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11. 笑う人形さん

 「大丈夫か? りっかちゃん」


 私はりっかちゃんのところに走ってきた。心配そうでりっかちゃんの様子を見た。彼女は今(ひざまず)いているけど、まだ立っている私よりも高い。やっぱり今の私ってちっちゃいよね。りっかちゃんは1分の8サイズだから、私よりもまだ2.5倍大きい。


 「あ、いっ痛ったた!」


 なぜかりっかちゃんは手で私の頬を摘んだ。


 「何するの、りっかちゃん!?」

 「また『りっかちゃん、りっかちゃん』って(うるさ)いわよ! あたしはその名前じゃないからね」


 あ、そうか。そういえば『りっかちゃん』って、千恵美(ちえみ)ちゃんがつけた名前だったね。


 「ごめん。失礼しちゃった……しました」


 りっかちゃんは私より年上のようだし、体も私より大きくて威厳ありそうだから、やっぱり敬語を使った方がいいと今更気づいた。


 「ちょっと、美歌(みか)のゆかちゃんに何をした?」


 自分の『ゆかちゃん』(つまり私)がりっかちゃんがに(いじ)められているのを見て、美歌ちゃんは助けに来てくれた。


 助けてくれているのは嬉しいけど、今は親に守ってもらった子供みたいな気分で複雑な感じだ。


 「今『美歌のゆか(・・)ちゃん』って? あ、なるほど、あんたも名前をつけられたってことね、ははは」


 私はりっかちゃんに笑われた。


 「そ、そこまで笑わなくても……」


 というかりっかちゃんってこういうキャラなの? なんか想像していたのと全然違うんだけど……。私の中のりっかちゃんのイメージはどんどん崩していく。


 「あの、美歌ちゃん、一応もう一度言うけど、私は『夢未花(ゆみか)』って名前だよ……」

 「じゃ、ゆみかちゃん……?」

 「いや、『ちゃん』はちょっと……」


 小学生の子供に『ちゃん』付けで呼ばれると、やっぱりなんか……。今の私は美歌ちゃんよりちっちゃいから年下だと思われているのか?


 「えーと、一応訊いておくけど、美歌ちゃんはいくつ?」

 「美歌は小5だよ」


 ほら、やっぱり小学生か。言葉遣いから見ればもっと小さいかと思っていたけどね。


 「とにかく私は中学3年生で、君より年上だから、『ちゃん』つけは止めないかな?」

 「やだ。やっぱりゆかちゃんはゆかちゃんだし」


 やっぱりダメか。しかもまた『ゆかちゃん』か。まあ

もういい。


 「あははは、『ゆかちゃん』ね。あたしもあんたのことをそう呼ぶわ」


 またりっかちゃんに笑われている。なんか悔しい……。


 「じゃ、そっちも『りっかちゃん』でいい」

 「なんですって!? あたしは麗華(れいか)と言う名前があるのよ」


 またりっかちゃんに頬を摘まれた。痛い……。今私は小さいからもっと手加減して欲しい。


 「ご、ごめんなさい。れ、れいかさま……」


 なんか不公平だ! なんで私ばかり……。今私は一番小さい体だから仕方ないよね。


 「それはさておき、今は残りの人も助けないと」


 今他の人も心配だ。千恵美を含め、他の女の子たちは今でもまだ動けていない。どうしたら……。


 「助ける? 今あたしたちだけでも精いっぱいよ。どうするつもりよ?」


 りっかちゃん……いや、麗華ちゃん……じゃなく、麗華さんは私に聞いた。


 「え? そ、そんなこと私に訊かれても……」


 そういえばどうして私たちだけ動けるようになったの? このままでは私たち数人しか助からないのかな?


 そういえば私たちの共通点って何? よくわからない。動けるようになって今地面まで降りた女の子は全部9人。私と麗華さんと美歌ちゃん、そして他の女の子たち。ばらばらなサイズだけど、大体みんな美歌ちゃんより小さくて、私より大きい。


 「やっぱり、全然考えてないか」


 麗華さんは(あき)れたような顔をした。


 「そっちこそ何か考えがあるのですか?」

 「ないけど、とにかくここから逃げるわよ。残る人を助けるのは後のことでいいじゃないか」


 確かにそうだよね。麗華さん、ちょっと口が悪いけど、その通り一理があるかも。だけど。


 「じゃ、どうやってここから出るつもりですか?」


 この店の扉を見たらやっぱり絶望的だ。今たとえ私たちが動けるようになって、地面まで降りられたとしても、ここから出ることができることは難しい。扉のノブは高すぎて、この中で一番高い美歌ちゃんでも手が届きそうにない。


 「そうね。まず何か土台(どだい)を探してノブまで登ろう」

 「使えそうなものはあるんですか?」

 「それは……」


 やっぱり麗華さんもわからないよね。周りを見て調べたらどうやらいけそうなものは見つからない。椅子だって今の私たちにとって巨大すぎる。


 「じゃ、誰かを投げ飛ばしてノブまで届く。あんたは一番小さいから飛びやすそうね」

 「なんで私!? 無茶ですよ!」


 私にとってドアノブの高さだけでも数階のビルみたいな高さみたいに感じちゃうから、そんなの絶対嫌……。それに小さな私の力ではおそらくノブを動かすことすらできないかも。どう考えても無理。


 『かちゃ!』


 考える間もなく、次の瞬間に扉の開く音が響いてきた。だけどそれは私たちの(ねら)っている店の入り口のドアではなくて、奥の方の扉だった。つまり家の中からのドアの方。そしてもちろん、ドアを開けたのは他の誰でもなく麟子(りんこ)さんだった! 彼女はこっちを見て随分驚いているようだ。


 「何が起きてますの!? なんで人形たちは……」


 結局もう見つけられてしまった! せっかく逃げるチャンスだと思っていたのに、どうしよう?


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