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六十三回目
とても素晴らしいことに。
「この世界には神がいます」
本当にいるのだ。
「我々の敬虔な祈りを聞き届けてくれる神様が」
……戯れ言を、と思う私が言っているのだから間違いない。
ここはアプセフサノス。聖なる魔神に守護された世界だ。矛盾してるって? けれど、私は悪魔に転生したわけではなく、狂信者に転生したのでもない。アプセフサノスにおいて、聖なる魔神を信仰することは、喉が乾いたら水を飲むくらいに当たり前のことなのだ。
ここは「コントラディクション」というダークファンタジーの世界観。私はやがて魔神に殺される神父ダグネス。
この世界には聖なる魔神が存在する。確かに存在するのだ。何故なら、この世界は魔神の体内で生かされているから。
命は魔神の気紛れで生み出され、気紛れで殺される。正に神の所業だ。
ここは魔神の胃袋の中。だから定期的に酸の雨が降る。それでも溶けないでいるのは、魔神が気紛れでも守っているからだ。
その世界の真理に気づいてからの人間は愚かだった。「死にたくない」と世界から飛び出そうとする。どうせいつかは死ぬのに、何故抗うのか。
そんな矛盾したこの世界で、真理を知る神父は、酸の雨に晒されて、死んだ。




