表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/100

九十二回目

 ふかふかのベッド、ぽかぽかの布団。

 ああ、なんて人類の文明って素晴らしいんだろう、と思いながら私は目を覚ました。

 私の知る世界。私が生きていた世界なのだろう。洗面所で顔を見れば、素朴な面立ちの男の子がいた。

 亮太(りょうた)という名前らしい。いい思い出のない名前だ。保育園の頃から一緒の幼なじみで、よくいるやんちゃな悪ガキだった。

 こいつの死亡は確定している。不審者に拐われて殺されるという事件があった。犯人は未だ捕まっていないが、クリスマスイブの話だったから、とても印象に残った。その後、後を追うようにこいつの父親も亡くなったという。

 中学まで上がっていたら、こいつは私にどう絡んできたのだろう。それとも、無視をしただろうか。どっちでもいい。ない未来の話をしても仕方がない。

 例によって、人生は詰んでいるわけだが、今日くらいこいつがいい子でいてもいいだろう。

 ──クリスマスイブなのだから。

 今までの傾向から察するに、これは運命の日と見て間違いないだろう。これで死ななかったら、拍子抜けだ。今まで死にまくったのはなんだったのだろう、となる。

 幸せな一日だった。優しい父親と母親がいて、弟ができる来年を楽しみにして。クリスマスらしく、玩具をねだったり。子どもらしい子どもでいた。

 私はクリスマスに家族に甘えたことなんてなかった。せいぜい、姉に一人勉強しているところに、新しいゲームや漫画を紹介されて、一夜ばかりの夜更かしをする程度だ。サンタクロースを信じている子どもではなかったので、私はそれで満足していた。

 でも、どうだったんだろうな。

 ふと思う。姉は、はるかは、「お姉ちゃんらしく」するために私にそういう振る舞いをしていたのだろうか。本当は毎年毎年……いや、それどころか毎日、私の世話を焼くのを面倒だと思っていたのではないだろうか。そういう不安を掻き立てられる。

 はるかのことは、正直言って、わからない。はるかの同級生でいじめっ子だった先輩に言っていた「復讐」の意味も。私のために復讐なんてするような殊勝な姉だったか? 私ははるかに都合のいいような「夢」を見させられているのではないだろうか。

『正解は近いよ』

「え……」

 何か、声が聞こえた気がした。はるかに似たよく聞き覚えのある声だった気がする。

 でも、辺りを見回しても、消灯して薄暗いばかりで、何もなかったし、誰もいなかった。幻聴だろうか。

 そうして、私が程よく物事を忘れ、眠った頃、布団を食い破って、ナイフが亮太の腹を貫いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ