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七十九回目

 私は昼寝をしていたところを、叩き起こされた。物理的に。起きた私は警察官だった。

「トラック事故、死傷者ありだ。行くぞ」

 え、と思った。

 トラック事故なんて、さっきあったばかりだ。MIZUKIちゃんが轢かれた。まさか、そんな偶然……

 パトカーで現場に向かいながら、同僚に今日の日付を聞いた。寝ぼけてる疑惑を持たれたようだが、事故なら日時をはっきり覚えとかないと、と誤魔化す。

 それはMIZUKIちゃんが死んだのと同じ日付だった。

「うそ、だろ……」

 MIZUKIちゃんがズタボロの状態で救急車に運ばれていくのを見ながら、一人呟いた。

 タイミングばっちりに、私は別の体に転移したらしい。それとも憑依だろうか。

 唯一の救いはといえば、MIZUKIちゃんの体で守った子どもが生きていたことだろう。

 現場にはぐちゃぐちゃになった道路、張り巡らされたキープアウトの黄色いテープ、静かに鎮座するトラックとパパラッチ。

 これほどカメラのフラッシュを不愉快に思うことはなかった。MIZUKIちゃんが死んだのを、悲しむどころか自分の金にするために写真を撮るとか。MIZUKIちゃんが芸能人である以上、そういうものなのはわかるが、人の死を悼む心はないのだろうか。不謹慎きわまりない不躾なフラッシュを私は睨んだ。

 トラックの運転手は運転中に昏睡したらしい。持病持ちか。そういう事故はニュースでは聞いたことがあったが、生で目にするのは初めてだ。

 こんなものを見せて、何がしたいのだろう。作為を感じる転生だ。

 そろそろきちんと考えないといけないのかもしれない。私の何十回もの転生の意味を。その中で私が抱いてきた疑問を。

 だが、その前に。

「MIZUKIちゃんを返せ!!」

「運転手を裁判にかけろ!!」

 戦わなければならない。この野次馬たちと。

 正直、私だってそう叫びたい。いかに警察が無力かわかる。何かあってからでは遅いのに、何かあってからじゃないと動けない。もどかしい。

 そんな、あったであろう私の姿と、MIZUKIちゃんとして一人を救った私とで懊悩して、私は暴徒と化したファンたちに殴られ続けた。

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