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六十六回目

 この世界は小さな正義をよしとする。

 国とか街とか、そういう境は曖昧で、誰もが「小さな正義」のために日々を過ごしている。

 とても平和な世界だ。「小さな正義で成せること」。エッセイ風四コマ漫画として脚光を浴びた世界観である。

 それは道徳や倫理観を子どもにもわかりやすく描いていたので、国語の教科書に載るのでは、と思われていたくらいだ。

 この世界は「小さな正義」を重ねることで、幸福指数が貯まり、生活が豊かになるというシステムがある。幸福指数を上げる小さな正義はほんの些細なことでかまわないのだ。例えば、荷物の多い老人を手伝ったり、歩行者が渡りやすいように誘導したり。そんな小さなことでいいのだ。

 というわけで私は待っている。

 空き缶となった私を拾ってくれる誰かを。

 いやね、私も「無機物!」って思ったよ。思ったけど今更じゃん。キノコとか羽根ペンとかロボットとかに転生してるんだよ? そのうち冷蔵庫にでもなるんじゃない?

 それはともかく。

 つまり、私は小さな正義のために捨てられる運命にある。最後には圧縮されるのだろう。空き缶だから痛みはないのだろうか。まあ、そろそろ痛みなんてどうでもよくなってきた。

 しばらくして、誰かが私を拾う。

 そして様々な臭いが混ざり合って異臭のするゴミ箱へ投げ捨てた。

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