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第5話 かくれんぼで園児どもの裏をかく

 今日も今日とて幼稚園に向かう。


「じゃあねー」


「「じゃあね〜」」


 お母さんの声に元気よく返事をする我ら姉弟。


 グズることもなく素直にお別れできる我ら。

 お母さんとしてはやりやすいだろう。


 いやもしかしたら寂しいとかも思うのだろうか。


 ま、なんでもいっか。




 俺と美香はすぐに別れて行動する。


 俺は池照男や澤我塩などのいつメン。


 美香はいろんなやつと仲が良いが、多くは女の子と一緒にいる。


「ヅキ、おはよう」


 イケメンの池が声をかけてくる。


「おはよう、今日もイケてるな」


 適当に挨拶を返す。


「ヅキ!おはよう!どうだ!?お腹ヅキヅキ痛むか!?wwww」


 ガッシーが声をかけてくる。今日も騒がしい。


「お前の声を聞くと頭が痛いよ」


 ちょっと上手く挨拶を返す。


「おはよう、ヅキくん。テルオくんに挨拶貰えたからって調子乗らないでね」


 みんなには隠しているが、裏では池と付き合っている腹出照子もなんか言ってくる。


「はいはい。あーボンレスハムが食べたいなぁ」


 なんかウザいので煽っておく。彼氏、彼女持ちがよ…。



 

 園児のとりとめもない話を適当に聞いていたその時だ。


「かくれんぼしようぜ!」


 ガッシーがそんなことを言い出した。

 

 瞬間、俺に電流走る。


 これだ。今日はかくれんぼでマウントを取ろう。

 かくれんぼは単純故に奥が深い。

 発想力が大事な競技だ。

 年季の違いを見せてやるぜ。


「いいね、久しぶりにやろうぜ」


 とりあえずのっかる。


 最近の園児はかくれんぼなんて単純な遊びは中々やらない。

 特に、幼稚園を一歩でも出ればスマホ中毒患者ばかりだ。

 真面目にやるのは久しぶりになったりする。


「たまには良いか。よしやろうぜ」


 池も乗った。

 決まりだな。


「はーい!みんな集まってー!」


 始まるかと思いきや、先生の声がかかる。

 朝が始まってしまった。


「ええーー!! いいところだったのにー!」


 ガッシーの抗議の声。


「ええー! よし、みんな、午後の時間にかくれんぼしよう!」


 ここはのっかる。

 今日はかくれんぼで気持ちよくマウントを取ることに決めたのだ。

 なんとしても実施させる。

 格の違いを見せつけてやる。


「オッケー」


 池も賛同する。


「うん、やろうね」


 池が賛同すれば池のイエスウーマンであるテルコも同意する。

 あとはこれを気が変わりやすい園児どもをコントロールし、午後に実施させるだけだ。



 

 午前中は歌を歌ったりお絵かきしたりなんか色々していた。


 お昼ごはんを食べ終わった今、みんなで掃除をしていた。


 基本的には業者がやるのだが、たまにこうして教育の一環として掃除があるのだ。


 雑巾を持ってときに全体行動で一斉に床を拭いたり、バラバラになって窓枠とかを拭いたり。


 今は俺はかくれんぼで隠れるのに適する場所はないか掃除をするフリをしながら探していた。


 うーん、なかなかない。

 建物の中は厳しいか。

 外の植木の裏とかのほうが良いか。

 うーむ。


 そうして小さな部屋とか物置とか掃除用具入れとかも確認しつつ、一番大きな部屋に戻ってきていた。


 ふと、ピアノが目に入る。

 部屋の角、壁際に設置されている、そこそこ大きなピアノだ。

 グランドピアノというほどではないが、家庭用のサイズではない。こういう大きな部屋じゃないと設置できないものだ。


 …ん?グランドピアノ?

 グランドピアノを思い浮かべると、4つ脚の姿が思い浮かぶ。

 ピアノの下は当然空間になっている。

 確か調律したり、麻薬を隠したりするためにこういう構造になっていたはずだ。


 だが、目の前のピアノはそこそこ大きいのに、箱型だ。

 座ったときに足が入るスペースはあるが、ペダルの向こうは本体になっている。


 気になって、壁に寄り添い裏側を覗く。

 すると……やっぱり!! 箱型の内側はほとんど空洞だ!! これは使える!!!


 問題は壁際過ぎて、園児がギリギリ入れないスペースだということだ。

 なんとかならんか……とりあえずいじってみる。


 …パキッ。


 あっ…。


 なんか一部が外れた。やべっ、壊れた?


 慌てて元に戻そうとすると、カチッ、とはまる。

 周囲を見回すが、掃除に夢中の園児とその園児を見守るのに神経を尖らせている先生たちで、誰にも見られていないようだ。

 

 ふー。一安心だ。

 

 どうやら、組み立て式なのか、整備用なのか、本体横側の一部は簡単に取り外せるようになっているようだ。


 これは……完璧だ。勝ったな。

 やはり発想の勝利。ガキとは違うのだよ、ガキとは。


 改めて、ピアノを確認しておこう。

 うむ、うむ、何回かやってみたが、簡単だ。

 いつでも取り外しできるな。


 あとは掃除してるふりでもしつつ、よりマウントを取った時の快感を上げるため、かつ、かくれんぼを実施させるためにも、他の奴らも巻き込んでおこう。


「池たちと掃除の後はかくれんぼするんだよね。お前らもやろうぜ!」


「そうなの!? やるー!」


「わたしもー!」


「おれもー!」


 池の名前を出すとホントこいつらちょろいな。

 勝ったなガハハ。




 掃除が終わり、お待ちかねのかくれんぼタイムだ。

 合計で10人くらい集まった。


「ルールは見つけられたらこの大部屋に集合! 休み時間終わる5分前までに全員見つけたら鬼の勝ち!」


「「「おっけー」」」


 この部屋にいてくれないと気持ちのいいマウントが取れないからな。


「よーし鬼決めるぞー」


 まずはここで鬼にならないこと。

 鬼ごっこじゃなくかくれんぼだけど。


 くらえ!


「じゃんけんぽん!」


 俺だけパー。他全員グー。計画通り。


 人はとっさにチョキなんて複雑な形や、手を開いたりなんてできないのだ。


「おいヅキ! さいしょはグーからだろ!」


「いやお前ら出したじゃん。戦いに参加したんだから、負けたら認めないと」


「なにおー!」


「まあまあ、俺一人くらいいいじゃん。ほら、じゃんけん続けて」



 じゃんけんの結果、モブ子とモブ男が鬼になった。


「よーし壁向いて50数えろー! みんな隠れろー!」


 俺は予め考えていたピアノに向かっていく。


「おいヅキ、早くこの部屋出ようぜ。隠れるぞ」


 ガッシーがヒソヒソと声をかけてくる。


「お前は逃げろ。俺はこの部屋に隠れる」


「な、なに!? そんな、鬼はすぐそこだぞ!」


「そこがミソなのよ。灯台下暗し。相手の意識の裏をつくのよ。ま、ガッシーみたいなバカガキにはわからないかな」


「東大デモクラシー!? なんだそれは……!」


「お前こそ何いってんだよ。意味不明だ」


 言いつつ、ピアノの横を剥がし、中に入ろうとする。


「ええ! 壊した!? 入れる!?」


 こいつまだいたのか。


「はやくいけ。遠くに行かないとすぐバレるぞ」


「ヅキ!俺も入れてくれ!」


 見上げると目をキラキラさせたワクワク顔のガッシー。やばい、男の子の秘密基地魂に火が付いてしまった。


「バカ。ここは一人しか入れない俺専用なんだ。どっかいけ」


「えーいいじゃん。入れそうじゃん。入れろよー!」


 数字をカウントする大声がもうじき50になりそうだ。


「ほら!時間やばいぞ!走れ!どっかいけ!」


「もう無理だよ!入れろよ!」


 無理やり入ってこようとするガッシー。それを塞ごうとする俺。体が色々なところに当たる。なんか硬い塊にぶつかる。いって!


「バカ入らない! あ、そうだ! 東大デモクラシーだ! そこのカーテン! あの中にくるまれ! 東大デモクラシー! バレない!」


「そ、そうか! 東大デモクラシー! バレない! くるまる!」


 はい、洗脳完了。

 ガッシーは走っていった。


「「50!!」」


 数え終わる声が聞こえるとほぼ同時、俺はピアノの横を取り付け直し、ガッシーはカーテンにくるまった。


「「いくぞー!!」」


 モブ子とモブ男が声を出して駆け出す音が聞こえる。


 少しドキドキするが、無事にピアノの横を通り過ぎていく。

 どうやらガッシーも見つからなかったようだ。


 ふとぶつけたところが痛む。

 どこにぶつけたんだろ。


 ぶつけたであろう場所を見る。

 すると、なんかよくわからん配線コードや、ダイヤルが何個も付いていた。


「裏っかわってこんななのか」


 壊してなければ良いな〜と思いつつ、早くマウントを取れるタイミングが来ないかソワソワだ。




 しばらくすると、少しずつ捕まったやつらが集められていく。


「ああー見つかっちゃった〜」

「くそーバレないと思ったのに〜」

「テルコ、お腹出てたからね」

「頭隠して腹隠さず」

「浅はかなり」


 順調に園児達が時間が過ぎ、集められていく。

 みんなの声に耳を澄ませながら、出て行くタイミングを探る。


「あー池も見つかったのかー」

「天井に張り付いてたの」

「なにそれ〜」

「ALS◯Kじゃん」

「霊長類最強〜」


 なんじゃそりゃ。ありえんだろ。

 いや、池ならあり得るのか……?


「あとはガッシーとヅキだけか」

「どこいるんだろー」

「池より隠れてるなんて凄いねー」

「時間もあとちょっとだよ」


 …そろそろか。

 時間とタイミングを測らねば。耳をすませば。


「!!!!!!!!!」


 外の様子に神経を尖らせていたその時、唐突に全身を圧倒的な衝撃が叩いた。


……

………

…………

……………ハッ!


 意識を失っていた!

 なんだ!?何が起こった!?

 外は!?

 かくれんぼはどうなった!?


「おおー!ガッシーそんなところにいたのか!」

「す、すげえ!こんな近くに!?」

「ピアノの音にビックリして出てこなければ、絶対気づけなかったぜ!」

「わたし知ってる!こういうの、京大五畳半暮らしって言うんだよ!」

「違うよ、それを言うなら幸せの赤いザクだよ!パパが言ってたもん!」


 な、なんだ!?ガッシーが賞賛されている!?

 どうなっているんだ!?

 とりあえず、俺の方がカーテン野郎なんかより凄いことは間違いない!

 外に出てみんなをおどろかしてやるぜ!


「こらぁ!ヅキくん!何やってるの!?」


 外に出た瞬間、先生に怒られる。

 なんだ?待ち構えられていた?


「ピアノ壊してぇ! いきなり大きい音出てみーちゃん泣いちゃったじゃない!」


 近くを見ると以前俺の作った泥団子を褒めてくれたみーちゃんが泣いていた。


 それでなんとなく察した。

 俺がぶつけた何かのダイヤルが音量とかのダイヤルで、爆音設定なったところをみーちゃんがピアノを弾こうとして大音量が発せられたのだ。


 ついでにピアノの中にいた俺は無事死亡。

 少しの間気を失ったようだ。


「ごめんなさい。中のダイヤルにぶつかったときに設定が変わっちゃったみたい。でもこれ、壊れてないよ、戻せるよ」


「そういうことじゃないの! そんなところに入るなんて危ないじゃない! あとちゃんとみーちゃんに謝りなさい!」


「ご、ごめんなさい。みーちゃんもごめんなさい」


 く、くそう、園児の体は他の園児にはマウントが取れるが先生には敵わん。

 相変わらずみーちゃんは泣き続けている。

 よほど驚いたのだろう。


「ああーヅキが泣かしたー。ズルするからだぞー」


 ガッシーが煽ってくる。

 さっき追い出された恨みか。


「ズルなんかしてないね! この場所を見つけた俺の観察力と発想力の勝利だね! 実際俺だけが時間いっぱい逃げ切ったわけだし! 俺の勝ち!」


「た、たしかに…」

「ピアノの中なんて考えないよ…」

「ピアノを壊して中に入るなんて…」

「ヅキ、たいしたやつだ…」


 園児達が口々に俺を称賛する。

 ああ気持ちいい。

 ひれ伏せ愚民ども。


「こらぁ!そういうことじゃないっていってるでしょ!ちゃんと反省しなさい!もう!」


 ドヤっていたらまた先生に怒られた。

 クッ、仕方ない。


「ごめんなさい…」


「ほら! ヅキ謝ってるじゃん! やっぱ悪いことなんだよ!」


「た、たしかに…」

「悪いことしたらあやまらないとだよね…」

「ピアノを壊して中に入るなんて…」

「ヅキくん、おそろしい子…」


 く、くそう!ガッシーめ!よくも俺の邪魔をする!


 そうこうしてるうちに休み時間が終わり、また午後の時間が始まった。


 勝ち負けとかかくれんぼとか有耶無耶になってしまった。


 だが、ところどころから、


「ヅキはピアノを壊したやべーやつ」

「みーちゃんも泣かした」

「かくれんぼの鬼」

「鬼だけど隠れる側」

「にちりんとうが必要」


 などと俺を畏怖する声が聞こえる。


 フッフッフ! これはこれで気持ちが良いな!

 悪役ってのも乙なものよ!


 さぁーて次は何でマウント取ろうかなー!

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