でジムに向けて車は走り出す。助手席に座った俺は、自分の手元に目を落としながらそう言えば。


「だろうな」


 真琴は正面を向いたまま軽く肩をすくめて答えた。行き交う車のライトが目に眩しい。俺は驚いて隣の真琴を見返す。

 

「知ってたのか?」


「多分、気づいているだろうとは思っていた…。直接、話してはいないが、長い付き合いだ。お互いの事はわかるさ。だから向こうも岳の言いたい事はよくわかってる筈だ」


「岳の…言いたい事?」


「ああ。知ったとしても、直接関わるな──牧と藤に自分の事を言わなかったのはそう言う事だ。だから、大和が頼ってくれて、内心、小躍りしてる事だろうな。これで大手を振って関われる、と」


「小躍り…」


 つい、牧と藤が諸手を挙げて小躍りしている様を思い浮かべてしまい、こみ上げる笑いを抑えるのに必死だった。そうしていれば。


「な? 可笑しいだろう? あいつらの喜ぶ姿が目に見えるな…」


 真琴の目元も緩む。俺は小さなため息をつくと。


「ってさ。俺、全然気づかなかったなぁ…」


「牧も藤も伊達にヤクザをやっていた訳じゃない。感情を隠すなんてわけないさ」


「うう…。完敗、だな」


 降参するように頭の後ろで手を組んだ。そんな俺を笑顔で見やったあと、真琴は表情を引き締め。


「家には亜貴がいる。俺は万が一に備えて側を離れる訳には行かない。今は俺の代わりに楠の下の者に見張ってもらっているんだ。これは、潔さんの指示でもあるんだが。だから、大和について行かれない」


「俺は大丈夫だ。もう、無茶はしないからさ」


「そう言うわけには行かないさ。だから藤がいる──」


「え──」


 話している間にジムのあるビルが見えてくる。真琴はジムの地下駐車場に向かうと車を停めた。すぐそこはジムの地下入口だ。


「実は藤から連絡が来てな。大和が一人で動いていると。他言無用と言われたから、聞かなかった事にしてくれと言われてな…」


 真琴は思い出した様にくくっと笑った。


「あいつ…。他言無用の意味、分かってンのかよ」


「大和が何かしようとしているのは分かっていたからな。藤から聞いてやはりと思った。それで牧に大和を一人にしないよう頼んだんだ。──まあ、頼まなくてもそうしただろうが」


「…なんだよ。全部、筒抜けだったのかよ…」


 ひとり悶々としていたのが馬鹿みたいだ。それくらいなら、さっさと真琴に相談していれば良かったのだ。


「皆、大和が好きだからな。放ってはおかないさ」


 真琴は笑う。


「ありがとな、真琴さん…」


 俺はつくづく幸せ者なのだと思った。


「礼には及ばない。ほら、到着だ」


「あ、うん」


 その言葉に、シートベルトを外し降りようとすれば。


「そこまで送ろう──」


  そう言って運転席の真琴もシートベルトを外した。


「って、すぐそこ入口だし、大丈夫だって」


「俺がそうしたいんだ。岳だって同じことをするさ。ほら、時間があるんだろ?」


「お、おう…」


 一緒に降りた真琴は背後からついてくる。

 本当にすぐそこが地下入口で、入って階段を上がり、その先が受け付けだった。

 通路の先から人の声が聞こえてくる。角を曲がると観葉植物が配置され、和む雰囲気の先に藤がいた。

 長身で大柄な体躯が受付カウンターに畏まって大人しく収まっている姿はなかなか萌える。


「藤!」


 俺が呼べば直に気がつき、頷いて見せた。真琴がいても驚かないのは知っていたせいだろう。

 同僚に退出の挨拶してカウンターから出てきた藤に、真琴は俺の両肩に手を置くと。


「藤、大和を頼んだ。──岳の代わりにな」


「…はい」


 藤は幾分、畏まった様子で返事を返す。真琴はそれだけ言いうと、じゃあなともう一度、俺の肩に手を置き、踵を返し去って行った。

 その背を見送りながら、


「知ってたんだな。岳のことも…。てか、真琴さんにバラしたな?」


「大和は岳さんの家族だ。同じく家族の真琴さんにも伝えておくべきだと」


 そう言った。


 家族…。


 そうだった。俺たちはもう『家族』なんだ。


 いい響きだと思った。心の中が温かくなる。藤の言葉に改めて気付かされた。

 血の繋がりや、書類上の繋がりだけが、本物じゃない。一緒にいて、心を通わせている、その事が大事で。

 しかし、感慨に浸ってばかりも要られない。俺は傍らの藤を見上げると。


「…でさ。早速だけど、その店まで送ってくれるか?」


 時刻は夜九時近くなる。

 藤が働くこのジムは、帰宅が遅くなる会社員らに合わせて十一時まで開いているのだが、藤はそれならと時間休を取ってくれたのだ。


「わかった。そこに座って待っていてくれ」


 俺にロビーで待つように促すと、すぐにロッカールームに戻り、身支度を整え帰ってきた。

 ジーンズを履き、動きやすい濃紺のスウェットにジャケットを羽織った藤は、その高身長からスポーツ選手にも見えた。がたいもいい。


 野球とかラグビーとか。いや、格闘技系か? 


 胸板の厚さが半端ないのだ。


「…いつか、俺も藤みたくなれるかな?」


 まあ、無理なのは分かっているが、せめて厚い胸板くらいは目指したいところだ。

 しかし、藤はちらとこちらに視線を落とした後。


「大和はそれで十分だ。それ以上、つけてもバランスが良くないだろう。それに、ボディビルダーを目指しているのでなければ、止めた方がいい」


「あー、バランス。確かに…。ちっさいのにむきむきも悪くないけど、な?」


「大和はそれ以上、何かを足す必要はない。落す必要もだ」


 ほとんど表情は変わらない藤だが、褒めてくれているのだろう。


「…あんがと」


 それに──と、途中まで言いかけて藤は止めた。


「なんだよ? 言えよ」


 俺は下から睨みあげる。すると、渋々と言った具合に藤は口を開いた。


「…岳さんに『大和をマッチョにするな』と言われている。今がいいらしい」


 今がいい──それは、きっと抱き心地を指しているのだろう。

 腕の中にすっぽり収まる俺を抱きしめては、この感じがちょうどいいんだ、とぎゅっとしてくる岳を思い出し。


 あ、そ。


 ぼぼっと頬が赤くなったのを知らぬ顔をして、


「よし! じゃあ、面倒かけるけど、よろしくな」


「ああ。もちろんだ」


 そこで初めて目元を細めたのを見て、僅かに笑んでいるのだと確認できたのだった。




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