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152 エスポスティにもある




「閣下から与えられた課題はこなせそうか?」

「はい。もうほぼ終わりました。あとは閣下に直接ご報告の必要があれば、それを残すのみですわ」


 今考えても仕方ないことが多いと、デルフィーナも気持ちを切り替えて話に応じる。

 東大陸の品々については、テオが全て書き留めてくれたから、改めて報告がいるとしても閣下へ口頭でおこなうだけだ。

 目の前で使ってみせよ、と言われれば少し時間を取るものもあるが、概ね短時間で終わる。将棋を指すよう言われたら長くなるかもしれないが。


「なら、あと二、三日で滞在は終わりだろう。……残りの数日も、くれぐれも失礼のないように過ごしなさい」

「……はい」


 信頼のなさそうな注意に、デルフィーナはおとなしく答えるしかない。デルフィーナは大失敗こそしないものの、些細なやらかしはいくつかしているので、ドナートの懸念を否定できなかった。

 誤魔化すように、隣で毛繕いを始めていたリュティをそっと撫でる。満腹になって、眠気が来ているようだ。


「そういえば、エスポスティには東大陸の用途不明な品はないのですか?」


 デルフィーナの問いに、ドナートは一瞬考えるように止まり、顎をひと撫でした。


「我が家にはないが。商会の方にならあるぞ。もっとも、こちらの公爵家にあるような高価な品ではないだろうし、比肩できるような量はないが」


 それでもいくらかの品はあるらしい。


「大陸間貿易部門に一人、東大陸に魅了された男がいてな。何だかよく分からん物でも私費で買っている」

「えぇ?」


 使い方の分からない物を買う意味がデルフィーナには分からない。だがコレクターというのは、そういうものなのだろう。

 “持っていること”が大事なのだ。

 皿や花器だって使わず飾っておくくらいだ、美術品として()()だけでいいのだ。


「だが購入につぎ込んでいるため、保管の方に回す金がないと、エスポスティ商会の保管庫を使っている。一応個人所蔵と分かるように印はつけてあるし、目録も作っているようだが。間違って他へ販売しないようにとな。

 あの男は基本的に保管庫の管理責任者としてあまりあそこを離れないから、今まで問題は起きていないので、カルミネも目こぼししている状態だ」

「まぁ……」


 呆れるべきか、それが許されるだけの有能さがある者として感心すべきか、デルフィーナの問いはどっちつかずの表情を浮かべる。


「目利きなのは確かだ。絶対に粗悪品は弾く」

「なるほど」


 国内で東大陸産のものを捌くには、欠かせない存在なわけか。デルフィーナは納得した。


「自ら買い付けには行かないのですか?」


 それほどの好事家なら本家本元の東大陸へ渡っていても不思議はない。あちらの植物について聞けないか、とデルフィーナは考えたのだが、ドナートは肩をすくめて苦笑した。


「あの男にとって悲劇な話だが。酷い船酔いにかかるそうだ」

「あら、まぁ」

「慣れれば克服できるだろうと、まずは南大陸へ渡るべく大型船に乗ったらしいが、結局、北大陸から出ることもできず栄養失調になったらしい」


 それは本当に酷い。

 バルビエリを立ったら、北大陸のいくつかの港を経て、更にいくつかの島に寄り、南大陸へと至るのが通常だ。

 それが北大陸から出られないとなれば、しかも揺れの少なめの大型船でも酔うとなれば、もう本当にどうにもならなかったに違いない。

 吐き気が止まらず、食事も取れず、そのままの状態で日数が経ち、旅の疲れと相まって病床につく結果となり、泣く泣く陸路で帰ってきたと。


「だからだろうな。以前にも増して集めるようになったとカルミネがぼやいていた」


 行けない分憧れは強くなり、収集癖が高じているのかもしれない。

 保管庫を個人蔵で圧迫するなら、それは商会長として確かに悩ましい案件だ。


「その男の持つ品を併せれば、そこそこの数があると思うぞ」


 エスポスティ家やエスポスティ商会所蔵の品だけだと使途不明品は少ないが、件の人物の持ち物を併せたら、それなりの数になる。

 使わずにただ持っているだけの品は、アバティーノ公爵家ほどでなくとも、エスポスティ商会の保管庫にもあると分かった。


 デルフィーナは高級品がほしいわけではない。

 東大陸の文化の進み具合とか、北大陸にはない過去世で使っていたような品がないかを知りたいだけだ。


 アバティーノ公爵家とはラインナップが違う可能性がある。

 東大陸との伝手は、ブルーノというエスポスティ商会傘下の貿易商がいる。

 エスポスティ商会の保管を見てほしい物が見つかったら、魔法の手紙で伝えて、次の茶葉と一緒に持ち帰ってもらえばいい。


「家に帰ったら、カルミネ叔父様にお願いして、見せてもらいますわ」


 ホクホクした笑顔で言うデルフィーナに、ドナートも表情を緩めた。

 いくらかでも用途の分かる品が増えれば、倉庫に眠ったままの品にも販路が開ける。それは商売人としてカルミネも喜ぶ提案だ。


「帰ったら伝えておこう」

「お願いします!」


 頷いたドナートは、その後、二三の確認を済ますと、丸くなって眠っていたリュティを抱えて帰って行った。






お読みいただきありがとうございます。

今回少し短めとなりました。年内最後の更新となります。


本年は年始にいきなりアクセスがドカンと増え、驚きで始まりました。

書籍化まで至り、これも全て、お読みくだり、応援くださる皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。


2巻の発売も3月10日に決まり、現在予約受付中です。

1巻以上に改稿&加筆をしております。

そちらもお読みいただければ大変嬉しく思います。


web連載も、スローではありますが止まることなく続ける所存です。

☆評価、ブックマーク、リアクション、感想、いずれも励みになっております。

引き続き応援いただけますと嬉しいです!


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そのうち何か遊べたらな、と思っておりますので、よろしければフォローお願いいたします。


皆様どうぞよいお年をお迎えくださいませ!

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― 新着の感想 ―
昔学生の頃、一日中バスに乗ることになる修学旅行前に、車酔いする生徒達を集めた訓練を受けたことが有ります。 修学旅行の二月ぐらいは前から、朝30分程度柔道場で、でんぐり返しを柔道場の端から端まで繰り返す…
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