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オレンジ
継美は急いでいた
自転車すっ飛ばせば間に合うと思っていたら、朝早くから妹が勝手に継美の自転車(というか妹と兼用)を使っていて、継美は走らざるを得なかったのだ。
と言っても、髪型やメイクが崩れるから小走りだが…
紫織ならわかってくれる。
そう思って全力は出さずにでも急足でカフェまで走ってきた。
カフェの『自動』という文字に手をかざすと、開いたドアの隙間からスッキリとした冷気が継美の火照った顔をひんやりとさせた。
はぁ、ふぅ、と少し息を切らして奥の先に目をやると、
本を読んでいる紫織がいた。
時計は12時40分だった。
息を少しだけ整えながら紫織に近づこうとカフェに入るとすぐに、紫織が継美の方を見た。
涼しげな顔。
真っ直ぐな、真っ黒い、たけどどこか少しだけ青みを帯びているような艶やかな黒髪。
涼しげな目元。
青みを帯びた、でも血色のある陶器のような肌。
あぁ、私の憧れる『ブルベ冬』だ。
継美は紫織に近づきながら、そう、思った。




