九十七回目
痛い、と思ったら、ガキんちょに蹴り飛ばされていた。
この状況は容易に理解できる。道端にある小石を蹴飛ばして遊ぶのは小学生男子あるあるだ。男子じゃなくて、女子もたまにやるくらい。意味がないことに気づいてやめる者もあるが、ふと気づくとやってしまっている何気ない遊びだ。
私はその蹴られる小石になったわけだ。石なら石で、宝石とか鉱石とか、もっといいもんあっただろうに、なんでその辺の小石に転生するかな。前々から思っていたけど、私転生運なさすぎでは?
まあ、子どもが飽きたら解放されるからいいのだが。蹴られるの痛いんだよな。石に痛覚があるとは知らなんだ。
さて、自分が石であることを理解し、ほどよくどうでもよくなってきたところで、考え事でもしてみましょうか。
まず、最大の謎ははるかだ。復讐、とは以前聞いた言葉だったが、はるかの言葉をそのまま受け取るなら、私のための復讐、ということになる。つまり、はるかは私怨で周辺人物を貶めていることになるわけだが。
本人が死んでいるのに、その人のための復讐なんて、意味なくないか、と私は思うわけである。まあ、私怨を晴らしたいだけなら、お好きにどうぞ、とは思うのだが。
ここで引っ掛かるのは「帰ってきて、なつみ」というはるかの言葉だ。まるで私が生きているか、生き返るかのような発言。復讐を果たせば死んだ人間が帰るとでも思っているのだろうか。
人間は生き返らない。他の生き物だってそうなのに、人間だけ生き返るなんて不平等だ。
それと、もう一つ、引っ掛かっているのは……
……元の世界って、どこなのだろう、と。
本当に私はいじめられて屋上から落ちたのが正解なのだろうか? 何度も転生や憑依を繰り返すうちにわからなくなった。あの世界が正しいなんて根拠、どこにもないのだ。
だとしたら、「はるか」についての説明もつかないのだが。もしかして、はるかはいなかったんじゃないか、とも疑っている。
転生だの憑依だのがそもそも現実的でないのだ。何が事実かなんて、あらゆる世界を漂う私に断定のしようはない。
まあ、いじめられていた頃の記憶が一番最初なのは確かなのだけれど。
……私は、誰だろう?
はるかと見た楽しかったアニメや漫画などの世界に行けたのも疑問だ。やはり私はなつみなのだろうか。
「あ」
私の思考を遮ったのは、間抜けな子どもの声だった。浮遊感と嫌な予感。嫌な予感ほどよく当たるという言葉を誰か否定してくれないだろうか。
私は側溝に落ちながら、その世界を後にするのだった。ガキんちょはたぶん、また新しい石を探すだろう。




