八十二回目
意識を得たときの第一印象は体が固定されているような固さを覚えたことだ。
きいこきいことぜんまいで動く何かしかの歯車。その一つに私がいた。まあ、すぐ壊れるか何かするのだろう。これまでの傾向から言って。
体は勝手に動くし、機械仕掛けにも興味はなかったので、私は考え事をすることにした。私の奇っ怪な転生、憑依と、はるかの言葉について。
はるかは私のことをどう思っているのだろう。志津がしたことを許していないような言動に聞こえたが、私はそれを丸呑みしていいのだろうか。
志津が死ぬ直前の私に告げた「お前ははるかがいいお姉ちゃんを演じるための道具」という発言も気になる。これははるかを疑っていることを抜きにしても、真意を確かめたい発言だ。
真偽はともかく、何故あのような解釈に至ったのか。それが一番重要な気がする。つまり、少なくとも、志津視点からは「はるかが妹をいいお姉ちゃんを演じるための道具にしている」ように見えたわけだ。そうでなきゃ、あの場面であの発言が出てくる理由がわからない。
いや、冷静に考えろ、私。出任せだった可能性だって捨てきれないだろう。志津は私をしょっちゅういじめていたわけじゃない。死に際だったから私が志津の顔を覚えていただけだ。志津がはるかの何を知っているかなんて、私には知りようがない。
……いや待て、知りようがないなら、やはり志津のあの言葉は引っ掛かる。姉の交友関係になど興味はなかったが、志津ははるかと友達だったのだろうか。そうでもなきゃ、妹のことを知るはずがない。私たちは姉妹だから、当然苗字は同じわけなのだけれど、学校での関わりは少なく、決して珍しい苗字ではなかった。私が姉に慰めてもらっていたのは家に帰ってからのことだ。端から見たら、私とはるかは苗字が同じだけにしか見えなかったはずだ。顔もそんなに似ていない。
おばあちゃんにも間違えられたことはない。認知症入っていてもおかしくない年のはずなのに、私とはるかの区別はついていた。
それに、帰ってきてってどういう意味だろう? 死んだ人間は生き返らない。それが世の理だ。私は転々と転生を繰り返しているけれど、はるかがそんなファンタジーな現象を知る術はない。
つまりは、私は死んでいない? まさか。
これまでの転生や憑依は私が死んでいないから起こったこと、というにはあまりにも非現実的すぎた。アニメやゲーム、漫画の世界に入り込む、なんて、異世界転生のテンプレでしかない。
ぎぎ、と歯車が不穏な音を立てる。崩壊はもう近いのかもしれない。ゆったりと確実に軋んでいる。
これまでの転生、憑依は歯車の一つでしかなかった? 私は真実に近づいている?
何一つ、確証がないじゃないか。
思考放棄を促すように、歯車は欠け、ばらばらと崩れた。




