表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/100

七十三回目

 私は笑っている。ずっと笑っている。写真の中で。

 その写真の私をじっと見つめる目があった。吸い込まれそうなアメジストの目となんてんを食べてしまったような目。色違いの目が、燃えていそうな色合いの目が、何の熱も持たずに私を見ている。

 当たり前の話だが、通常、写真に自我などない。ただ、私は写真の中で「笑顔」で時を止められた誰かなのだ。何故見つめられているかはわからないし、おそらく「私」という自我は写真の中の人物とは全くの別人なのだろう。

 私はこの写真にたまたま憑いてしまった何かなのだろう。自分が何物なのか、皆目見当がつかない。ただ、ここが自分の居場所でないことだけがはっきりとわかる。まあ、私に居場所などそもそもあるのかわからないが。

 わからないなりに、色違いの彼を見ている。それでわかるのは、彼のほんの小さな感情。寂しいという思いと、それを認めたくない心。複雑なようで単純だ。冷たくなりきれない彼が、この写真を捨てたり燃やしたりするのを躊躇っている。ただそれだけ。

 捨てられて、燃やされて、なんてしたら、私はどうなるのか。そんなことは私にはどうでもよかった。何故なら私は生きていない。ただの写真だ。生き物ですらない。しがみつくような生を持たぬものが、死にたくないなどと喚く必要もないだろう。

 ちり、と焼けるような痛みがして、なんだと思ったら、ろうそくにあてがわれたようだ。掌に収まる小さな写真はほどなくして消えるだろう。もちろん私も消える。

 願わくは、写真を燃やすことが、この人物の救いとならんことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ