八十回目
「おばあちゃん、おばあちゃんってば!」
肩を揺すられて、ぼんやりと目を開ける。座ったまま微睡んでいたらしいおばあちゃんこと私は、感じたことのない体の怠さを感じていた。
身体中が痛い。それは何をしたからというわけでもない痛みだった。座っているだけでしんどい。骨と皮ばかりの体なのに、とても重く感じる。瞼を開けて、首を声の主の方へ向けるのが、亀のような速さでしかできない。いや、亀でももっと速いだろう。
目を向けた先にあった少女の顔に、私は驚いて、声もなく叫んだ。そこにあるのは、私の姉だったはるかの顔だ。私が知っている最後の記憶より、幾分か大人びているだろうか。はるかは私の死を痛くも痒くも思わなかっただろうから、健やかに成長したことだろう。
「もう、おばあちゃんったら、孫の顔見て何驚いてるの」
おっと。これがはるかの祖母であるなら、私の祖母でもあるわけだ。振る舞いに気をつけなければ。……私が転生だか憑依だかを繰り返しているのを、なんとなく、この女には悟られたくなかった。
「ああ、はるか……」
とりあえず呼んでおこう、くらいではるかの名前を呼ぶと、衝撃の解答が返ってきた。
「やだぁ、おばあちゃんぼけちゃったの? 私はなつみよ」
──こいつ、今なんて?
ひっくり返りそうな勢いで心臓が脈打って、私の体……おばあちゃんの体は言うことを利かなくなってくる。
そんな、そんな、まさか……
「おばあちゃん、おばあちゃん?」
はるか、あなた、何考えてるの……?




