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1話

 ガタンッガタンッと石を蹴る音が聞こえる。

 定期的に揺れる帷がついた馬車は、中にいる四人にも振動を伝えていた。


 「最近この辺りは強い魔物が出るようになったと聞くのう……」


 「そうだなぁ。私も近くの森の主をよく見かけると聞いたぞ」


 「そうか……最近良くない噂ばかり聞く。この前もどこかの村が滅ぼされたと聞いたばかりだ」


 日は登ったばかりで帷の中は暗く、それに比例した暗い話題をするおじさんが二人。

 横隣に座っている二人は今に不安をこぼしていた。


 「いいえそんなこともありませんよ。前は魔物達に怯える日々でしたが、今は勇者様達がいます。おかげでこの道も使いやすくなったものだ」


 しかし反対に座っている男がそんな事はないと励ます。

 その男は鎧を着て背中には剣を付けている。

 身長はニメートルもあり、鎧の隙間からは鍛えられた筋肉質な肌が見えるた。


 護衛なら頼れると思える頼もしさがその男にはあった。

 実際それはあっている。

 彼はこの世界での超人なのだから。


 「そういえば君は冒険者だったな。なら同業者として勇者の活躍はよく聞きそうだ。実際どうなんだい? 私達の様な庶民では、すごいと聞くだけだからねぇ」

 「詳しくは聞いていませんが、山を砕いたり海を半分にする化け物を倒しているとか。後数が多い魔物も倒しているそうですよ…………まぁあの日以前の様に護衛なしで外には出られませんが」

 「あぁ、君は護衛だったか。……ちなみにパーティー名は?」


 後ろを見れば同じ馬車が何台も並んでいる。

 鎧を着た男は冒険者パーティーのリーダーで、後ろの馬車には彼らの仲間も護衛として乗っている。

 今や魔物は人を見ては襲ってくるもので、この馬車も例外じゃない。

 

 魔物は並の人間より遥かに強い。

 

 だからそれに立ち向かうのも人を超えた者──冒険者の仕事だ。山を砕くのは無理だが岩なら砕ける、そんな超越者が彼ら達だ。

 

 名前を聞かれた鎧の男は少し恥ずかしそうに頬をかきながら答える。


 「……『茜色の羽』です」

 「おぉ! では君達があのヴェルウォンを倒した──」

 「えぇそうです。最近はBランクになった影響で色んな所に引っ張りだこで……」

 「ならその隣にいる大男もパーティーの仲間かい?」


 片方のおじいさんが鎧を着た男の隣で、座ったまま寝ている大男を見た。

 鎧の男も充分大男だが、寝ている男と比べてしまうとつい普通のサイズに見えてしまう。

 

 身長はおよそ2.5メートル程。鎧の男とは反対に着ているのが動物の皮である。

 見た人はコイツ原始人か? と疑いたくなる格好だが、その男の筋肉が衝撃的で疑いも吹っ飛んだ。


 胸の筋肉は岩壁の如くで腹はエイトパック、足や腕の太さはリーダーの1.5倍もある。

 ここまで来ると原始人ではなく熊ではないかと思うほどだ。


 驚くのはそれだけでは無い。


 体に付いた沢山の傷。


 打撲や擦り傷が至る所にあり見るだけでも痛々しい。流石に傷は治っているが、荒事がなくは無いこの世界だってここまで傷を負う事はない。


 しかしそこはプライベートだし一緒なのもこの馬車旅の間だけ、気になりはしてもその話はしなかった。


 「いえ。コイツは道の途中で拾った者で、近くに村も無いし魔物しかいない所に放っておくのも良くないと思って…………」

 

 そう言いながらリーダーは隣の男に目をやる。

 この男は乗せてくれたお礼をしたすぐ後に、疲れが溜まっていたのか寝てしまった。

 隣に彼の武器であろう斧を置いた以降ずっとこのままで、馬車が揺れていても全く起きる気配がない。


 「はぁ……しかし茜色の羽が護衛なら怖い事はありませんなぁ」


 リーダーの返答に困ったおじいさんは話を元に戻す。


 Bランクパーティならこの馬車旅は問題ない。この辺りに出る魔物はDランク、よくてCだ。


 Bランクの魔物が出てくると話は変わるが、Bランクの魔物とは村や街を滅ぼす化け物という事だ。

 そんな恐ろしいものはこんな道に出てくるものでは無い。


 「そうですとも、この方達がいれば私達は安全に──」




 「──伏せてっっ!!」







 それは突然だった。




 リーダーはギリギリ反応できた。


 魔力斬撃が迫って来ている事に。


 しかしおじいさん達やもちろん寝ている大男だって、それが早すぎて気付かない。



 それは紛れもない死



 無防備な背中を晒している彼達を、死神の鎌のように刈り取らんと迫ってくるが──



 



 「『魔力防壁』!!」





 急構築した宝石状の壁によって防がれた。


 斬撃が当たった瞬間、壁はパリンッとガラスの様に割れる。しかしそんな事は気にしてられない。

 命懸けの戦闘は始まったばかり。

 すぐさまリーダーは馬車を降りて、斬撃を放った原因と相対する。



 あの斬撃は他の馬車にも届いていたが仲間のおかげで無事だ。そしてリーダーと同じようにすぐさま馬車を降りてくる。

 共に死線を超えて来た彼等は何の命令もなく、リーダーが望んだ通りに動いてくれた。

 

 まさしく魔物退治のプロ。

 その俊足で潤滑な行動を見て頼もしさを感じる。そしてそのまま魔物を狩ろうと駆け寄ろうとするが──


 だがみんな、その原因と対峙して止まった。

 リーダーもそいつを見てから冷や汗を流している。


 「僕たちはいいから早く逃げろ!」


 目の前にいる四メートルほどの魔猪を見たリーダーの判断は早かった。



 この化け物は格上だ、自分達じゃあどう頑張っても勝てない。

 


 (相手はランクB、しかも賞金首かよ!)


 リーダーが指示を出すと馬車は走り出し魔物から離れていく。

 そしてリーダーの切羽詰まった声を聞いたおじさん達が何事かと、帳の中から魔物を見た。


 「あの禍々しさは間違いない、シュダビーンじゃないか!」

 「シュダビーンってあの五千万の!? なんでこんな所に……!」


 その魔物は暗黒の力に染まったように全身黒色の化け物だった。

 口辺りから生えている曲線を描いた巨大なツノは、男を三人串刺しに出来そうなほど荒々しい。

 そして黒の毛に紛れた血のような赤の毛と、生き物だと感じさせない瞳の無いおぞましい黄金の目。



 その名を『シュダビーン』。



 掛けられた賞金が一人で生活する分には充分な量だと思えば、この魔猪がどれほど恐ろしいか分かるだろう。




 その化け物は『茜色の羽』と対峙していた。






 「ライアン、いくぞ!」

 「あぁ!」


 リーダーの指示に声を返した魔法使いは詠唱を始め、すぐさま二メートルの炎の玉を作り出し、それをシュダビーンに放つ。


 「『暴風の斬撃』!」


 そこへさらにリーダーが放った風の刃が融合する。


 鉄を溶かす巨大な炎に、岩を粉々にするかまいたちが合わさって、魔猪を焼き斬る合体技が生まれた。


 炎と風の勢いが合わさって倍速くなった合体技は魔猪に届いた。

 炎の刃が魔猪の顔に当たった直後、煙が漂う。

 ドォン! と音が聞こえた後に、届いた体が浮きそうになるほどの衝撃波がその合体技の強力さを物語っていた。


 「やったか!?」


 おじさんが叫ぶ。


 しかし冒険者達は歓喜する事なく、目を鋭くしながらその煙を睨んだままだ。


 


 そして煙が晴れた後に見えたのは──





 「今のを受けて無傷かっ!?」


 何も変わっていない魔猪だった。

 

 あの技を受けても魔猪に傷を与えられず、それどころか魔猪自体は虫でも当たったのかと顔をブルブルするだけ。


 今の合体技を魔猪は攻撃として見ていない。

 パーティーの中でも強い方の技なのに一切のダメージを与えられない、絶望的な差に顔を上げたくなるが堪える。


 「俺たちの目的は馬車の護衛だ! 馬車が安全圏まで離れるまで時間を稼ぐぞッ!!!」


 今の自分達はそれしか出来ない。そう考えたリーダーはすぐさま思考を攻撃から防御に思考を変える。

 せめてあの魔物がいる事をギルドに伝えなければ被害は広がってしまう。


 「ライアン! 今度は強化魔──」

 「リーダー危ないッ!」


 そうならないようすぐさま指示を出すが、突如リーダーに大岩でもぶつけられたような衝撃が来た。


 (!?)


 あまりの痛さに意識が一瞬飛んだ彼は、今自分に何が起きているか分からず混乱する。



 「いかん、あれほど吹き飛ばされたら重症じゃぞ!」



 だがそれを遠くから見たおじさん達は分かっていた。


 シュダビーンが百メートルもある距離を一瞬で走っただけだと。


 魔力も乗せていないただの体当たり。しかし巨大から放たれるそのスピードだけでも充分な凶器になっていた。


 吹き飛ばされたリーダーは地面を何回も弾みながらようやく止まる。だが魔猪は標的は変えない。

 ほんの僅かな時間だけで、パーティーの中でもこのリーダーが一番強いんだと感づいた様だ。


 「グルゥゥゥ…………!」


 魔猪は唸り足で地面を蹴り始めた。


 「あいつまた突撃するぞ!」


 そう言ったおじさん達だが仲間達ももちろん気づいている。

 走り出す前に仲間が全力で止めに入ろうとするがすでに遅い。


 シュダビーンの姿が消えた。

 

 そのスピードは冒険者達でも追いつけるものではなく、大怪我を負っているリーダーが避けられるものじゃない。


 弾丸の如く突撃したシュダービンはそのままリーダーを引き殺そうとして──




















 「おじさん、斧を出しといてくれ」


















 その何倍もの早さで何かがリーダーをさらっていった。










 「斧だと、今はそんな所では! ……いない?」


 声を掛けられたおじさんは後ろを振り向くが、寝ているはずのあの大男が居ない。

 あいつは一体どこに行ったのかと思うが、その答えはもう片方のおじさんが言った。


 「大男……いつの間にあそこに居たんだ!?」


 それを言ったおじさんは信じられないものを見た目をする。

 そしてもう片方の男もさっきまで見ていた風景をもう一度見た。




 そこで見えたのは酷い死体を晒したリーダーの姿ではなく、姫さま抱っこされているリーダーと姫さま抱っこをしている大男の姿だった。


 








 「君は……?」


 リーダーは自分が今何が起きたのか分からず混乱している。

 それはシュダビーンに吹き飛ばされた事ではなく、死んだはずの自分が生きている事に対してだ。


 それはこの場にいる誰もが同じである。


 馬車にいるおじさんも、彼の仲間も、そしてあのシュダビーンでさえも。



 ──この大男を除いて。



 「いやぁすまねぇリーダーの兄さん。助けるのが遅れちまってよ。二週間徹夜で山降りてたもんだから、起きるのが遅くなっちまった」

 「……え?」


 リーダーをそっと下ろした後、頭をかきながら申し訳なさそうにしている大男は、苦笑はしながら明るい声でそう言った。


 謝った後に大男はああ、そうだと思い出した様に話を続ける。


 「うっすらだけど聞いたぜ。あの魔猪って賞金かかってるんだよな? 確か賞金貰うためには倒したところを誰かに見てもらわないといけないんだろ?」


 超人であるリーダーでも非現実的な現状に反応が遅れる。

 そんな彼を置いて、大男はこの場に似つわない話題をしてきた。

 後ろにはあのシュダビーンがいると言うのに平然と話を続けている。


 「いやぁよかった。乗せてもらったのにお金がないんじゃ馬車の人達にも申し訳なくて──」

 「ッ!? 君は速くここから逃げろ!!!」

 

 リーダーは大男の話を遮って逃げる様に促す。

 それは大男の後ろで地面を蹴っているシュダビーンを見たからだ。

 目標は既にこちらに定めていて、さっきと同じ体当たりをしてくる。


 「ん? ……ああそうだな。先にこいつを倒さねぇと賞金どころじゃねぇか……!」


 背後にいるシュダビーンにようやく気づいた大男も、交戦的な笑顔を見せて後ろを振り向こうとするが手遅れだ。

 



 シュダビーンの姿がまた消えた。




 (まずい、これだと彼も一緒に巻き込んでしまう!)



 リーダーも動こうとするが重症で体が動かせない。

 自分の不甲斐無さに憤りを感じながらも目を閉じようとして──







 「───オラッッア!!!!!」






 大男の叫びとそれを上回る轟音が響いた。


 

 「なぁ……!?」



 今度こそリーダーは驚きで声を上げる。

 助けられた時も大概だが、今起きた事はそれ以上だ。



 大男がやった事は単純。




 迫ってきたシュダビーンをツノごとぶん殴っただけ。




 大男の拳がツノを貫通して顔に当たり、四メートルの巨大が高く浮き上がった。

 高速の走りでついた勢いさえを殺し、横から殴られたシュダビーンはその大きさからは考えられないスピードで百メートル以上飛んでいく。



 あの合体技でも傷一つ付かなかったあの魔猪を、この大男は拳一つでそれを軽く超えてきたのだ。








 『!?!!!???!!』








 吹き飛ばされたシュダビーンは状況が反転した事に混乱している。

 

 さっきまで圧倒的に優勢だった自分が、あの大男が現れた瞬間に劣勢になった。

 

 自分の武器である立派なツノは見事なまでに真っ二つになり、地面についた自分は殴られた勢いを消せず弾みながら転んでいく。




 そしてシュダビーンは初めて──殺意を抱いた。



 あの大男のせいでツノは無くなり、今も痛い思いをしている。





 ──殺さなければ。





 そう思ってから行動は早かった。

 拳の勢いを消して地面に立つ。そしてあいつから貰ったこの闇の力を放出する。




 ただでさえ黒かったシュダビーンから黒いオーラが現れ始め、僅かに見えていた赤い線も、体の輪郭も見えづらくなり、黄金の目はさらに光った。




 「あれは……」





 その変化にリーダーは目を見張る。

 さっきまでの攻撃は魔力を持たないただの体当たりだった。しかし今目の前にいるコイツは明らかに魔力を纏わせている。


 シュダビーンの周りは風が荒れ始め、地面の草も近くにある木も壮大に揺れていく。


 (しかもあの魔力は普通の魔力じゃない。もしかして例の──!)


 勇者と繋がった話に似た様なものを連想させたリーダーは思い出す。


 自分の予想が正しければあの力は危険すぎる。恐らく普通の魔力の何倍も力があるはずだ。

 もしそうだとして攻撃が炸裂したら、この辺りは平地へと様変わりだ──!



 「あの攻撃はダメだ! もし放たれたら馬車も吹き飛ぶ!!」

 「その様だな……」


 

 流石の大男もさっきの様な明るい声は消えて、トーンが低くなっている。

 だが逃げるわけでもなく、リーダーを守る様に前に出た。

 黒いオーラから放たれている強風は届いてくるが、それに臆さない大男は笑みを浮かべながらも、ソイツを呼ぶ。











 「──来い。炎帝」










 真横に出した右腕に斧が飛んできた。

 まるで大きな岩を彫刻刀で武器の形にしたそれは、この強風に負けずまっすぐと速く持ち主のところへの飛んできたが、その勢いでもピクリとも動かず斧を掴む。


 全長一メートル半のそれは体が大きい大男が持ってもでかいと感じさせる。


 だがリーダーは同時に不安に思った。持ち主がこの大男でも、岩で出来た切れ味の低そうな武器であの攻撃に勝るのだろうかと……。


 そう思うリーダーだが、不思議とその事を指摘するつもりにはなれなかった。

 シュダビーンが放つ攻撃は恐らくAランクに届く代物。たとえ人類で一握りしか居ないAランク冒険者でも打ち破るのは難しいと思ったが……







(もしかしたら…………)





 彼ならできるかもしれない。



 この大男にはそう思わせる何かがあった。






 「フゥゥ………」



 大男が大きく息を吸いながら、構えをとる。

 それに合わせるようにシュダビーンも姿勢を低くした。




 『次の一撃で最後だ』




 語らずとも魔猪と大男は互いに悟っていた。


 魔力を纏い始めた互いの間で荒れ狂う風のボルテージが上がっていく。

 風、強風、竜巻と自然が荒れ狂う姿を見て誰もが動けない。




 そしてそのボルテージが最大限まで至った時──






 斧に炎が宿った。

















 「「!」」









 動きは刹那。互いに姿が消えて──














 バァン!!!!!











 轟音と共にすれ違った。



 あれほど荒れ狂った風は吹き飛び、先ほどまで悪化していた天気も今の一撃で青空へと変わった。



 大男は魔猪がいた所に、魔猪はリーダーのすぐ手前で止まっている。


 だがどちらにも変化はない。


 大男は最初と同じ構えをしたままで、魔猪は闇のオーラを纏ったままだ。





 「グルゥゥ……」



 永遠に続くと思われた空間は、真緒によって壊される。


 魔猪は唸りながら大男の方への振り向いて……



 「グゥ!?」



 刹那。

 魔猪に炎が溢れ出し倒れた。



 既に闇のオーラも謎の炎も消え、大きい音を出しながら魔猪は横たわる。



 そしてそのまま動かなくなった。



 「……」

 「よぉし、これで一件落着だな! とりあえずこれでお金の問題はチャラだぜ!」


 魔猪との戦いはあっけなく終わり、これを終わらせた本人は明るい笑顔でリーダーの元へ歩いてくる。


 リーダーは大男の姿を見るが新しい傷は一切なかった。

 つまりあの音速での戦いで、シュダビーン相手に完勝したと言うことになる。



 「……ふっ」

 「ん? どこか痛むのか!?」


 

 何度目かの出鱈目を見せられたリーダーは、ただ笑った。


 この大男が今まで何をしてきて、どんな事をしたらそんな強さを手に入れられるんだと気になる事は多い。

 しかし今は勝ったことに喜ぶべきであり、一番の貢献者である彼に感謝の言葉を伝えるべきだ。


 「いいや、あなたのおかげで死なずに済んだ。まぁ体はボロボロですけど、あれ相手なら安いもんです。とにかくありがとう。あなたのおかげで私だけでなくここにいる人達全員が助かりました」

 「別にいいぜ、人助けは基本だしな!」


 感謝の言葉に元気よく返す大男。その姿からこれぐらい楽勝だよと言っているような気がするが、気にしないことにした。


 (そういえば……)


 そこでリーダーはやっと思い出す。さっきから彼の事を大男、大男と呼んでいるだけで彼の名前を聞いていなかった。


 

 「そういえば君の名前は?」

 「ん? ……あぁ、そういえば言ってなかったな」



 リーダーが大男に名前を聞いたのは、命を救ってもらった彼に失礼だからと言うのもあるがそれだけではない。



 太陽のように明るい笑顔をした彼はこう言った。







 「アレク・サンドリアス。勇者に……いや、それ以上の強い奴になる男だ」







 リーダーは思った。

 新しい伝説が始まりそうだと。







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