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七十六回目

 目を覚ますと、そこはいかにも独身男性といった感じのちょっととっちらかった部屋だった。一人暮らしなのだろうか。他に人の気配はない。

 起き上がって確認すると、私はまた成人男性に転生したらしい。もはや何のためかわからない溜め息を吐く。つくづくついていない。そう思った。

 とはいえ、転生先の人生をぶっ壊すほどろくでなしではないので、部屋の中から情報をかき集める。自宅警備員ということはないだろう。スーツが干してあるし……

 ん? なんだか見覚えのあるスーツだな。いや、アニメ関係ではなく、私はこのスーツを見たことがある。どこでだろうか。

 おぼろげな記憶を辿りつつ、私はこの男のものらしいバッグを探った。

 財布から免許証が出てくる。気の弱そうな控えめな感じの男性が移っている。その表情に強い既視感を覚えた。吐きそうになる。

 見たくなかった。こいつは、はるかの担任だった教師だ。私がはるかに寄りかかりすぎだとかなんとか言って、唯一の拠り所から引き離そうとしたやつ。

 結局、はるかには裏切られたわけだから、こいつの言うことは正しかったわけだが、あの頃の私ははるかを盲信していたからな。

 あと、なんだろう。何か重要なことを忘れているような気がするが……ひとまず今日は平日のようだし、出勤するのが無難だろう。そう結論づけてスーツに袖を通す。徒歩で通勤していたはずだ。たまにすれ違ったりした。

 ……私はその瞬間まで、重大なことを忘れていた。

 この男性ははるかの担任「だった」。過去形にするのははるかの担任が変わったことによるものではなく、こいつが出勤中、轢き逃げに遭って死んだからだった。

 よりによって、その日が今日だった。

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