七十五回目
記憶を整理しよう。一応、本や写真に転生したことは覚えている。虫に食われて死とか地味オブ地味とか、お前は何回火炙りにされるのかとか、そういうことは置いておいて。たぶん、私が相当他人事だったのは、渡し守を境にだろう。
原因は……神話を信じるなら、忘却の川辺りだろうか。渡し守のときの死因は川に落ちて溺死だった。川の水を飲んでしまったのは確かだ。まさか転生先にまで影響が出るとは思わなかったが。
「おとうさん?」
「……ん?」
ちなみに私は今男性で、女の子の父親をしている。この女の子、私に似ている気がするのだが、それはいい。問題は何の世界観かさっぱりわからないということだ。
漫画、アニメ、ゲーム、ラノベ、ドラマ、ありとあらゆるジャンルを網羅している私の記憶力だが、いくつか前から、「異世界」に転生しているのか怪しいラインナップなのだよな。まあ、ノンフィクション映画もラインナップに入っていたくらいだから、リアリティのある世界で描かれた日常系の話だったりするかもしれないし。まあ、写真のときの白髪オッドアイは何かしらのアニメだろうけど。
しかし、父親というのは、どうやったらいいのかわからない。母親だったら同性だったからまだやれたと思うんだけど。
現実の父親なんて自分の父親のことくらいしかわからない。教師の中にも父親をしている人はいただろうけど、私にとっては「先生」でしかないし。
「おとうさん、絵本読んで」
「え」
だから、どうしたらいいのかわからない。
私の父親は寡黙な人で、怒ることは滅多になかった。だから、私もあの人がよくわからなかった。
だから参考にできないのだが……私も戸惑って対処できなくなっている。
私に似た子どもをどうしたらのだろうか。
戸惑ったまま、日々を浪費して、気づいた。
あれは、私じゃない。はるかだ。私の姉の。
そんな、なんで、なんで私がいないの? 死んだから? 子どものときはまだ生きているでしょ?
……落ち着きなさい、私。これは転生じゃないのかもしれない。夢だわ。明晰夢とかいうやつなのかもしれない。
すると、不意に視界がノイズに閉ざされて、意識が落ちていった。




